2020年は新型コロナの影響で、21卒の新卒採用スケジュールが後ろ倒しになったり、急なリモート選考対応が求められたり変化の多い年でした。
さまざまな市況感の変化にともない、22卒学生の希望就職先にも変化はあったのでしょうか?
今回は、21卒学生が新型コロナでどのような影響を受けたのかおさらいし、22卒学生の動向についてまとめていきます。
21卒学生が受けたコロナの影響まとめ
新型コロナが採用活動に大きな影響をもたらしたと話す企業が増加しています。ラーニングエージェンシーが実施した調査によると、調査に回答した395社のうち約7割が採用活動に影響があったと答えており、採用スケジュールの変更や合同企業説明会・外部イベントの中止をした企業が相次ぎました。
21卒の新卒採用でどのような影響があったか
採用スケジュールを変更した…68.2%
合同企業説明会、外部イベントを中止した…56.9%
選考方法の変更…40.0%
説明会(自社開催)の中止…36.5%
採用予定人数確保までの長期化…33.7%
このほかにも、全体の約3割の企業が採用予定人数を変更し、説明会参加者やエントリー数が減ったと回答しています。また、6.7%の企業が新卒採用をとりやめていました。
これらのことから、21卒学生はリモート対応などに急遽変更された新たな選考方法に適応したり、合同企業説明会の代わりに企業の情報を得られる場を探したりするなどの対応を迫られました。
就職内定率は2015年以降初めて7割を切る
2020年10月1日時点での就職内定率は69.8%となりました。2015年以降はずっと売り手市場が続いており、2018年10月は77%の学生が内定を保有していました。
しかし、2020年は内定率が急降下し、とりわけ短大生の内定率が大幅に下がっています。
22卒学生就活に対する心境の変化
新型コロナの影響を受け、22卒学生の就活に対する心境はどのように変化したのか見ていきましょう。
【22卒学生】就活に不安を覚える割合は全体の91.7%
ディスコが行った就活意識調査(2020年11月時点)によると、22卒学生のうち27.3%が「志望業界を明確に決めている」と回答しました。この数値は21卒学生の22.0%に比較すると5.3ポイントも上昇しており、「なんとなく決まっている」」(51.3%)を含めると約8割の学生がすでに志望業界を決めているという結果になります。
この変化が大きい状況下だからこそ、明確に志望業界を決めて就職活動を行っている層が一定数いると分かります。
画像データ引用:キャリタス就活 2022 学生モニター調査結果(2020 年 12 月発行)
また、同調査によると「就職活動がとても不安」と答えた就活生の数が、21卒では46.7%だったのに対し、22卒学生は52.8%と増加しました。「やや不安」と答えた数を合わせると、就活に不安を抱いている22卒学生はなんと91.7%となっています。
22卒学生の9割が積極的にインターンに参加
コロナの影響で、リアルな場での合同企業説明会は減ったものの、夏冬に開催されるインターンへの参加は増加傾向となりました。
株式会社RECCOO / キャリア教育支援NPO エンカレッジが調査した「夏のインターンに関して」のアンケートでは、7割の学生が企業名よりもインターンのプログラム内容を重視して参加可否を決めてます。
つまり、大手にインターンが集中するのではなく、あくまでも「どのような経験ができるか」「どのような学びを得られるのか」という中身軸でインターン先を選んでいることがわかりました。
21卒学生は1~5社のインターンに応募しているのに対し、22卒学生は4人に1人が11~20社のインターンにエントリーしています。より早く企業と接点を持ち、就職活動に生かしたいという姿勢が現れているでしょう。
そもそもインターンに参加する目的は何か尋ねたところ、次のような回答が得られました。
<インターン参加の目的>
「イベント/インターンで接点を作っている」…83.9%
「自己分析をしている」 …73.8%
「業界研究をして志望業界を広げている」 …61.1%
「企業研究をして志望企業を広げている」 …48.2%
「本選考を受け始めている」 …6.0%
「本選考を大方受け、承諾先を考えている」 …0.1%
「まだ就活らしいことはしてない」 …7.7%
夏にインターンに参加することで、業界や企業の情報を得て志望業界・企業を広げている傾向がみられました。選考目的で参加する学生は6%にとどまっているので、「自分に何があっているか」「この業界やこの会社は、自分にあっているのか」と、見極めるためにインターンに参加しているのでしょう。
つまり、実際の志望業界や企業の絞り込みは秋以降になってくることがわかります。
また、インターンに参加したあと、本選考に進みたいかどうかを判断するためには、次の2点が最重要事項となります。
- 業界・仕事内容が自分にあっているか
- 会社の人、雰囲気が自分にあっているか
インターンに参加した学生の3割以上が、事業内容や会社の人に魅力を感じたことがきっかけで、本選考へのエントリーを決めています。
- コロナによって多くの学生が安定志向になり、夏のインターンに積極参加するようになった
- インターンで事業内容の魅力付けや、社員の人柄で動機づけすれば本選考の集客につながる
希望する業種に変化はあったのか?
ここからは、21卒と22卒学生の希望する業界がどのように変化したのか、比較してみましょう。
22卒 志望度がアップした業界
21卒と比較すると、次の業界の志望度がアップしています。
- 情報・インターネットサービス
- 建設・住宅・不動産
- 銀行
- 医薬品・医療関係・化粧品
- 素材・化学
- マスコミ
- 官公庁・団体
- エネルギー
- 運輸・倉庫
情報・インターネットサービスは以前から人気がありましたが、今回のコロナの影響を受けて、建設・住宅・不動産が8位から2位に、そして11位だった銀行が3位に急上昇しています。
銀行は店舗縮小などで人員削減の波があったものの、学生から見ると安定して見えるのかもしれません。
22卒 志望度が下がった業界
一方、ランクが下がった業界は次の通りです。
- 水産・食品
- 情報処理・ソフトウェア・ゲームソフト
- 調査・コンサルタント
- 商社(総合)
- 電子・電機
- 自動車・輸送用機器
海外と取り引きの多い商社や、自動車製造などのランクが下がっています。
大手やベンチャー・ビジネス形態にこだわらない学生が多い
株式会社RECCOOの調査によると、今までの「大手信仰」をする学生が減っており、小規模・ベンチャー企業も志望業界に含める傾向にあります。企業のジャンルも、日系と外資にあわりこだわらず、BtoBやBtoCなどのビジネス形態にも強くこだわらない学生が増えています。
ただし、どちらかを選ぶとすると、日系企業・BtoBを選ぶ学生が多いため、あくまでも企業の安定性を重視して就職活動をしていることがわかります。
まとめ
21卒と22卒学生を比較すると、やや安定志向が強まり、希望の業界のランキングも大幅に入れ替えの結果となりました。
今まで比較的人気だった業界は、早急に採用計画の見直しが必要でしょう。
また、大手一択の学生が減っている傾向があり、大手ベンチャー問わずして安定した事業成長が見込める企業を選ぶ学生も増えています。
今後も企業ごとに、採用格差が広がる可能性があります。各社、早期に母集団形成の戦略を立て、22卒採用にとりかかると良いでしょう。