ビジネス環境は変化のスピードが早くなり、臨機応変な課題解決や対応ができる自立人材型・自立型組織が求められています。そしてその自立した人材や組織を形成する重要な要素のひとつに「レジリエンス」が注目されています。
レジリエンスを正確に把握することは、強固な組織作りに必要不可欠です。
今回は採用活動を行う際に欠かすことのできない、レジリエンスの概念や重要性、またレジリエンスの高め方などについても詳しく解説していきます。
レジリエンスとは
レジリエンス(resilience)とは、直訳すると「反発力」や「回復力」などと表現されます。
画像引用:日本ポジティブ教育委員会
物理学から生まれたレジリエンスは心理学でも用いられ、近年では組織論や経営学、社会システム論など幅広い分野で取り入れられているのです。
ビジネスの分野で取り入れているレジリエンスとは、責任や失敗などのストレスや環境の変化において「精神的な回復力」「打たれ強さ」で乗り越えることを指します。
レジリエンスを身につけることができれば、ストレスがかかっても心や身体の健康を保ちながら、個人そして企業の成長、強固な組織作りに繋げることが可能です。
ストレス耐性との違い
ストレス耐性は、精神的・肉体的・心理的にストレスを感じた個人が耐えられる程度のことを意味しています。
ストレス耐性はレジエンスを構成するための要素のひとつとして位置づけるのがいいでしょう。ストレスから回避する力がレジリエンスであり、レジリエンスを発揮するためには、ストレス耐性が必要不可欠です。
メンタルヘルスとの違い
メンタルヘルスは心の健康状態、精神的なストレスや悩みなどを緩和するための手助けを他者が当人にすることを意味します。
精神的な問題に対してサポートを他者が当人に行うのがメンタルヘルス、一方、起きた困難への対応力や回復力を表すのがレジリエンスです。レジリエンスはメンタルヘルスの内部に含まれるものと捉えるのがいいでしょう。
なぜレジリエンスが求められる?
厚生労働省による「労働安全衛生調査(実態調査)」(2018)の結果の概況によると、「現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある労働者の割合」が58.0%となっています。
ストレスの内容は、「仕事の質・量」が59.4%と最も多く、次が「仕事の失敗・責任の発生等」で34.0%、「対人関係(セクハラ・パワハラ含む)」31.3%です。
参照:厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」(2018)
レジリエンスが注目される理由には、働き方改革の存在やビジネス環境が複雑に変化する背景が見受けられます。
様々な働き方が認められる社会になった一方、労働者を取り巻くビジネス環境は複雑を極め、非正規雇用も増加しています。さらに、経済のグローバル化も進行し、景気の低迷やハラスメントの表面化などにより先行きが不安定な時代と言えるでしょう。
仕事に対して大きなストレスを抱える人が過半数を超えている現代において、レジリエンスを高めることで、様々なストレスと上手に付き合っていく力が求められます。
レジリエンスを高めることで得られる効果
様々な分野で注目を集めているレジリエンスを高めることで、具体的には一体どのようなことが効果として得られるのでしょうか。
集中力・パフォーマンスの向上や活力高く働ける
レジリエンスが高まることで感情を自分でコントロールでき、どんな事に対しても高いモチベーションを保ちながら取り組むことが可能です。最大限の能力発揮に繋げることができます。
ネガティブな出来事にうまく対応でき柔軟性が高まる
ネガティブな出来事が起きてしまった時、それを精神的なダメージとして受け取るかどうかは、当事者の捉え方次第です。
レジリエンスを高めることで、どのような出来事が起きても臨機応変な対応ができ、不安やストレスで落ち込むということも無くなるでしょう。
ストレスを受けても効果的な対処ができ成長できる
人にとって想定外の変化や出来事は、時にストレスになることがあり、自分が日々の生活を送る職場では起こり得ることです。
レジリエンスを高めることで予想のつかないストレスをバネにし、前向きに対処することができます。ストレスが逆に成長材料にもなるのです。
レジリエンスが必要な人材・企業の特徴
どんな人でも、ビジネスパーソンであれば、レジリエンスが求められる時代です。
組織には、人生経験の中で、すでにレジリエンスが備わっている人もいれば、レジリエンスが低くトレーニングを必要とする人もいます。ここでは、組織においてレジリエンスが必要な人材や企業の特徴について2個ずつピックアップしています。
レジリエンスが必要な人材
ではまず、レジリエンスが必要な人材から説明していきます。
ストレスを上手に発散できない人
ストレスが溜まりやすい人は、上手にストレスと付き合うことができていません。ストレスを溜めやすい考え方や行動パターンがあり、それを上手く発散することができないため、自分のストレスが原因で周りにストレスを与えてしまう存在になり得ます。
例えば、業務効率の低下やミスの発生、ハラスメント行為などがあげられます。ストレスが溜まりやすい人は、完璧主義なところがあり自分にも他者にも厳しい傾向があるのです。レジリエンスを高めることで、心の健康が保たれ生産的で健全な組織運営に繋がります。
結果ひとつひとつに対して一喜一憂する人
目の前の様々なことに、いちいち一喜一憂してしまう人は周囲の結果や環境に振り回されやすく、平常心を保ちながら働くことができません。特に失敗や叱責を受けた時に、ネガティブな結果に繋がりやすい傾向があります。
例えば、激しく落ち込むと立ち直れない、失敗や周囲の反応が怖くて意見が言えない・挑戦できない、メンタルの不調に陥るなどです。レジリエンスを高めれば、何かある度に一喜一憂せずに済みます。「心の持ちよう」という心構えが必要と言えます。
レジリエンスが必要な企業
次に、レジリエンスが必要な企業の特徴にはどんなことが挙げられるのでしょうか。
組織内でのコミュニケーションや交流が少ない企業
一緒に働く仲間同士、認め合い尊重し合うことや価値観の違う意見を素直に聞き入れるためには、組織内のコミュニケーションや交流が重要になります。
同じ部署で働く人たちとのコミュニケーションを積極的に行うことも大切ですが、他部署や上下関係を気にせずに交流を積極的に行っている企業や組織は、レジリエンスが高いでしょう。
失敗や問題が起きた時に組織全体で補うことができない企業
日頃から社員同士の交流が円滑にできていれば、失敗や問題が起きてしまった時に、解決に向けて早い対応がしやすくなります。
問題を起こした個人だけで問題解決するのではなく、管理職や指導者などが連携し一致団結でき問題を解決するための体制が築かれている企業や組織もレジリエンスが高いです。
レジリエンスを高めるための5つの要素
レジリエンスを高めることで、ストレスが発生してから立ち直るまでの時間を一気に縮めることが可能です。ここでは、レジリエンスを高めるための5つの要素を紹介していきます。
要素1 気分転換や息抜き
レジリエンス高めるためには、ネガティブな思考の悪循環から如何に早く脱却するかがポイントです。
気分転換や息抜きなどによるストレス発散が重要になり、運動や音楽などが効果的であると言われています。また、肉体的な健康のためには、良質な睡眠も欠かせません。
要素2 感情を言葉で表現し思考プロセスを見直す
ストレスがかかった時のマイナスの感情を言葉で表現することで、ストレスに対して自分が何を感じたのか明確にできます。
また、感情を言葉で表現した後は、なぜそのような感情に至ったのか自分の思考プロセスを見直すことが大切です。
要素3 達成しやすい小さな目標
レジリエンスを高めるために必要な自己肯定感や自尊感情を養うには、実際に成功体験を経験する必要があります。
成功体験を多く積み重ねるには、小さな目標達成が必要不可欠です。
要素4 過去の成功体験を書き出す
レジリエンス向上に必要な成功体験の積み重ねには、過去に体験した成功例を書き出すことも効果的と言えるでしょう。
自己肯定感や自尊感情を高めるのに、可能な限り多くの成功体験を書き出すことが重要で、「感謝された」「笑顔が素敵と言われた」など些細なことでも十分効果があります。
要素5 周りの人に感謝を伝える
ネガティブ思考の悪循環を繰り返さないために重要なのが、常に自分の中にポジティブな感情を持てるようにすることです。
日頃から周りの人に感謝を伝える習慣が身につけば、日々の何気ない生活の中にある幸せを感じられます。簡単にポジティブ感情を持つことができる手段のひとつです。
採用時にレジリエンスをどうチェックするか?
レジリエンスの向上は、個人にも、企業をはじめとした組織にもメリットがあります。
メリットがあったとしても採用時に、見極めることができなければ企業のための人材確保には繋がりません。以下が採用時にレジリエンスの高さをチェックするポイントになります。
ストレス感知能力 | ストレスの原因がある場合に、ストレスを感じるとることができる能力 |
ストレス回避能力 | ストレスを感じやすい性格が関係し、感じる前に割り切ることができる能力 |
ストレス処理能力 | ストレスの原因そのものをなくしたり弱めたりできる能力 |
ストレス転換能力 | ストレスの原因を理解し、良い方向に考えられる(ポジティブ)能力 |
ストレス経験値 | これまでに受けたストレスに対してどの程度対応し、経験しているか |
ストレス容量 | ストレスをどの程度抱えられるか、容量の大きさ |
仕事に対する責任感、そして具体的なエピソードを問うことでレジリエンスの高さの程度を把握することができます。ポイントとしては、「なぜ?」ではなく、「例えば?」で質問を投げ掛けるといいでしょう。
まとめ
組織を形成するうえで重要になる「レジリエンス」について紹介しました。目まぐるしく変化する現代社会において求められる能力のひとつです。
労働者のレジリエンスを高めることで、結果的に組織のレジリエンスも高まります。まずは、働きやすい環境や職場作りから始めてみましょう。
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