早期退職制度とは?メリットやデメリットを紹介!導入時の流れや注意点

早期退職制度

早期退職制度と希望退職制度の違いをご存知ですか?また、早期退職制度は普通の退職制度と何が異なってくるのでしょうか。

ここでは、言葉では知っていた「早期退職制度」をほかの退職制度と比較しながら説明していきます。早期退職制度のメリット・デメリット、導入から注意点など、人事担当者の方が知りたかった早期退職制度の情報をご紹介していきます。

早期退職制度とは

早期退職制度

早期退職制度とは、定年を迎える前に従業員が企業を退職することを指します。

常に従業員が応募できる、従業員の今後の選択肢を広げることができるなど福利厚生の意味合いが強い制度です。応募者には再就職支援や退職金の割増など、優遇措置がとられることもあります。

希望退職制度との違い

早期退職と希望退職は、同じ意味で捉えられることがありますが意味が異なってきます。

希望退職制度とは企業が希望退職者を募集して、自ら申し込んで退職することを指します。業績悪化による人件費削減や将来の経営リスクに備え、人数や時期を限定して退職者を募るのが特徴です。この場合、自己都合の退職ではなく会社都合での退職となります。

希望退職制度は会社の業績悪化や人件費削減のために使われるものであり、早期退職制度は業績に関係なくとも、一定の年齢に達したときに自分の意思で判断して退職できる制度であることがわかります。

リストラとの違い

リストラとは「リストラクチャリング(restructuring)」を略した言葉であり、広義で事業再構築として捉えられます。

しかし、日本では人員削減や整理解雇という意味合いで使われることが多くあります。リストラの方法は主に2つあり、希望退職制度のように希望退職者を募って行う方法と、特定の従業員に対して個別に退職勧奨する方法です。

個別に退職勧奨する場合、行き過ぎた自主退職の依頼は退職強要になってしまうので気をつける必要があります。

選択定年制度との違い

選択定年制度とは、定年退職の前に従業員が自らの退職年齢を決めることができる制度です。

退職する年齢の範囲は、60歳から65歳の間で自由に選択できます。従業員の平均年齢が上がり組織の硬直化を招いているため、大企業を中心に利用されている制度です。

早期退職制度を設けるメリット・デメリット

早期退職制度を設けることは、企業にどんな影響をもたらすのでしょうか。メリットとデメリットの両方の観点から見ていきましょう。

早期退職制度のメリット

まず、早期退職制度のメリットを2つ紹介します。

トラブルを軽減し人件費の削減が可能

早期退職制度の1番のメリットは、人件費の削減です。

勤続年数の長い従業員ほど給与は高額なため、定年前に退職してもらえば毎月の人件費を大幅にコストダウンすることが可能です。また従業員の早期退職のメリットとして、退職金の割増しや再就職の斡旋などがあるのでトラブルも最小限に抑えることができます。

組織の活性化や若返りを図ることができる

早期退職制度による人員の入れ替えで、企業の活性化や若返りにもつながります。少子化により企業内の年齢層が高くなり、若手社員の活躍の場が減少傾向にあります。優秀な人材が昇進できないと言った弊害も出てきているのが現状です。

早期退職制度を利用して中高年の希望退職を募集すれば、若手社員のキャリア形成にもつながっていくでしょう。

早期退職制度のデメリット

次にデメリットを3つ紹介します。

割増退職金

早期退職制度には従業員にもメリットが必要です。

そのため、従業員が早期退職制度に応募しやすくするために優遇措置として退職金の割増制度を導入する企業が多くあります。長期的に見れば人件費削減にはつながりますが、退職金の支払いにより一時的に支出が増えるので、自社の経営状況を考慮する必要があります。

優秀な人材流出

早期退職制度は、企業側が想定していた人の退職だけではなく、将来を期待していた人材までを早期退職へ促してしまう可能性があります。

また、重要なポジションであった人ほど後任の選定や引き継ぎに膨大な労力と時間を費やし、社内の混乱を招くこともあるでしょう。優秀な人材が流出してしまうことは、企業にとって大きな痛手です。

経営危機と誤解される

早期退職の意図をしっかりと従業員に説明していない場合、会社の危機であると不安に感じる人も出てくるでしょう。

それに焦りを感じて優秀な人材が退職を考え始める可能性もあります。早期退職制度の導入目的を従業員に理解してもらい、不安を煽ることがないようにしましょう。

早期退職制度の導入と実施の手順

早期退職制度の導入と実施の手順

ここでは早期退職制度の導入から実施まで順を追って説明していきます。検討されている企業の方はぜひご参考にしてください。

早期退職制度の目的を定める

早期退職制度を導入するにあたり、目的を明確にすることは大切です。

早期退職でどのような効果を期待し、なんのために導入するのか、導入によって従業員に不安を抱かせないためにもはっきりとさせておく必要があります。

対象者や実施期間を決定する

退職制度の目的が定まったら、その目的に従い早期退職制度の対象者や人数、実施期間を決めていきましょう。

年齢や勤続年数、部署などを指定されることが多くありますが、対象者を絞りすぎない配慮が大切です。

優遇措置の検討

早期退職者制度の優遇措置については、特に慎重に判断する必要があります。

優遇措置の内容によっては想定していた退職者の数が集まらなかったり、逆に必要な人材が流出してしまったりすることも考えられます。どの程度の優遇措置を取るべきか社内でしっかりと話し合う必要があるでしょう。

従業員との協議と取締役会での決議

早期退職制度の内容を労働者と使用者で協議して、修正を加えながら制度の最終調整に入ります。

早期退職制度は会社法に定められた「重要な業務執行」に当てはまるため、制度の実施の決定は取締役会の開催が必要です。そこで決議を得たうえで、はじめて早期退職制度を実施できるようになります。

早期退職制度募集条件の従業員への提示

早期退職制度の実施には、従業員へ募集基準を明確に提示しましょう。

提示方法には回覧や文書、説明会の実施などさまざまな方法があります。募集人数や対象者、退職金の取り扱いなど、あとからトラブルが起きないように明確に定めておきましょう。

従業員との面談

早期退職制度の理解を深めてもらうためには提示だけでは不十分です。

個人面談を行い趣旨や目的を理解してもらいましょう。従業員から、早期退職制度を利用した場合の退職金や優遇措置など質問される場合もあるので、それぞれの従業員に具体的な条件を答えられるようにしておくことも大切です。

辞令発令

早期希望退職者が決定したら退職届を提出してもらい、辞令を発令します。それにより企業と従業員の雇用契約は解消されることになります。

早期退職制度の利用社員を引き留めたい場合

早期退職制度を利用すると、想定外の社員が手を挙げることもあるでしょう。どうしても引き止めたい場合のポイントを3つ紹介していきます。

退職希望者の本音を知り解決策を探る

まずはなぜ退職したいのか、早期退職制度の優遇措置以外にも何か理由があるかもしれません。上辺だけの理由でなく社員の本音に耳を傾けましょう。退職希望者の抱えている不安や不満が明確になったら一緒に解決策を探ります。

業務量の多さに不満を抱えていれば業務量の調整やフォロー体制を整えるなどの話し合いをするといいでしょう。人間関係の悩みであれば、部署や担当変更を提案するのもひとつの手です。改善の意思表示をすることで、引き止められる可能性も出てきます。

キャリアビジョンの見直しを図る

退職希望者のキャリアビジョンをヒアリングしましょう。退職を引き止めるために、この会社に残りたいと思ってもらうことが大切です。

そのため希望する条件の見直しを図り、今後任せたい仕事や期待している役割を伝えると、自分が会社にとって必要な人材であると気付くこともあるかもしれません。

ほかの社員に知られないようにする

引き止めたい社員がいる場合、退職の意思があることをほかの社員に知られないようにしましょう。

説得を続ける間に気持ちが変わり、会社に残る決断を下すかもしれません。そんな時に、ほかの社員に退職の意思を知られていたら、会社に戻りにくくなるでしょう。

早期退職制度の運用上の注意点

早期退職制度の運用上の注意点

早期退職制度を利用するには、次の2点に注意しましょう。

リスクに備えて制度の適用設定を設ける

早期退職制度は特定の従業員に対して行うものではないので、退職希望者を多く招いてしまったり、優秀な人材が流出してしまうリスクもあります。

そのため早期退職制度の適用する勤続年数や年齢、部署などの範囲の設定を盛り込むといいでしょう。ただし対象者を絞りすぎない配慮が大切です。

守秘義務を徹底する

退職者との間に誓約書や秘密保持契約書を作成し、退職後にも守秘義務を徹底するようにしましょう。

退職者が会社のノウハウを流出してしまうようなトラブルを防ぐためにも大切なことです。守秘義務契約を締結していれば退職者とトラブルになった場合、会社の立場を守ることができます。

まとめ

早期退職制度の導入は人件費の削減や組織が若返るなどのメリットがある反面、優秀な人材が流出してしまったり、会社が経営危機であると誤認させてしまったりするなどのデメリットもあります。

早期退職制度の導入にあたり、目的をしっかりと定めて社内にしっかりと周知させることが大切です。

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