今回のテーマは「Uターン就職」。
進学や就職を機会に、三大都市圏に移動する若者が増え、地方では「若者の地元離れ」による人口流出が大きな社会問題となっております。実際に、地方では、労働人口の減少や、企業の高齢化によって、経営に支障をきたす企業も散見されるようになりました。
そして、この問題を解消し、地方創生の鍵を握るのがこの「Uターン就職」です。Uターン就職という言葉を知っている方は多いと思いますが、Uターン就職希望者を採用するためには、最新の動向を把握することが大切です。
そこで今回は、Uターン就職希望者の動向はもちろん、Uターン就職希望者を採用するための注意点・工夫についてお話していこうと思います。
Uターン就職
そもそもUターン就職とはどのような意味なのでしょうか。
Uターン就職とは
“Uターン就職”とは、地方で生まれ育った方が都市部の学校へ進学し、卒業後に故郷に戻って就職することを指します。
合わせて覚えておきたい!「Iターン就職」「Jターン就職」
Iターン就職とは
“Iターン就職”とは、都市部で生まれ育った方が、卒業後に地方に移住して就職すること。
Jターン就職とは
“Jターン就職”とは、地方で生まれ育った方が都市部の学校へ進学し、卒業後に故郷とは異なる地方で就職すること。
Uターン就職希望者の動向
地元就職希望率は下降傾向
-グラフ引用元- 「2020年卒 マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査」
マイナビが発表した「2020年卒大学生Uターン・地元就職に関する調査」によると、地元就職希望率は、地元進学者で69.4%(前年比2.3Pt減)、地元外進学者で33.4%(前年比0.4Pt減)となり、全体平均としても49.8%(前年比1.0Pt減)と、調査開始以降、初めて50%を下回る結果となったようです。
調査開始時(12年卒)と比較すると全体で13.5Pt減となり、全国的に学生の地元就職への意識が年々低くなっていることがうかがえます。
卒業高校エリア別でみると、北海道・東北・東海・中国・四国の5つのエリアで全体平均を上回る減少率となっており、特に「東北」は25.7Pt減(12年卒76.7%→20年卒51.0%)と大幅に減少していることがわかります。
地元外進学者の下降はより顕著
地元外進学者の地元就職希望率に着目すると、その減少率はより顕著に表れています。地元外進学者のみに着目すると、調査開始時と比較して15.7Pt減(12年卒49.1%→20年卒33.4%)と、全体の減少率よりも2.2Pt減少していることがわかります。
卒業高校エリア別でみると、前項同様に北海道・東北・東海・中国・四国の5つのエリアで大幅な減少となっており、これが地元就職希望率の減少に大きく起因していると言えます。
つまり、地元外進学者のUターン就職に対する関心を高めることが、地元就職希望率の向上に大きく影響するのです。
地元外進学者の地元就職希望率が減少している理由
-グラフ引用元- 「2020年卒 マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査」
では、なぜ地元外進学者の地元就職希望率が減少しているのでしょうか。マイナビの同調査から、大きく2つの要因があることがわかりました。
- 物理的な距離による障害
- 地元企業の情報不足
物理的な距離による障害
マイナビの同調査によると、地元外進学者の約40%が「地元までの交通費や移動距離・移動時間」に障害を感じているようです。
更に、上記障害に関連する「学業とのスケジュール調整」「地元以外での就職活動とのスケジュール」「地元企業の選考スケジュール」を含めると、約50%の方が”物理的な距離”による障害を感じていることとなります。
つまり、この物理的な距離による障害を解消することが、Uターン就職希望者を増やす糸口となるのではないかと思います。
地元企業の情報不足
「地元企業の情報不足」だけを見るとわずか6.2%です。しかし「やりたい仕事がない」と回答している方も、情報不足がゆえに”知らない”だけの方も含まれているはずです。
そもそも、地方においても地元企業の情報を収集する場(就活系イベント)は少なく、そんな中で、地元外進学者が地方企業の情報を収集するのは至難の業です。更に、物理的な距離による障害がその難易度をより高めており、地元外進学者は地元企業の情報を収集したくてもできないという事態になっているのです。
つまり、地元外進学者に対して情報を提供する場を増やすことが、地元就職希望率向上に繋がると言えますね。
Uターン就職希望者を増やすために企業ができること
ここまでで、地元就職希望者が年々減少傾向にあること、そして、Uターン就職希望者が著しく減少していることがおわかりになったと思います。では、そんな状況下でUターン就職希望者を募るためにはどのようにすれば良いのでしょうか。
一部上述しておりますが、ポイントは「学生の感じている障害を解消すること」です。
オンラインでの説明会や選考を実施
まず1つ目は、オンラインでの説明会や選考を実施することです。物理的な距離による障害を解消する方法としてはこれが一番有力です。
オンラインで実施することにより、授業との調整やその他企業とのスケジュール調整も容易にできるようになり、都市部で就職活動を実施するときと変わらず障害がなくなります。
中には、人事担当者が都市部に出向いて説明会や選考を実施している企業も御座いますが、1度で母集団を形成することは難しく、何度も足を運ぶとなると工数はもちろん会場費や移動費といったコストもかかってしまい非効率になってしまいます。
それに対し、オンラインによる実施は、人事担当者としても、普段地元で実施している説明会と工数が変わらず、都市部の学生にとっても普段都市部で就職活動をしているときと何ら変わりなく就職活動することができます。
現在は無料のオンラインツールも出回っておりますので、まだ導入をしていない企業様は是非1度ご検討してみてください。
交通費の支給
説明会や一次面接など、前半の選考フェーズについてはオンライン実施でも問題ないものの、フェーズが後半になるにつれて、オンラインではなく対面(リアル)を求める企業様も多いかと思います。
その際は、都市部の学生に対して交通費を支給するようにしましょう。前半のフェーズだと支給対象者が多く、コスト面の負荷が大きいですが、フェーズが後半になるにつれてスクリーニングされ、対象者が減ってくるため、負担も軽減されます。
学生の特徴として、選考フェーズが後半になればなるほど、優先順位が高まり、時間を使ってでも会場に足を運ぶ傾向にありますので、交通費を支給することによって歩留まりを解消することも可能です。
帰省しやすいタイミングでのインターン実施
「地元企業の情報不足」を解消する1つの手段が「適正なタイミングでインターンを実施する」ことです。
近年、企業を知ってもらう手段としてインターンシップを活用する企業が増えています。しかし、都市部を始めとした、主要都市では盛んに行われているものの、地方ではまだ実施企業数・実施回数ともに少ない状況です。
-グラフ引用元- 「2020年卒 マイナビ大学生Uターン・地元就職に関する調査」
マイナビの同調査によると、8月~9月の夏休み期間や、12月~3月の冬休み・春休み期間といった長期休暇の時期が予想通り、帰省しやすいタイミングのようです。しかし、1月中旬~2月上旬はテスト期間のため、学生の動きも少し鈍ります。そのため、8月~9月のサマーインターンが一番効果的かもしれません。
最後に
いかがでしたでしょうか。ご覧いただいたように、Uターン就職希望者は年々減少しています。
しかし、企業側の努力・工夫によって、地元就職に対する関心を引き立てることは可能なのです。中には、地元就職・Uターン就職を斡旋するために企業側への助成や学生側への援助を行っている自治体もあります。
自社の今後の存続・発展はもちろん、地方経済の活性化のためにも、是非Uターン就職者の採用に力を入れて頂きたいです。
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