仕事をするうえで切っても切り離せないストレス。業務で負荷がかかった時、精神的にどのくらいまで耐えられる人なのか知っておくことは、早期離職の予防に繋がることもあり、円滑に仕事を進めるためには必要不可欠です。
本記事では面接時にストレス耐性を確かめる質問例や、その際の注意点などを紹介します。
ストレス耐性とはなにか?
ストレス耐性とは、ストレスに耐える強さをを指します。スキルが高い人材だったとしても、ストレスに上手く対応できなければ体調不良や退職に繋がり、持ち前の能力を十分に発揮できなくなってしまいます。
2014年に「労働安全衛生法」が改正され、労働者が50人以上在籍している事業所でストレスチェックを行うことが義務化されたことにより、社員のストレス耐性を重要視する企業が増えています。
そこで今回は、面接でストレス耐性を見抜くコツについてご紹介していきます。
応募者のストレス耐性を見極める必要性
2021年の厚生労働省【労働安全衛生特別調査】において、現在の仕事や職業生活に関することで強いストレスとなっていると回答した労働者は53.3%と半数以上であることが分かっています。
その中で特に多くの声があった原因は、以下になります。
- 「仕事の量」45.6%
- 「仕事の質」36.0%
- 「対人関係/セクハラ・パワハラを含む」 24.8%
社会では人間関係や責任、ノルマへのプレッシャー、トラブル対応、人事評価、新しい環境への適応など、ストレスがかかる要素が多くあります。
ストレスがかかりすぎるとメンタルヘルスの不調を招くことがあり、特に新卒で採用した人材は、新しい環境や人間関係、仕事の責任やプレッシャーなど、生活が大きく変わったことによるストレスを受けやすい傾向にあると言えます。
ストレス耐性を面接で見極めることによって、早期離職を予防し、候補者の精神的な健康を守れるのかを判断することに繋がります。
知っておくべきストレス耐性に関わる力6つ
ストレス耐性を見抜く上で、知っておくべき6つの力をご紹介します。面接時には下記能力ごとにチェックを行うと分かりやすいかもしれません。
感知能力
感知能力とは、ストレスの原因を感知する能力です。感知能力が低ければストレスを感じにくいため、プレッシャーがかかりやすい仕事でも本来の力を発揮できるなどの利点があります。
一方、感知能力が高ければ、仕事上で注意すべきストレスの原因に早めに気づけるため、自分自身で対策を取ることが可能です。
回避能力
回避能力とは、ストレスの原因を回避する能力です。ストレスの原因に対して「こんなものだ」と割り切ったり、「気にしたって仕方がない」と流したりする力を指します。クレームを受けた際などに、自分自身を必要以上に責めることなく、やり過ごすことができます。
処理能力
処理能力とは、ストレスの原因に対して適切な処理をすることで、ストレスを弱めたりなくしたりできる能力です。処理能力が高い人はストレスの原因がある状況でも冷静に現状を分析し、対応することができます。
転換能力
転換能力とは、ネガティブな要素をポジティブに転換できる能力です。仕事で誤った行動をしてしまった時に、経験として次に活かすことを考えることができ、必要以上に思い悩まずに済みます。
経験値
経験値とは、人生で経験を積むことで鍛えられたストレスへの強度です。同じようなストレスを経験すれば、適切な回避の仕方を覚えたり、それ自体と上手く付き合っていくことができたりします。
容量
容量とは、ストレスを抱えられるキャパシティです。人によってストレスに対する心の容量は異なります。容量の多い人はストレスの原因に出会っても、容量の少ない人に比べてストレスを感じにくいと言えます。
面接でストレス耐性を見極める質問例
それでは面接において、どんな質問でストレス耐性を見抜けばよいのでしょうか?先程ご紹介した6つの力に沿って質問例をご紹介します。
もしかしたら、面接で今まで何気なくしていた質問もあるかもしれません。今後は、下記のようなことも意識してみるとより多くを知ることができるでしょう。
感知能力に関する質問
ストレスに気付く力を持った人は、ストレスを早く、そして正確に感知することができます。そのため上記のように質問に対して具体的なエピソードで答えられた場合は、ストレスに気付く力があると言えるでしょう。
ただ、ストレスに気付く力が強くても、発散する力や受け入れる力が弱ければ、ストレス耐性は低いので注意が必要です。
また、具体的エピソードを聞くことで、候補者のコミュニケーション能力を見ることもできます。これまでやってきた事とアピール内容に齟齬がないかを確認することもできるので、ぜひ面接で取り入れたい手法の一つです。
回避能力に関する質問
ストレスを避ける力を見るためには、ストレス要因をどのように認知し、対処しているのかが分かるような質問が効果的です。上記のような回答だった場合、さほど負担を感じていないと判断できるので、ストレスを避ける力があると見られます。
処理能力に関する質問
ピンチをどうやって乗り越えたのか。また、解決にはどれくらいの時間がかかったのか。この質問によって自分にかかるストレスをどうやって、どのぐらいの時間をかけて解決にもっていけるか、さらにどれだけ早く切り替えが出来るかを見極めることができます!
具体的な解決方法を答えることができれば処理能力は高いと言えます。
転換能力に関する質問
ストレスの転換能力を見るためには、ストレスを感じたときの行動パターンが分かるような質問が効果的です。①のような回答だった場合、ストレスを感じたときは、「複数人ではしゃぐ」「盛り上がる」「人に悩みを打ち明ける」といった行動で解消していくという傾向がありそうです。
逆に②のような回答だった場合、ストレスを感じても、まずは1人でじっくり考えて答えを出していくという傾向にありそうです。
経験値に関する質問
過去のエピソードを聞きながら、自社での業務を遂行できるレベルの経験があるのかを確かめていきます。ストレスがかかることが予想される出来事に対して、適切に対処し、成果を挙げた経験がある場合はストレスの経験値が高いです。
容量に関する質問
ストレスの容量は個人差があります。応募者がどの程度の容量を持っているかがわかるような質問をします。容量が少ない人は眠れなくなった体験が多い可能性があります。逆に容量が多い人はそれほど苦にしていないような回答をすることが多いようです。
面接でストレス耐性を見極めるコツ
ここまでストレス耐性や見極めるための質問を紹介してきましたが、ではどのように見極めれば良いのでしょうか。次は面接でストレス耐性を見極めるコツを紹介します。
ストレス耐性が高い人の特徴を知る
ストレス耐性が高い人は基本的にポジティブな考え方ができます。不利な状況でもチャンスと考え、ミスをしたり上司に指摘を受けたりしても前向きに考えます。「これを今後に活かそう」という考え方なため、間違いを次に活かしていくことができるのです。
また、自分をきちんと受け入れられる人、集中力がある人もストレスに強いという傾向を見せます。
一方、几帳面で責任感が強すぎる人や自分に厳しい人は、何かあった時に自分を責めてしまう傾向があります。また、怒られるのが苦手な人や、問題があるとすぐ逃げてしまう人も、ストレスに弱いといえるでしょう。
回答に対して掘り下げて質問する
ストレス耐性について質問したときには、過去のエピソードについて掘り下げることを意識してみてください。ストレスについての質問はどうしても主観的な回答になる可能性が高いため、その時実際にあったエピソードを聞いて、より客観的で素に近い状態を知るようにしましょう。
また応募者に「なぜそう思ったのか」など質問を重ねてみてください。最初の回答は準備していたものである可能性もあるので、矛盾点がないかなどを確認するのに効果的です。
総合的に評価する
質問例など様々紹介してきましたが、人の心は複雑です。そのため1つの要素だけで判断するのは危険です。いくつかの質問への回答によって総合的に判断するように意識しましょう。
また回答がストレス耐性に強いと判断できるものでなくとも、必ずしもストレス耐性が弱いわけではないので、エピソードの内容やそれ以外の受け答えも参考にしながら判断するようにしてみてください。
新卒・中途で見極めるコツに違いはある?
では、新卒採用とキャリア採用で見極めるコツに違いはあるのでしょうか?
質問自体に大きな違いはないと言えます。ただ、応募者からの回答にはそれぞれの特徴が出てくるかもしれません。新卒採用であれば、社会経験がないので学生時代のエピソードが多くなり、キャリア採用であれば前職のエピソードが多くなることが予想されます。
そういった意味では新卒採用の面接の方が、色々な角度から総合的に判断し、ストレス耐性を見極める必要がありそうです。
ストレス耐性を面接で見極める際の注意点2つ
近年、採用の面接時にストレス耐性を見極める質問をするのは一般的になってきましたが、注意する点が2点あります。
圧迫面接と思われないようにする
まず1点目は、圧迫面接だと応募者が感じるような面接はしないことです。
ストレス耐性を知りたいからといって、必要以上の強いプレッシャーをかけながら面接をしても、良い結果は得られません。面接を受ける側が余計に緊張して、本来の姿を見せにくくなる可能性が非常に高いと言えます。
また、圧迫により恐怖心や嫌悪感を感じると心を閉ざしてしまう場合もあります。過度な圧迫で、相手を萎縮させないように注意してください。何事も「適度」を心がけることが大切です。
1つの要素だけで判断しない
もう1点目が1つの要素だけで判断しないということです。総合的に判断することが大切だと紹介しましたが、ひとつの質問で相手のストレス耐性を評価することがないよう注意しましょう。
採用面接では、緊張して受け答えがうまくできない応募者が多くいます。面接の時間も短く、その中で応募者のことをすべて理解するのは、難しいでしょう。
また、自分を良く見せようとアピールするために、本当のことを話していない可能性もあり、面接での評価は参考程度にとどめることも大切です。
まとめ
本記事ではストレス耐性とは何か、また面接時にストレス耐性を確かめる質問例や、その際の注意点などを紹介しました。ストレス耐性を確かめることはミスマッチを防ぐために非常に重要です。採用面接では、応募者の特徴や本音を引き出せるよう質問してみてください。
しかし、ストレス耐性を見抜いて見事採用成功した後も気は抜けません。入社後のフォローもとても重要です。そのため、入社後の若手社員のストレスを軽減して、早期離職を防ぎたい方はこちらの記事もあわせてご覧ください!