今回は「オヤカクの具体的な対策」についてお伝えします。
オヤカクとは?
オヤカクとは、漢字にすると「親確」。簡単に説明すると、就職活動で内定した学生の親に企業側が入社の意思を確認するという意味です。
勿論、入社の意思は学生本人に確認するのが前提ですが、更に親にも確認するということです。
なぜ親の承諾が必要か?
子離れができない親
「オヤカク」の背景には、親の子離れが出来ていないことがひとつの要因です。
苦労して子供が内定を勝ち得たとしても、過保護な親は身分の安定している公務員や将来性の高い上場企業で無いと内定を辞退するケースも多々あると聞きます。
断るのは簡単ですが、果たしてそこまで親が踏み込む権利があるのかが疑問です。
企業側もこのようなケースが稀であれば、対策を取らなくても良いのですが、現実は悪化している状況です。
41%の企業がオヤカク対策をしている
これを裏付けるデーターとして一昨年、大手人材サービス会社の調査結果をお伝えします。
何と企業の約41%は新卒採用でオヤカク対策を実施しています。
新卒者を採用するのに掛かるコストは1人あたり約100万円と言われいます。
折角、優秀な新卒者に内定を出しても親に内定を辞退されたら企業側は、どれほどのダメージを受けるか測り知れません。
このような背景から各企業は様々なオヤカク対策を実行しています。
オヤカク対策の具体事例
そこでこの度はオヤカク対策の具体的な企業事例をご紹介します。
事例1 保護者を入社式に招待する。
サッポロビールや広島のお多福ソース、王将フードサービス等で保護者を入社式に招待しています。
式典の後は会社見学、更には自社商品を振舞って家族の懇親会まで用意している企業もあるそうです。
このような活動をする企業は年々、増加しています。
4年前、ミュージシャンの藤井フミヤ氏はご子息が入社したフジテレビの入社式に出席する姿がニュース番組で放送されたのを見た人もいると思います。
更に今年は金融業界の準大手である静岡銀行も実施しています。
親が入社式に同伴するのは珍しい事ではないようです。
この活動はオヤカク対策の一環ですが、むしろ入社後に途中退職の防止という側面もあります。
企業を家族の一員に捉えて子供が退職を考えた場合は親が相談に乗るという図式です。
事例2 保護者説明会を開催する。
東証一部上場企業で経営コンサルティング業を営む船井総合研究所は、7年前から保護者に説明会を実施しています。
具体的には、内定者の保護者に対して会社説明とオフィス見学、役員陣との交流の場を設けています。
会社側としては単に採用面だけの成果だけで無く、長期的には株主や顧客などの可能性も含めた広報活動の一環と考えているとのことです。
説明会の中のプログラムでユニークなのは、他己紹介です。
具体的には内定者が参加している保護者を紹介するという取り組みです。
ただし、単に内定者が保護者を紹介をするのではなく、親への感謝の気持ちを手紙にして伝えるそうです。
これにより、内定者と保護者は企業との繋がりがより身近になるということです。
事例3 保護者へ企業情報資料を送る。
家具/インテリア販売の最大手で知られるニトリホールディングスは、昨年から福利厚生資料を内定者本人だけでなく保護者にも送付しています。
この資料の中には社員の手当金の種類や女性社員の働き方を事細かに紹介しています。
人気企業ランキングの上位でありながら、このようなオヤカク対策を取る背景は、社員の待遇を親に知って貰うことで入社の後押しを促しています。
また、扱う商品は女性に向けたものが多いため、優秀な女性社員を獲得するためにも女性の働き方をクローズアップしていると思われます。
事例4 内定者の家庭訪問をする。
東京で動画制作や動画関連のマーケティングを手掛けるベンチャーIT企業の取り組みを紹介します。
この企業は社長自らが内定を出した学生すべての実家を訪問しています。
きっかけは地方出身の内定者の両親から問い合わせが入ったことでした。
現地に社長が伺ったところ、会社の安定性や将来性を保証することは出来なかったと述べています。
しかしながら、この時、社長は逆に会社を成長させなければならないと実感し、モチベーションが高まったそうです。
この家庭訪問は現在も継続して行っており、保護者とじっくり懇談する内に打ち解けて酒宴になることも多々あるそうです。
バイタリティある社長自らが保護者宅を訪問することで会社そのものを理解して信頼を勝ち取っています。
まとめ
就職は学生にとって人生の大きなイベントのひとつです。
ところがこのタイミングで親子のすれ違いが表面化する。これがオヤカク問題です。
企業側にとってこの問題は家庭内の問題として蓋をする訳にいかない状況になっています。
このため、就職ランキングの上位にある企業も積極的にオヤカク対策に乗り出しています。
しかしながら未だ効果的な対策は見つかっていないのが現状です。
今後、人口減が進む事は分かっており、新卒採用は益々、困難になって来ると予想します。
従って企業側はこの問題を本格的に取り込む段階にあると思います。
企業側は、早い段階で学生に保護者と対話するように促し、双方で理解を深める必要があります。