少子高齢化・団塊世代の大量退職による生産可能人口の低下は今後さらに進んでいきます。その中で企業が成長を維持していくためには、現在勤務している社員の定着率を高めるための施策は必要不可欠です。
そこで昨今注目されているのが「リテンション」です。今回はリテンションの意味やその背景・メリット、強化のための施策に関して紹介していきます。
リテンションとは
ここではリテンションの意味および関連用語の内容に関して紹介します。
リテンションの意味
リテンションは直訳すると「保持」「維持」の意味をもつ言葉で、マーケティング領域では「既存顧客との関係性維持」という意味です。今回紹介する人事領域では「人材の流出を防止するための施策」という意味になります。
リテンションマーケティングとは
企業のマーケティングは、主に「新規顧客の獲得」と「既存顧客に対する活動」の2つの方向から施策が行われます。その中でリテンションマーケティングは、「既存顧客との関係性構築」を目的とした施策です。
既存顧客との関係性を良好に構築していくためには、企業の優秀な人材の確保・定着が必要不可欠です。
リテンションモデルとは
1回だけの購入で顧客との関係が終わってしまうのは、非常にもったいないことです。継続的に商品や経験を提供するサービスを構築することで、顧客との関係性を継続的に繋げることができます。
リテンションモデルとは、このように1回の関係性で終わらせるのではなく、継続した関係性を構築するビジネスモデルのことを言います。
リテンションマネジメントとは
リテンションマネジメントとは、従業員に長く勤務してもらい、それぞれが自身の能力を発揮してもらうことを目的とした人事管理手法です。
- オンライン学習サービスの充実化
- 離職原因を突き止め、原因の改善を行う
- フレックス制度を導入して多様な働き方を推進する
これらの手法を講じることで、従業員の定着化につなげていきます。
なぜ、リテンションが重要?注目される背景
リテンションが注目されている背景に関して3点紹介していきます。
- 転職活動の活発化による人材の定着率の低下
- 少子高齢化・団塊世代大量退職に伴う既存人材の不足
- 副業の増加に伴う働き方の多様化
転職活動の活発化による人材の定着率の低下
昨今、特に若い世代での転職活動は年々活発化してます。
下記のグラフは、3年以内に転職を経験している20代に向けて、今後の転職意識について調査したものです。下記の結果を見ると、若者のほとんどが再度転職を希望していることが分かります。
それに伴い人材の定着率が低下することで、採用・教育にかかるコスト増や人材不足による業務の停滞といった業務への悪影響を与えることになってしまいます。
少子高齢化・団塊世代大量退職に伴う既存人材の不足
少子高齢化・団塊世代大量退職に伴う生産年齢人口の減少により、人材不足はこれからも進んでいきます。
その時に企業のリテンションが改善されていなければ、今後さらに深刻な人材不足に陥り企業としての活動が困難になってしまいます。
副業の増加に伴う働き方の多様化
ひと昔とは異なり、現在は仕事の傍で副業を行い収入を得る人材も増えてきています。
人によっては副業が本業となり、本来本業として勤めていた企業を退職してしまうということは、今後さらに増えてくことが予想されます。
リテンションを高める施策の導入目的
リテンションを高める施策を導入する目的な何かについて3点紹介します。
- 既存社員離職による情報流出の防止
- 新規の人材採用は困難
- 離職率を下げるため
既存社員離職による情報流出の防止
自社に勤務していた社員が転職した際に、転職先の企業に自社の秘密情報が流出してしまうリスクがあります。
そしてそのリスクを抱えた人材が、多ければ多いほど情報流出のリスクは高まります。情報流出のリスクを下げるためにも、リテンションは必要な施策です。
新規の人材採用は困難
少子高齢化に伴う生産可能人口の減少により、今後の人材採用はより困難になってきます。
離職は続くけれど、新しく人を採用することができなけれが、結果として人材不足に陥ってしまうといった状況になってしまいます。そうならないように現在勤務している社員のリテンションを高めることで、新規の人材採用を必要最低限にすることが重要です。
離職率を下げるため
離職率が高い企業に対しての印象は、良くはありません。
そのため離職率が高い企業になってしまうと就職志望者の人数も減ってしまい、新規採用に支障をきたしてしまいます。離職率の高い企業といったイメージを外部から持たれないためにも、リテンションを高め、離職率を下げることは重要です。
リテンション率の計算式
リテンションは直訳すると「維持」という意味であり、リテンション率とは「顧客の維持率」です。リテンション率の計算式は「継続カスタマー数」÷「新規カスタマー数」からなります。
例えば、新規のカスタマーが200名であり、半年後継続カスタマーが50名とします。その場合、計算式は50名÷200名=0.25%となり、半年後のリテンション率は0.25%となります。
リテンションのメリット
リテンションに取り組むことで得られるメリットに関して3点紹介します。
- 離職率低下による採用コストの削減
- 優秀な人材の離職防止による社内スキルの維持
- 企業として長期的に人材戦略を立てられる
離職率低下による採用コストの削減
人材が離職するごとに新しい人材を採用していれば、採用コストはかかります。
離職率が低下すればそれだけ採用コストを下げることができるのです。そのためリテンションに取り組むことで、コストの削減に繋げることができます。
優秀な人材の離職防止による社内スキルの維持
企業にとって優秀な人材の離職は、大きな損失です。
しかし優秀な人材のリテンションを高めることで、社内のスキルを維持することができます。そしてその優秀な人材のスキルを、他の社員に与えることができます。
企業として長期的に人材戦略を立てられる
どの人材を次にどのポジションに当てるかなど、人材の戦略は企業にとって必要な行動です。しかし人材が転職で流動的になればなるほど、長期的な人材戦略が立てられなくなってしまいます。
リテンションに取り組むことで、企業として長期的に成長していくための人材戦略を安定的に立てることができます。
リテンション強化のための3つの施策
ここでは具体的にリテンションを強化するために行う3つの施策に関して紹介します。
- 社員がスキルアップできる環境を整える
- 働きやすい職場環境づくり
- 給与体系・評価体系の改善
社員がスキルアップできる環境を整える
社員にとってスキルアップは非常に重要です。
自身のスキルアップが、現在勤務している企業で感じられなければ、今後のキャリアアップも見えなくなってしまい、転職を視野に入れてしまうようになります。
現在は集合研修に限らず、オンライン学習や資格取得支援で社員がスキルアップできる環境を整えることが重要です。
働きやすい職場環境づくり
社員が働きやすい職場環境づくりをすることも重要です。
- 業務効率化・長時間労働の是正
- 風通しの良い職場環境
- 社内コミュニケーションの活性化
これらのことを取り入れることで社員1人ひとりが働きやすい職場環境を作ることができます。
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給与体系・評価体系の改善
給料が業務に見合ってない・評価体系が不明瞭、このような場合には社員は転職を検討しようとします。そのようなことにならないように、改めて自社の給与体系・評価体系を改善することが重要です。
まとめ
人事分野においてリテンションは「人材の流出を防ぐための施策」です。
今後社会情勢の変化により人材が不足することが見込まれる中で、現在勤務している社員のリテンションを高めることは非常に重要です。リテンションに取り組むことで採用等のコストの削減・優秀な人材の確保といったメリットがあります。
リテンションを強化するためには、社員のスキルアップや職場環境の改善といった非金銭的報酬と、給与体系の改善といった金銭的報酬の両方に取り組むことが重要です。
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