イクボス宣言とは?イクボス10か条とイクボスアワード・取り組むメリットを紹介

イクボス宣言とは

採用活動をする上で「雇用のミスマッチ」を防ぎたいと思う企業様は多く、早期退職の理由として、毎年コンスタントに挙がってくる主なものは「長時間労働」による退職です。

会社の労働環境を整えていかなければ、せっかく採用した新卒者、中途採用者ともに離職してしまい、採用コストが膨らんでしまいます。そこで、労働環境を整備していく「イクボス」施策に注目が集まっています。

イクボスとは?

「イクボス」という言葉の「イク」は、イクメンなどの「イク」で、「育児」と「ボス」を掛け合わせた造語です。

つまりイクボスとは、子育て環境に理解のある上司(ボス)が、部下のワークライフバランスを考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができることを指しています。

イクボス宣言とは

イクボスとは、職場でともに働く部下やメンバーのワークライフバランスを考慮しながら、その人のキャリアと人生を応援し、自らも私生活と仕事を楽しむことができる上司や経営者、管理職を指します。ただ単にワークライフバランスの整備を行うだけでなく、会社・組織の業績目標も達成することがポイントです。なお、イクボスは男性管理職に限らず、女性管理職も含まれます。

このイクボスを自ら名乗り出て、仕事と私生活の両立を目指そうとすることを、イクボス宣言といいます。

イクボス企業同盟とは

NPO法人ファザーリングジャパンは、イクボス宣言を行った企業同士でつながれる「イクボス企業同盟」というコミュニティを運営しています。イクボス企業同盟には現在238社が参加しており、参加者限定の勉強会や情報交換などが積極的に行われています。

イクボスアワードとは

イクボスアワードとは、厚生労働省が主催するイクメンプロジェクトの一環として実施されているアワードです。部下の育児と仕事の両立を支援する管理職であるイクボスを、各企業から推薦式で募集して表彰を行います。男性の育児休業取得を推進するイクメン企業アワードと同時に開催されています。

「イクボス」が注目される背景

イクボスが注目される背景の1つには、育児休業取得率にあるとされています。

育児休業取得率

参照:厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」

厚生労働省の令和2年度雇用均等基本調査によると、男性の育児休業の取得率は、過去最高の12.65%だったことが明らかになりました。しかし政府は2020年の目標を13%としており、僅かに届かない結果となりました。

また男女で比較すると、女性は常に80%以上を保っているのに対し、男性の取得率はやっと10%台に乗ったところです。2014年にNPO法人ファザーリング・ジャパンが発足されて以来、順調に取得率は伸びているものの、まだまだ男性の育休に対しては理解してもらえないという実情もあり、イクボスに取り組むことでの改善が期待されているのです。

労働環境を整えるための「イクボス」

一見、長時間労働と子育て環境は関係あるのか?と思うかもしれませんが、労働時間が長ければ、その分プライベートな時間は削られていきます。夫婦のどちらかが育休を取得していても、もう一方が劣悪な環境で労働していては意味がありません。

また、イクボスは「子育て世代」に限った話ではなく、クリーンな労働環境を目指す施策でもあります。

株式会社ビズヒッツが行った新卒向けのアンケートによると、新卒1年以内に退職した人の6割が、なんと6か月以内の超早期に離職していることがわかりました。早期離職理由の1位は「人間関係」で、2位が「長時間労働や休日への不満」が多くなっています。

中途採用においては、厚生労働省の『転職入職者の状況』によると、19歳以下、20~24歳、35~39歳、45~49歳男性の離職理由第1位は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」でした。また、20~39歳の女性の離職理由も同じく労働時間への不満が第1位となっています。

よって、男女ともに、中途採用者は労働条件を気にして、転職を決意していることがわかります。

イクボスの10か条

NPO法人ファザーリングジャパンは、イクボスを推進するためにイクボスプロジェクト独自の「イクボス10か条」を公表しています。10か条は以下の通りです。10か条の過半数を満たしていることが、イクボスの証明となります。

1,理解

現代の子育て事情を理解し、部下がライフ(育児)に時間を割くことに、理解を示していること。

2,ダイバーシティ

ライフに時間を割いている部下を、差別(冷遇)せず、ダイバーシティな経営をしていること。

3,知識

ライフのための社内制度(育休制度など)や法律(労基法など)を、知っていること。

4,組織浸透

管轄している組織(例えば部長なら部)全体に、ライフを軽視せず積極的に時間を割くことを推奨し広めていること。

5,配慮

家族を伴う転勤や単身赴任など、部下のライフに「大きく」影響を及ぼす人事については、最大限の配慮をしていること。

6,業務

育休取得者などが出ても、組織内の業務が滞りなく進むために、組織内の情報共有作り、チームワークの醸成、モバイルやクラウド化など、可能な手段を講じていること。

7,時間捻出

部下がライフの時間を取りやすいよう、会議の削減、書類の削減、意思決定の迅速化、裁量型体制などを進めていること。

8,提言

ボスからみた上司や人事部などに対し、部下のライフを重視した経営をするよう、提言していること。

9,有言実行

イクボスのいる組織や企業は、業績も向上するということを実証し、社会に広める努力をしていること。

10,隗より始めよ

ボス自ら、ワークライフバランスを重視し、人生を楽しんでいること。

引用:イクボスプロジェクト公式サイト

イクボスによる効果とメリット

イクボスに取り組むと、部下が安心して働くことができる以外にも、次のようなメリットがあります。

  1. 結婚、子育て、介護などライフイベントが起きても仕事と家庭を両立しやすくなる
  2. 私生活と仕事をともに楽しめることで従業員エンゲージメントがあがる
  3. 働く環境への満足度があがり、仕事の集中力アップや生産性向上が期待できる
  4. イクボスへの取り組みを採用広報、採用ブランディングに活かして母集団形成につなげる など

イクボス施策を始めたてのときは、社内理解に労力がかかるのは事実ですが、イクボスが浸透しはじめれば従業員の満足度があがり、業績向上や離職防止に役立ちます。

社内でイクボスを推進させるためにすべきこと

社内でイクボスを推進させるためには、まずは社内課題を言語化し、イクボスに取り組む目的を明確に決めるのが大切です。何も目的を決めずに、いきなりイクボス宣言をしようと言っても、従業員は日常業務で忙しく興味を持ってくれない可能性があるためです。

働く環境課題の可視化(労働時間、残業時間、休日出勤の有無などの確認)や、育児や介護中の従業員へのヒアリングを行ったうえで、「なぜイクボス宣言を行うのか」を定めましょう。イクボス推進の担当者を決めるのもおすすめです。

他社のイクボス宣言例

イクボス宣言やイクボス企業同盟には、民間企業だけでなく都道府県や市区町村なども参加しています。他社のイクボス宣言、イクボス企業同盟の発表を見てみましょう。

マックスバリュ西日本株式会社のイクボス企業同盟

「当社は、ジェンダー・年齢・国籍・障がい等に関わらず、全従業員がやりがいを持ち、活き活きと働き続けられる会社を目指しています。そのためには、全従業員がダイバーシティを正しく理解し、意識・行動を変える必要があります。一人ひとりの意識改革を図り、ワークライフバランスを重視した働き方改革を実践し、多様な人材の個性を認め合い、風通しの良い組織風土づくりを推進してまいります。」

参考:マックスバリュ西日本株式会社

小値賀町議会のイクボス宣言

「共に活動する人たちの私生活を配慮し、お互いのキャリ アを応援することにより、働きやすく、地域活動もしや すい小値賀町の風土を醸成します。 自らも率先して仕事や活動を充実させるとともに、家庭 や地域で積極的な役割を果たし、自身の生き方を楽しみ ます。 地域社会に「イクボス」の取り組みを浸透させ、また「イ クボス」の仲間を増やすことで、誇れるまち小値賀を実 現します。 上記の活動を通して、組織や地域で次世代や未来を育て る「イクボス」を応援します。」

参考:小値賀町議会

アンケートからみる雇用のミスマッチ防止策

長時間労働削減施策の取組アンケートの結果からみえた長時間労働による雇用ミスマッチ防止策をお伝え致します!

長時間労働削減の取り組みとして実施した施策と効果が見えた施策のアンケート結果はというと・・・

長時間労働削減の取り組みとして貴社が行っている(行った)取り組み

1)経営層から社内に向けて長時間労働是正へのメッセージを発信している
2)時間管理:各人の労働時間を集計し、役員会に報告
2)新任管理職に対し労働時間管理を含む研修を行っている
2)有給休暇取得の進捗等を管理する仕組み
5)ノー残業デー(一律:例>全社毎週水曜日)

長時間労働削減の取り組みのうち貴社で効果が高かったと思うもの

1)ノー残業デー(一律:例>全社毎週水曜日)
2)時間管理:各人の労働時間を集計し、役員会に報告。
3)経営層から社内に向けて長時間労働是正へのメッセージを発信している
4)PCログ管理(タイムカードとPCログオフ時間かい離の把握)
5)有給休暇の計画取得の徹底

(※出展:NPO法人ファザーリング・ジャパン)

取り組みとして実施した施策としては、「経営層からのメッセージ」が第一位。

逆に、効果が高かった施策の第一位は『ノー残業デー』。第四位には『PCログ管理』と、社内制度化をした施策が効果が高かったという結果になりました。

組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができるという二つを両立させるためには越えるべき点がいくつもあるかと思いますが、社内制度として、従業員に統一した施策を実施することも重要なのかもしれませんね。

仕事の成果とそれに要する時間、永遠の課題であると感じながらも両立するための努力が組織としても個人としても重要であると感じます。

まとめ

イクボス宣言は、育児、私生活と仕事の両立を大切にしながら、働きやすい労働環境をつくっていく後押しとなります。離職防止や採用広報の一環として、ぜひイクボスに取り組んでみましょう。

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