セルフキャリアドックとは?導入するメリットや助成金について紹介

セルフキャリアドック

自律型人材の育成が重要視されている昨今、セルフキャリアドックという制度が注目されています。セルフキャリアドックは日本の人材力を高めるために有効とされており、導入する企業が増えている制度です。

そこで今回はこの制度をテーマに、必要とされている背景や導入するメリット、受給できる助成金などについて紹介してきます。

セルフキャリアドックについて知識を深めたい、セルフキャリアドックの導入を検討しているという方は、ぜひ参考にしてください。

セルフキャリアドックとは?

セルフキャリアドックとは

セルフキャリアドックとは、2015年に技術や人材の「未来投資による生産性革命の実現」と「ローカル・アベノミクスの推進」を目標とした「日本再興戦略改訂2015」で提言されました。

ここで提言されたセルフキャリアドックは、従業員が定期的に自分の職務能力を確認し、将来のキャリアのために必要な知識やスキルについて自主的に考える機会のことです。

これまでの人材育成といえば企業のために教育するものが主流でしたが、経済環境の変化に対応するためには、働き手が自分のキャリアについて自主的に考えることが重要と考えられ、セルフキャリアドックの導入を進める提言がされました。

セルフキャリアドックの「ドック」は、人間ドックの「ドック」と同様の意味を持っています。

健康診断を定期的に受けるように、人材も定期的なキャリア面談を受けて自らのキャリア形成について自主的に振り返り、将来について考えられるようにする環境を企業が整備することが求められています。

セルフキャリアドックが必要とされている背景

セルフキャリアドックが必要とされている理由について、以下のような社会的背景が挙げられます。それぞれ詳しく解説していきましょう。

労働人口の減少

セルフキャリアドックが必要とされている背景の一つに「労働人口の減少」があります。

昨今の日本では、高齢者の数が増え若年人口が減少する「少子高齢化」が進んでおり、それに伴って労働人口の減少にも歯止めがかからない状況となっています。

そうした状況の中で、企業による人材の確保が難しくなっており、一人の人材を育成し長く働いてもらうことが重要視されているのです。

企業がセルフキャリアドック制度を導入すれば、従業員が成長し長く企業に在籍してもらえるでしょう。

定年退職する年齢の引き上げ

「定年退職する年齢の引き上げ」も、セルフキャリアドックが必要とされている背景の一つです。

以前は60歳で定年退職となっていましたが、高年齢者雇用安定法により65歳までの雇用確保が決定されました。高齢化の影響で60歳以上の人口が増えたことと、定年退職する年齢が引き上げられたことが相まって、高齢層のキャリア支援が必要になっているのです。

厚生労働省による職業能力開発促進法の改正

また、厚生労働省による「職業能力開発促進法」の改正・施行も挙げられます。

この法案は、従業員には自身の能力開発とキャリアプランについて自主的に考えるよう促し、企業には従業員のキャリアアップについて相談を受け助言や指導を行う機会の確保と能力開発の支援を行うことを求めたものです。

セルフキャリアドックを導入するメリット

セルフキャリアドックを導入すると、どのような効果やメリットがあるのでしょうか。

従業員のモチベーションアップ

セルフキャリアドックを導入することで、従業員のモチベーションアップに繋がることが期待できます。

セルフキャリアドック制度では、定期的に従業員のキャリアについて向き合いスキルアップ支援を行うため、従業員は「自分の将来について向き合ってもらえている」と自信になり仕事に対する意欲やモチベーションアップに繋がるでしょう。

人材が定着しやすくなる

前述したように、従業員に対してキャリアコンサルティングの機会を設け指導を行うことは、従業員のモチベーションアップや自信につながります。

従業員のモチベーションアップや自信が生まれると「この会社は自分のことをきちんと支援してくれる」と企業への帰属意識が生まれるため、人材が定着しやすくなるのです。労働人口が減っている昨今、人材の定着率の向上は、企業にとって大きなメリットとなるでしょう。

企業の成長に繋がる

「企業の成長に繋がる」こともメリットの一つです。セルフキャリアドックの導入によりキャリアコンサルティングなどを実施することは能力開発やスキルアップに繋がります。

また、前述したような従業員のモチベーションアップ、帰属意識などメンタル面での変化も相まって、企業自体の成長に繋がることが期待できるでしょう。

セルフキャリアドックを導入する流れ

セルフキャリアドック 流れ

ここでは、セルフキャリアドックを導入する流れや手順について解説していきましょう。

制度の実施計画書作成・提出

まずは、キャリアコンサルティングをどのように実施するのかや、対象者などを明記した計画書を作成しましょう。計画書の作成が完了次第、主たる事業所管轄の労働局へ提出し、労働局長によって認可された後、労働協約や就業規則に定めましょう。

人材育成方針の明確化・従業員への提示

次に、企業や従業員が抱える課題を把握し、その課題を解決するために、企業が期待する従業員像を明らかにします。企業が期待する従業員像が明確になれば、それを従業員に提示し、理解してもらう必要があります。

制度に関する説明会の実施

次に、従業員に向けて説明会を開き、セルフキャリアドックに関する理解と知識を深めてもらいましょう。

説明会の主な内容としては、制度の趣旨や目的、研修、スケジュール、相談内容などです。この時点では、制度に懐疑的な意見を持つ従業員も一定数いるかもしれませんが、信念を持ってきちんと説明しましょう。

必要なツールや社内インフラの整備

次に、キャリアコンサルティングで使用するアンケートや報告書など必要なツールを用意しましょう。また、責任者の決定や国家資格を持つキャリコンサルタントの確保などの整備が必要です。

キャリアコンサルティング

次に、キャリアコンサルタントによる面談を行います。社内にキャリアコンサルタントが在籍していない場合は、社外のコンサルタントに依頼しましょう。

面談では、従業員の今後の目標や自身の課題について相談を受け、一人ひとりに寄り添った内容でキャリアアップを支援していきます。

フォローアップ

面談後は、キャリアコンサルタントから報告された内容をもとに、従業員のキャリア意識の傾向や見えてきた組織的な課題をまとめましょう。まとめた内容を今後の人事施策や、従業員のさらなるフォローアップ体制の整備に役立てることが重要です。

従業員へのフォローアップには、定期的にフォローアップ面談を行うことも有効です。

フォローアップ面談の重要性や進め方、面談時に注意すべき点を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

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助成金受け取りの対象となる人材育成制度

セルフキャリアドックの導入にあたり、キャリアコンサルティングを定期的に実施した場合、国から補助金が受け取れます。

セルフキャリアドックの導入で受給できる助成金の種類は「人材開発支援助成金(キャリア形成支援制度導入コース)」です。職歴や資格などが書かれているジョブ・カードを使用した定期的なキャリアコンサルティングを行うことが補助金の対象となります。

助成対象者

助成の対象となるのは、正社員に限ります。契約社員・派遣社員やパート・アルバイトは助成の対象外です。

助成額

助成額は47.5万円です。ただし、生産性要件を満たす場合には、助成額が60万円となります。

生産性要件

助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、「その3年度前に比べて6%以上伸びていること」または「その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること」が生産性要件です。これらを満たしていれば、助成金を増額することができます。

セルフキャリアドックの導入事例

ここでは、実際にセルフキャリアドックを導入した会社をいくつか紹介し、導入した理由やどのような成果が出ているのかなどをみていきましょう。

日清紡テキスタイル株式会社

日清紡テキスタイル株式会社

大阪にある繊維製造業の日清紡テキスタイル株式会社は、目まぐるしく変化する環境の中で自律的に行動する従業員が必要なため、セルフキャリアドックを導入しました。

若手社員を対象にキャリア面談を実施したところ、「自分のやるべきことが明確化された」「面談で悩みや課題と向き合うことができた」などといった従業員の声を聞くことができたそうです。

セルフキャリアドック導入によって、自身の課題と今後やるべきことが明確化できた良い事例といえるでしょう。

株式会社インテージ

株式会社インテージ

東京都にある情報サービス業の株式会社インテージは、従業員のモチベーションアップ、自律的キャリア形成、社員の退職予防を目的に、セルフキャリアドックを導入したそうです。

キャリア面談を実施した従業員は「漠然と考えていたことが具体的になった」「仕事への思いや価値観などが整理できた」など、面談に対する満足度は100%と高く評価していたとのことです。

株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン

株式会社エスクロー・エージェント・ジャパン

東京都にあるサービス業の株式会社エスクロー・エージェント・ジャパンは、従業員の自己肯定感の向上を期待して、セルフキャリアドックの導入を決意したそうです。

キャリア面談の実施後、従業員からは「自己理解ができたことで今後のやるべきことが明確化された」などの声が上がったことで課題が可視化され、具体的な施策の構築に活用できたといいます。

水ing株式会社

水ing株式会社

東京都にある建設業の水ing株式会社は、ミドル層を対象としたキャリア開発支援を目的にセルフキャリアドックを導入。「これまでを見直す良い機会となった」という声もあり、従業員のモチベーションアップに繋がったといいます。

また、ミドル層が共通して抱えていた課題が発覚し、解決に向けて組織の活性化や強化をさらに進めていくとのことです。

株式会社パスコ

株式会社パスコ

東京都にあるその他サービス業の株式会社パスコは、メンタル不調者の増加、若手社員・中途社員の定着率低下を受けて、セルフキャリアドックの導入を決意しました。

「自身のキャリアについて相談でき理解してもらえたことに満足した」といった従業員の声が上がり、「これからのキャリアを考えることは会社全体の運営に関わること」であるという理解が深まったそうです。

まとめ

セルフキャリアドックは国を挙げて制度の導入が進んでおり、今後もさらに重要度が上がると予想されます。

制度の導入には、従業員のモチベーションアップや定着化、それに伴い期待される会社の成長など、従業員・会社それぞれにとってたくさんのメリットがあります。

この機会にぜひ、セルフキャリアドックの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

また、従業員のモチベーションをアップさせるには、「人材管理」を効果的に行うことが大切です。

以下の記事では、人材管理をすることのメリットや具体的な人材管理の方法、おすすめの人材管理システムを紹介しているので、参考にしてください。

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