IT業界において注目を集めるエバンジェリストは、企業にとって重要な役割を担います。このエバンジェリストにはどのようなスキルが求められるのでしょう。
この記事では、エバンジェリストとは何かをはじめ、その役割について詳しく解説します。
そのほか、エバンジェリストをビジネスにおいて企業が活用するメリットや人材育成のポイントなども紹介するので、企業の人事に携わる方必見です。
エバンジェリストとは？言葉の意味と語源を解説
エバンジェリストとは、IT業界における専門職であり、ITの技術や最新情報をわかりやすく伝え啓発を図る役割を担います。
もともとは、キリスト教の伝道師・伝道者（evangelist）を意味する言葉です。エバンジェリストが専門職種として認知され始めたのは1984年頃とされています。
当時Apple社が個人用のパソコン普及を広めるため「テクニカルエバンジェリスト」という役職を設けたことが始まりです。
なぜ今エバンジェリストが求められているのか
2000年頃から多くの企業で導入され始めたエバンジェリストが、なぜ今も求められているのか解説していきます。
DX時代の情報伝達者としての価値
企業でDXを推進するためには、IT技術を効果的に活用し、かつユーザーに伝えるスキルや知識を持つ人材が必要です。
AIやIoTなど、最先端の技術を理解してビジネスに活かす能力が求められるため、自社のサービスや製品の魅力を的確に伝えられるエバンジェリストは重要な存在といえます。
情報過多の中で“整理して伝える力”が重要
情報過多の現代において、企業は発信する情報に価値を持たせる必要があります。そのためには、集めた情報を整理して伝えたいことを明確にする力が重要です。
IT業界において、新技術や製品の魅力を相手が理解できるように伝えられるエバンジェリストの存在は、企業の成長や新しいビジネスの機会を生み出すことに繋がります。
社内文化や理念の浸透にも貢献
エバンジェリストは、自社の社内文化や理念を理解し、製品やサービスについても精通しています。彼らが自身の言葉で語ることで、企業価値を社内外に伝えやすくなります。
また、例えばDX推進のための新しい方針についても従業員から共感を得やすく、組織全体への浸透を促進するでしょう。
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どんな仕事？エバンジェリストの役割とミッション
IT業界において重要な役割を担うエバンジェリスト。ここでは、エバンジェリストの役割とミッションについて解説します。
“価値をわかりやすく伝える”専門職
エバンジェリストは、ITに関する知識や最新情報、自社製品や技術をわかりやすく説明して、ユーザーへの理解を促すことを役割とします。
どんなに素晴らしい最新のテクノロジーを企業が用いたとしても、ユーザーが理解できていないと正しく扱うことができません。
社外だけでなく、社内に向けた発信も
エバンジェリストの伝える力は、利用するユーザーなど社外への発信が重要ですが、自社の従業員に対しての発信も大切です。
自社製品の特徴や価値を従業員へわかりやすく伝えることで、組織全体の知識レベルの底上げに繋がります。
企業とユーザーの“共感の橋渡し役”
エバンジェリストは、企業とユーザーの「共感の橋渡し役」も担います。ただ資料を読み上げて説明するだけでは、ユーザーに自社の魅力は伝えられません。
いかにユーザーからの共感をもらい、強い印象を与えられるかが重要です。
また、ユーザーからの反応を自社に還元し、製品やサービスの改善、コンセプト立案へと繋げることも大切な役割です。
エバンジェリストの主な仕事内容とは？
ここでは、エバンジェリストの主な仕事内容について解説していきます。
イベント・セミナーでの登壇
IT関連のセミナーやユーザー向けのイベントへの登壇は、エバンジェリストの仕事内容の中でも重要な役割の一つです。
不特定多数の人々に向けて自社製品やサービスの魅力、それらを生み出すまでの経緯などを発信します。
ブログやSNSでの情報発信
ブログやSNSでの情報発信もエバンジェリストの大きな役目の一つです。今やSNSは情報発信において必要不可欠なツールです。
利用者が多く、多様な層に情報が届く可能性の高いSNSは、イベントやセミナーとは異なる層へのアプローチに繋がります。
SNSを通じて自社の情報を発信すれば、より多くの人の目に留まり、ブランドイメージの向上に繋がる可能性もあるでしょう。
インナーブランディングとしての活動
エバンジェリストは、インナーブランディングも行います。自社製品やサービスの強みや優れている部分を社内に浸透させることで、社員たちのスキルアップやモチベーション向上へと繋げます。
また、消費者や社会全体からの視点を社員が認識することにより、新たな視点がもたらされ、業務クオリティの向上などのよい効果も期待できるでしょう。
営業やアンバサダーとの違いとは？
情報発信という部分だけでみると、エバンジェリストの役割は営業やアンバサダーなどと類似しています。ここでは、混同されやすい営業やアンバサダーとの違いについて解説します。
営業は“売る”、エバンジェリストは“伝える”
営業は自社製品やサービスに興味を示す見込み客に対して魅力を伝え、自社製品を売るのが仕事です。
対して、エバンジェリストは、不特定多数の相手に自社製品だけでなくライバル会社も含めた技術や知識を伝えます。
その中で、中立の立場で自社製品の利点を伝えることが仕事です。
アンバサダーとの違いは任期と関わり方
エバンジェリストとアンバサダーは、どちらも自社製品やブランドを宣伝する役割を担いますが、伝えるポイントや任期に違いがあります。
エバンジェリストは、IT技術の専門家として、中立の立場で自社製品の魅力や良さを伝えて普及させることに重きをおきます。
対して、ブランド全体のビジョンや価値を表現し、ブランドイメージや認知度向上に重点をおくのがアンバサダーです。
さらに、エバンジェリストは企業に属しますが、アンバサダーは社外の人の場合が多く、一定期間契約を交わして役割を担うことがほとんどです。
一般ユーザーから認知度の高い著名人などを起用し、自社製品のPRに繋げることもあるでしょう。
広報やマーケティングとの境界線も理解しよう
エバンジェリスト、広報、マーケティングは、いずれも企業ブランドの成長や向上に貢献します。エバンジェリストは、中立の立場でIT技術やトレンドをわかりやすく伝えたり啓蒙したりします。
広報は企業評判や知名度の向上、マーケティングは販売向上のためなど、それぞれが請け負う役割の境界線も理解しておきましょう。
エバンジェリストに求められるスキルとは？
ここでは、エバンジェリストに求められるスキルについて解説していきます。
プレゼンテーション・発信スキル
セミナーやイベントでの登壇が多いエバンジェリストは、高度なプレゼンテーション能力が必須であり、最も重要といえます。
不特定多数の人を対象とするため、聞き手に合わせて専門的な情報をわかりやすく調整しながら伝える能力が求められます。
専門知識と社内外の理解力
エバンジェリストにとって、ITに関する専門知識が必要不可欠なのはいうまでもありません。これに加え、社内外への深い理解力も非常に重要な要素です。
社内の場合、インナーブランディングのほか、社員にユーザーの動向を伝え、業務の質向上や組織の成長に繋げる役割を担います。
そのため、組織文化や社風も理解しておく必要があるでしょう。
社外の場合、自社製品の魅力を伝えつつ、ユーザーニーズや市場の動向を把握する必要があります。情報発信して自社サービスのファンをつくるためには、社外の動向の把握も重要なのです。
共感を呼ぶストーリーテリング力
エバンジェリストには、伝える能力やプレゼンテーション力に加え、共感を呼ぶストーリーテリング力も重要です。
イベントやセミナーで聴衆を魅了して共感を得ることで、自社製品などの魅力や価値をより深く伝えられます。
企業がエバンジェリストを活用するメリット
ここでは、企業がエバンジェリストを活用するメリットについて解説していきます。
採用ブランディングの強化
企業がエバンジェリストを活用するメリットとして、採用ブランディングの強化が挙げられます。
多くの人の前でプレゼンテーションを行う機会があるエバンジェリストは、メディアに取り上げられることもあるでしょう。
それを見た転職者や新卒者に対し、先進的な取り組みを行う企業、夢のある企業と印象付けることに繋がり、採用にもいい影響を与えます。
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プロダクトやサービスの魅力を“ファン”視点で伝えられる
プロダクトやサービスの魅力をファンの視点で伝えられるのもエバンジェリストを企業で活用するメリットです。
ファン視点で伝えるということは、単純に技術的な情報を発信するだけでなく、自社サービスや開発にかける想いなどを深く理解してもらえるよう働きかけることでもあります。
それによってユーザーの共感を得やすくなり、親近感や信頼性の向上にも繋がるでしょう。
社員の主体性やロイヤリティ向上にも効果的
エバンジェリストを採用することで、社員の主体性やロイヤリティ向上にも効果が期待できます。
エバンジェリストがインナーブランディングを積極的に行うことで、社員の製品に対する理解度アップやブランドイメージの浸透に役立ちます。
自社の強みを理解すれば、社員一人ひとりが主体性を持ち、組織やブランドなどへの忠誠心を引き出すきっかけとなるでしょう。
育成・導入方法：人事が知っておきたい実践ポイント
エバンジェリストを育成・導入するための方法として、実践する際のポイントを解説します。
候補者選びは「発信力×共感力」がカギ
エバンジェリストの候補者選びは、発信力と共感力がポイントとなります。
自社の製品やサービスについて十分理解し、その魅力を丁寧に正しく伝える発信力、ユーザーのニーズや課題を理解しようとする共感力が重要です。
こういった能力を持つ社員の見極めが肝心といえます。
育成には“場づくり”と“評価の仕組み”が必要
エバンジェリストの育成には、専門性の高い育成プログラムを導入したりトレーニングを行ったりと、長期的な目線で育成の場を設けることが必要です。
また、評価の仕組みを整えておくことも大切です。営業やマーケターとの立ち位置を区別しつつ、実践の場を与えながら活動内容を評価していく体制を用意しましょう。
社内制度として明文化するメリット
エバンジェリストを社内制度として明文化することで、社員のITリテラシー向上が見込めます。
また、自社サービスや企業文化を一人ひとりに浸透させ、組織全体を成長させる可能性を高められるでしょう。
実際に活躍しているエバンジェリストの事例紹介
最後に、エバンジェリストを実際に活用している企業の実例を紹介していきます。
日本マイクロソフト：西脇資哲氏
日本において代表的なエバンジェリストとして、日本マイクロソフトの西脇資哲氏が挙げられます。2009年に日本マイクロソフト社に入社し、全てのマイクロソフト製品を扱うエバンジェリストとして活動中です。
IT業界屈指のセミナー・プレゼン講師でありながら、ラジオ番組のパーソナリティーとしても活躍し、多くの層にITのトレンド情報を届けています。
富士通・サイボウズなどの導入企業
富士通に在籍するシニアエバンジェリストの松本国一氏は、IT全般や働き方改革分野のエキスパートとして知られています。
年間250回以上もの講演を全国各地で行い情報発信を行うほか、コンサルティングやメディア出演、教育活動など、多分野で活躍中です。
サイボウズでは、社外の一般の方がエバンジェリストとして活動する「kintoneエバンジェリスト」制度を採用しています。
kintoneについて、SNSやブログでの情報発信、イベントの企画や登壇など、活動内容はさまざまです。2014年に発足して依頼、これまでに30名以上がkintoneのエバンジェリストとして活動しています。
まとめ
エバンジェリストとは、IT業界において高度かつ複雑な技術に加え、最新情報などを社内外へ、わかりやすく伝える役割を果たす人材です。
自社製品やサービスの魅力をアピールするだけでなく、企業イメージの向上なども担います。さまざまな観点からエバンジェリストの存在は、企業成長に欠かせないキーパーソンとなります。
企業成長の期待もできるため、エバンジェリストの育成・導入を検討してみてはいかがでしょうか。
IT人材は、その技術やスキルをもって企業のIT化を担う存在であり、多くの企業が優秀な人材の確保を目指しています。 そこで今回は、IT人材の採用状況をはじめ、採用するメリットや優秀なIT人材を確保するポイントをお伝えしていきます。IT人[…]
