今年1月、「日本新聞協会」が発表した2020年の新聞発行部数は約3509万部でした。2010年の発行部数は約4932万部ですので、10年間で約29%も激減しています。紙媒体の代表格である新聞は、電子媒体に押されて窮地に陥っていると言わざるを得ません。
一方で同じ紙媒体の採用パンフレットは、官公庁だけでなく一般企業も含めて減っている気配を感じません。なぜでしょうか?
そこでこの記事では「採用パンフレットの目的やその効果・作成時の注意点」を解説します。
採用パンフレットとは
はじめに、採用パンフレットと会社案内が似て非なるものだということを説明します。
会社案内は営業目的で作成され、渡す相手は営業相手になります。一方で採用パンフレットを渡す相手は就活生(求職者)です。採用パンフレットには、会社概要や沿革、事業内容など会社案内と同様の記載もしますが、目的は会社の魅力を伝え、入社の意欲を向上させるためのであり、採用ツールのうちの1つという位置づけになります。
採用パンフレットを作成する目的
インターネットが発達した現在、企業のホームページに採用情報を掲載すれば、紙媒体の採用パンフレットは不要と考えがちです。しかしながら、未だ多くの企業で採用パンフレットを制作している目的は大きく3つあります。
電子よりも内容を記憶できる
そもそも、「採用パンフレットは何のために使うの?どうして必要なの?」そう思っている企業さまもいらっしゃるでしょうか。
確かに、現代はスマホなどで欲しい情報は手に入れられることから、そんなに必要性を感じないこともあるかもしれません。しかし、ノルウェイのスタヴァンゲル大学の研究者、アン・マンゲン(Anne Mangen)氏の新しい研究によって、電子で読むよりも紙媒体で文章を読んだ方が内容をよく記憶できるということがわかっています。学生の記憶に残る情報を伝えたいなら、電子よりも紙なのです。
採用ホームページと採用パンフレットは役割が違う
例えば、ある企業は採用情報をホームページのみに掲載していたとします。しかしながら、該当企業の存在自体を知らなければ、就活生はインターネットで調べることができません。従って、このようなケースの場合を考慮して紙媒体の採用パンフレットを用意しているということです。
つまり、主体的に企業を見つけ出すことができる人には採用ホームページを閲覧して貰い、自分で探せない人には受動的に採用パンフレットを提供するというように2つのコンテンツを使い分けている訳です。
企業の魅力を伝える
採用パンフレットは就活生に特化したコンテンツです。このため、企業の魅力を余すことなく語っていなくてはなりません。企業によっては該当パンフレットが100ページ以上になるケースもあり、各社で独自のコンテンツを競う様相を見せています。
最近はパンフレット内にバーコードが貼ってあり、スマホで読み込むことで企業の動画が再生するような例もあります。
採用パンプレットの役割
では、採用パンフレットには、どんな役割や目的があるのでしょうか。採用パンフレットの役割は以下の2つです。
ファンを増やす
就活イベントや合同説明会等で採用パンフレットを配ることは、自社を多くの就活生に知って貰うことも1つの役割ですが、更に一歩進んで興味を持った支持者になって貰うことです。「支持者=ファン」を増やすことで、クチコミ等によって他の就活生にも自社を知って貰えることになります。
疑問に答える
就活生にとって就職活動は一大イベントです。ましてや多くの企業の中から1社に決めるのは至難の業に他なりません。採用パンフレットは就活生の不安や疑問に対する答えが掲載されている必要があります。
採用パンフレットの効果
次に採用パンフレットの効果は以下の3つです。
企業の定着率向上に繋がる
採用パンフレットが手元にあるということはいつでも手にして読むことが出来るため、就活生はパンフレットを読み込んで行く中で企業を熟知することになります。この結果、企業と就活生のミスマッチを防ぐことができ、就いては企業の定着率向上に繋がります。
不安解消+志望意欲の向上効果
採用パンフレットでよく見る先輩社員からのメッセージや、入社後のライフスタイルの記事は、期待感と不安の中でがんばっている就活生にとって大きな不安を取り除く効果があると言えます。
なぜなら、これから新しい環境に行く中で「楽しそうな就職後」「明るい社内の雰囲気」「成長できる環境」などはマイナス面が少なく、ポジティブな気持ちになれる為「この会社なら頑張れるかも」と期待感が不安感を上回るからです。そんなパンフレットを作成することができれば必然的に安心感を与え、入社意欲を高めることも期待できます。
宣伝効果が期待できる
就活イベントで特定企業の採用パンフレットを多くの就活生が持ち歩いていたとします。もしあなたが就活生であったとしたら、その特定企業が気になりませんか?まさに採用パンフレットが宣伝効果を発揮している場面となります。
- 「この会社、なんていう会社だろう?」
- 「人気なのかな?面白いのかな?」
となってくれると、作成をした甲斐がありますよね!一方でパンフレットを受け取って貰わないと宣伝効果が得られませんので、多くの就活生に受け取って貰う工夫が必要不可欠です。
採用パンフレットに記載すべき内容は?
採用パンフレットの目的・役割と効果をお伝えしてきましたが、実際に作成するとなったら、どんな内容を記載するのがよいのでしょうか?採用パンフレットに記載する主な内容は、以下の3つです。
福利厚生・給与体系
就活生にとって最も知りたい情報のひとつです。福利厚生は企業の独自カラーが出るところですので他社に勝る点があれば比較して自社の良いところをアピールしましょう。
また、個人の時間を重視する20代に向けてプライベートで使える福利厚生施設があれば積極的に情報提供すべきです。なお、給与体系は複数ケースのモデル賃金を記載してどんな仕組みで給与が決定するのかを分かり易く説明しましょう。
就活生へのメッセージ
各年代の社員から就活生に対するメッセージを貰ってパンフレットに掲載します。
それぞれの世代や性別で価値観の違いはありますが、同じ企業内で働く仲間達を知って貰うチャンスです。就活生にとっては入社後の人間関係を垣間見ることができて興味深い記事となります。
活躍する若手社員のインタビュー
就活生にとって若手社員のインタビューは、未来の自分と重ねやすいです。若手社員のインタビュー記事から、会社の満足度や仕事のやりがい・同僚や先輩との人間関係を読み取ろうとする就活生は多いです。
従ってインタビュアが聞く質問は、若手社員がポジティブに語れる事に限定することが肝要です。
採用パンフレット制作スケジュールを逆算する
さて、採用活動において採用パンフレットがどれだけ大事な意味をもつか分かったとこで、続いては「採用パンフレット制作スケジュール」についてです。人事の皆さんは、毎年どういったスケジュールの中で作成していますか?リリース日から逆算して考えてみましょう。
9月 業者選定・内容ヒアリング
この時期は複数業者に相見積もりを提示して貰います。業者の決定には製作費だけで無く、実績や評判等も考慮しましょう。できれば同じ業界でパンフレットの制作実績がある業者だと誌面の勘所を心得ているので安心です。
業者選定の後、パンフレットの方針や骨子を業者に伝えます。
自社の魅力は身内が一番熟知しているはず。社内の主要メンバーを集めてディスカッションすると、今まで見えてこなかったものも発見できるのでおすすめです。
11月 インタビュー対象者の人選・制作取材
ヒアリング結果をもとに、インタビューや現場撮影等を行います。業者からは絵コンテやシナリオ等で人物像や撮影設定が事前に送らせて来ますので、最適な人物や撮影場所を選定しましょう。
取材が完了すると1週間程度でドラフト版が上がって来ます。内容を確認して気になるところがあれば小さな事でも指摘や修正を指示してください。
2月 原稿修正・パンフレット納品
初校のパンフレットが届きますので社内で確認します。修正できるタイミングはこの時までです。パンフレットに誤字脱字があると企業イメージが低下するので業者任せにせずにしっかりとチェックしましょう。万一、コンテンツを新規に追加したい場合は別途、追加料金が発生しますので注意が必要です。
採用パンフレット制作費用の相場
採用パンフレットの費用相場は、制作するパンフレットの大きさ・ページ数・どんな内容にするかで異なってきます。低予算で作成してくれる会社であれば約10万(A4サイズ4Pフルカラー100部)、だいたいの相場としては約40~50万円くらいではないでしょうか。
まとめ
採用パンフレットの目的からその効果、そして作成時の注意点までを説明して来ましたが、作成のイメージはつきましたか?採用パンフレットは、就活生にとって身近に企業を知るためのバイブルです。大事なのは、誰(どの時期の学生)に、どんな目的で制作をするのか。
- イベントで配る?
- 志望動機促進?
- 認知度をあげる?
そういった目的を把握したうえで、十分に余裕をもった作成期間を組むことです!
従ってパンフレットの内容は、自社の魅力を伝えると共に就活生に寄り添って不安や疑問を解決することも伝える必要があります。企業ブランディングを築くためにも、今年も採用パンフレットは抜かりなく作業していきましょう!