今までは、新卒採用においては一度にある程度まとまった人数を採用する「一括採用」が主流でしたが、近年では通年採用を導入している企業も増えつつあります。
具体的に通年採用は、一括採用とはどんな点が違うのかも気になりますよね。そんな、通年採用の基本的な知識と共に、メリットやデメリットなどを詳しくお届けします。
通年採用とは?
通年採用とは、 年間を通じて採用活動を行うこと です。
日本では3月学校を卒業して4月から社会人となる流れが一般的ですが、世界的にはとても稀で、欧米諸国の企業では大半が通年採用を起用しています。
長きにわたり新卒学生の一括採用を行ってきた日本ですが、1990年代半ば頃から留学生や帰国子女の秋採用を行いだしたことを皮切に、徐々に第二新卒や中途採用を含めた通年採用を導入する企業が増えていきました。
現在では採用人材が集まらなかった場合や、内定辞退者が出たときの補完として通年採用が取り入れられるようにもなってきており、人材不足で超売り手市場となっているため、時期を問わず柔軟な採用活動を行うことが採用成功のカギとなってきそうです。
日本ではまだまだなじみがない採用方法ですが、海外では一般的です。
通年採用が拡大する背景
通年採用が注目され始めた背景には
- 人材不足による新卒採用需要の高まり
- インターンによる選考開始時期の早期化
- 不可逆的な新卒者人数の減少トレンド
などが考えられます。
従来、日本での採用活動は、3~4月頃に新卒を採用する、新卒採用が主流でしたが、就職活動の短期化により、なかなか思うような人材確保ができなくなってきました。
また、留学をする学生や帰国子女といった、グローバル化が進み、採用時期が限定されることで、優秀な人材を逃がしてしまう事態も発生しています。
そこで、注目されているのが、通年採用!
1年を通していつでも求人を募集することで、求人者求職者とのタイミングが合いやすくなり、企業が欲している人材を効率的に確保しやすくなったことで、徐々に導入企業が増えつつあります。
経団連と大学が、新卒の就職活動を通年採用に移行するという意見で合意していることも、注目を浴びている理由のひとつと言えるでしょう。
一括採用と通年採用の違いは?
一括採用は、企業がある限定された期間中に、新卒の学生を採用する方法です。一度に集中して採用することで、教育のコストや時間が削減できます。卒業予定の学生に採用試験を行い、卒業後すぐに入社させる流れが一般的で、日本独自の採用方法と言っても過言ではないでしょう。
一方で、通年採用は、企業側が特定の期間を定めずに1年を通して自由に求人募集します。一括採用とは違って、新卒や既卒などは関係なく、募集を募るのも特徴のひとつです。
通年採用のメリット
通年採用の概要がわかったところで、続いてはどんなメリットがあるのかをチェックしておきましょう。
企業側のメリット
企業側にとってのメリットは、一括採用のように限定された期間中に採用活動をする必要がないため、多様な人材からの応募が期待できます。
また、時間が限られていないことから、じっくりと優秀な人材を見極めることができるのもメリットです。急いで人材確保をしなくても済むため、企業側と学生との間で、ミスマッチが発生しにくくなります。
さらに、一括採用を行ったのち、内定者が辞退してしまうと急な人材不足に陥るケースも少なくありません。通年採用であれば、欠員がでた際にも、すぐに新な募集活動を行うことで人材不足からの脱却を図ることが可能です。
学生側のメリット
留学をしていたりインターンをしている学生でも、乗り遅れることなく就職活動が行えます。
限られた期間に集中して就職活動をする必要がないため、どの会社を選ぶかじっくり考えることができるのもメリットです。万が一、希望の企業に入社できなくても、通年採用であれば年間を通して就職活動ができるので、新たな企業を探すことができます。
通年採用のデメリット
通年採用には、メリットだけでなく、当然デメリットも存在しています。どんな点がデメリットなのかしっかり把握して、今後の採用活動の参考にしましょう。
企業側のデメリット
一括採用のように時期に左右されずに採用活動が行えるとはいえ、やはり一括採用が始まる3月頃に注力しないと、優秀な人材を逃してしまう可能性も大いにあります。また、いつでも求人を募集していることから、学生側から滑り止めとして見られてしまう場合があることも覚えておきましょう。
ほかにも、採用時期が幅広いため、募集活動や新人教育にかかるコストが一括採用よりも多くかかる傾向があります。また、採用担当者の業務的な負担が大きくなってしまうこともデメリットのひとつです。
学生側のデメリット
通年採用は、募集期間が決まっていないため、就職活動が長期化する場合もあります。企業側も慎重に人材を見極める傾向があるので、面接の回数が増える場合もあり、手間がかかってしまうのが学生にとってのデメリットです。
また、新卒の学生だけでなく、実務経験のある既卒者も応募する場合があり、採用のハードルがグッと高くなってしまうこともあります。
時期の概念がなくなることで変化すること
求人活動において時期の概念がなくなる通年採用では、入社時期にも縛りがなくなり、企業が必要とするときに必要な人材を取り込むことができるようになります。
また、入社時期が定まらないことから、内定式や入社式といったイベントもなくなっていくかもしれません。さらには、就職活動をいつでも始められるため、大学1年生などの比較的若い世代が早めにアクションを起こすことも多くなるはずです。
通年採用導入の手順
ここでは、通年採用を導入する際の、具体的な手順をご紹介しましょう。
1.採用条件を明確にする
2.体制を整える
3.広報活動開始
4.選考方法決定
5.教育プログラム立案
ご紹介した一連の流れを元に、しっかりと体制を整えたうえで、通年採用を導入するようにしましょう。
通年採用で成功させるために
通年採用は、企業によって開始時期がことなるため、タイミングが合わなければ学生たちから見落とされてしまう可能性があります。
より優秀な人材確保を目指すため、しっかりとした広報活動が重要なカギを握っていると言えるでしょう。自社の魅力を最大限アピールできるよう、ブランディングを強化したり、ターゲット像を明確にしたりしておく必要があります。
また、一括採用に比べてコストが多くかかる通年採用では、無駄な経費を使っていないか徹底的に見直すことも、採用活動を成功させるためのポイントです。
通年採用を導入すべき企業とそうでない企業の特徴
知名度の高い有名企業であれば、比較的学生の目につきやすいので、通年採用でも優秀な人材を確保しやすいと言われています。
なかでも、経営戦略と採用戦略が明確な企業であれば、より理想的な人材の確保がしやすくなるため、通年採用を導入したほうがよいでしょう。
一方で、自社の魅力やアピール方法が定まっていない企業は、通年採用をしても求人者からスルーされてしまう可能性が高いので、導入はいったん見送るべきです。自社の特徴や仕事内容をしっかりとアピールする体制を整えてから、通年採用を導入するのがおすすめです。
すでに通年採用を導入している10社を紹介
すでに多くの企業が通年採用を導入しています。大学1年生~応募可能、入社時期を選べる、経験やスキルによって給与が決まるなど、やる気のある人にとって挑戦しやすい環境が整っています。代表的な企業を10個ご紹介するので、チェックしてみてください。
株式会社ファーストリテイリング
大学1・2年生から応募可能です。不合格となった場合も、翌年再チャレンジすることができます。
ソフトバンク株式会社
「ユニバーサル採用」という名で通年採用を導入しています。NO.1採用・就労体験型のインターンシップなど様々なプログラムが用意されているのが特徴です。
楽天グループ株式会社
エンジニア向けに通年採用を導入しています。入社時期はそれぞれの都合に合わせて選ぶことができます。また、入社時の給与は経験や能力に応じて決定されます。
株式会社メルカリ
新卒・中途問わず通年採用を行っています。一般的な履歴書ではなく、得意分野についてアピールできる自由なフォーマットで応募できる点が特徴的です。
株式会社リクルートホールディングス
国内にある9社の採用を統合し、通年採用を導入しています。新卒30歳以下であれば応募可能です。
クックパッド株式会社
リサーチエンジニア、ソフトウェアエンジニア、デザイナーの3つの職種で通年採用を行っています。入社時期についても個別で設定できます。
ユニリーバ・ジャパン
大学1年生~既卒3年目までであれば新卒扱いで応募可能となっています。4月・10月のいずれかで入社時期を選べます。
株式会社ユーグレナ
30歳以下であれば誰でも応募できます。対象となる職種は、総合職と研究職です。4月あるいは10月に入社となります。
ネスレ日本株式会社
大学1年生から全職種対象で応募可能です。課題の提出やケーススタディなどでのエントリーも可能となっています。
チームラボ株式会社
卒業時期に関わらず、いつでも応募可能です。エンジニア、クリエイティブ、カタリストといった職種がありますが、職種を決めずにオープンポジション枠で応募することもできます。
海外に拠点を置いている企業はもちろん、日本の企業も通年採用を取り入れていますね。それぞれ特徴のある通年採用を導入しているので、参考にしてみてください。
まとめ
通年採用は、今後の採用活動の定番になっていくはずです。メリットやデメリットを十分に把握して、自社にとって必要な人材をうまく確保しましょう。
すでに通年採用を取り入れている企業を参考にして、自社にとって最適なやり方をみつけてみてください。
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