ピープルアナリティクスとは?メリットや活用ポイントを紹介

採用・育成の質を高めるピープルアナリティクスとは?

人材採用の際は、面接官や人事担当者の経験や勘も重要となります。しかし、個人の主観も入ってくるので、偏りが出てくる場合もあります。

そこで活用していきたいのが、データを用いて客観的かつ公平的に判断を行う、ピープルアナリティクスという取り組みです。今回は、どのようなものなのか、活用するとなぜよいのかなど、詳しく解説します。

ピープルアナリティクスとは

ピープルアナリティクスとは、組織や従業員のデータを収集分析し、組織づくりや従業員の採用・育成・モチベーション維持などの質を高める取り組みのことです。最新のテクノロジーを使用し、データの活用や分析によって、企業の利益向上につなげる目的のための手法です。

分析対象となるデータ例

そもそもどのようなデータを分析し活用するのか紹介します。

オフィスデータ

会社の設備がどのくらい利用されているかを分析するデータです。従業員のコミュニケーションや行動を間接的に把握できます。

デジタルデータ

社内のパソコンの利用状況や閲覧履歴、電子メールの送受信、通話履歴などを確認できるものがデジタルデータです。

人材データ

従業員に関係する全てのデータのことです。名前や年齢をはじめとした個人情報から、勤怠データや入社から現在までのデータが含まれています。ピープルアナリティクスにおける、基本的なデータです。

行動データ

会議の時間や席に座っている時間についてカレンダー機能を活用して測定する、従業員の行動を把握できるデータです。社用携帯の位置情報を利用して、外出先や外出時間の測定も可能です。

なぜ、今注目させるのか?

海外で注目され始めた「ピープルアナリティクス」は、マイクロソフトやGoogleなどの大企業をはじめ、近年では日本の大手企業にも浸透してきています。課題解決ができた事実が広まり、組織課題に悩む企業からの注目を集めているのです。

その理由は、社会構造の変化によるものです。性別や人種、環境などによって、さまざまな働き方が認められ、多様化してきました。従業員の育成や採用、労働力の向上などの人事戦略は、人事担当者の知識や経験だけでは限界があります。ビッグデータやAIといったテクノロジーを取り入れることで、納得性があり効率良く人材の管理・育成ができるのです。

ピープルアナリティクスの重要性

これまでは、人事担当者の勘や経験が重視され、それをもとにさまざまな意思の決定をしてきました。勘や経験が成功することもありますが、人事担当者の主観のみでは、従業員の採用や評価などの際に、偏りが出てしまう可能性があります。

企業内での評価や昇格など重要な決定の際に、納得を得られないこともあるでしょう。ピープルアナリティクスではデータ分析をし、客観的に判断ができます。意思決定の際に、公平性や透明性を保証する、重要な役割を果たすのです。

ピープルアナリティクスの導入メリット

ここでは導入メリットを企業側と従業員側に分けて紹介していきます。

企業側のメリット

まずは企業側のメリットについてです。

作業の効率化

データをもとに意思決定を行うピープルアナリティクスは、システムを一度作り上げてしまえば、作業を大幅に効率化することができます。会議の際に、個人の主観の判断では、他の従業員の納得を得ることは難しく、無駄な議論をする可能性があります。

ピープルアナリティクスは、データにもとづいているので根拠を立てて説明ができるのです。また、責任者が変わっても、データの共有ができるので、判断基準がブレないこともメリットです。

企業に合った人材の採用

ピープルアナリティクスの活用によって、自社の弱点や優れた点が一目でわかります。そのため、弱点を補い、優れた点を伸ばしてくれるような人材の採用ができます。また、面接やエントリーシートなど、選考の際に活用することで、よりマッチする人材の獲得が可能となるでしょう。

離職者を減らせる

ピープルアナリティクスはデータをもとにして、個人の感情や主観を入れることはなく、客観的で正確な意思決定ができるのです。そのため従業員が納得をして業務に取り組めるので、企業への不安感が減り、離職率が減少する傾向にあります。

従業員側のメリット

続いて、従業員側のメリットについてです。

意思決定への理解が深まる

ピープルアナリティクスはデータをもとにした根拠があるため、従業員としても納得・理解しやすいことが大きなメリットとなります。

これまでは、上司の経験や勘を頼りに意思決定しており、明確な根拠に欠けていることで、従業員が素直に納得することが難しいこともありました。ピープルアナリティクスを用いることで理由が明確になり、従業員側も納得をして、業務に取り組めるのです。

意思疎通がスムーズになる

退職や異動で上司が変わった場合でも、ピープルアナリティクスを活用することでスムーズに意思疎通をすることが可能です。

上司が変わる場合には、従業員の能力や特性などさまざまな面において、互いに知識がなく、一から関係性を築く必要がありました。ピープルアナリティクスを用いることで、必要な情報を視覚化でき、意思疎通がスムーズになります。また、判断基準も変わらないので、好みや人柄によって仕事がやりにくくなることもなくなるのです。

働きやすい職場環境になる

ピープルアナリティクスを行うと、課題や問題点を視覚化することが可能になります。アンケートを定期的に行い、データを収集分析し、問題点を常に解決するように会社全体で動くことで、従業員の満足度や幸福感を得られ、働きやすい職場にすることができます。

ピープルアナリティクスの活用ポイント

ピープルアナリティクスは、どのような場面で活用できるのでしょうか。

採用活動

どのような人物を採用するか、具体的な検討がしやすくなります。社内の弱点を補えるスキルを持っているか、即戦力になるかなど、採用に向けた人物像をより明確にすることができます。

配属先や教育

従業員の配属や教育にも活用が可能です。専門スキルや資格をもとに、性格適正検査のデータと組み合わせることで、配属先を決める参考になります。また、データをもとに、従業員の特徴に合わせた教育を行うこともできます。

従業員の退職を軽減

過去の退職者のデータを分析することにより、退職者の傾向を把握することができます。早めの対策ができるため、従業員の流出を防ぐことが可能です。また、従業員の能力を分析し、本来の力を発揮できる環境を提供することで、従業員の定着にもつながります。

従業員の評価

実際に勤務している従業員を分析し、人事評価に役立てられます。これまでは、上司の判断のみで行われていましたが、判断基準が曖昧なため、主観で判断されることも少なくありません。ピープルアナリティクスを用いることで、客観的なデータをもとに、評価基準を立てることができます。

実際に行う際の手順

それでは、実際にピープルアナリティクスを活用する手順を、具体的に解説しましょう。

1.課題の発見

まずはアンケートや面談を行い、解決するべき課題を設定します。ピープルアナリティクスを実行する前に、企業の課題を明確にしておくことが重要です。

2.収集データの決定し、データの収集

課題が明確化したので、そのためにはどんなデータが必要かを決めます。上記で説明した、分析対象となるデータを活用するとよいでしょう。データ収集の際には、土台を作成し必要なデータのみを集めます。

3.データの分析、仮説立て

必要なデータ収集ができたら、次は分析、仮説検証です。課題に対して、どのようなことを変えると解決に導けるのか、分析を行い、仮説を立てます。

4.施策実行

仮説から具体的な施策をたて、実行します。単に実行するだけでなく、ある程度の期間を決めて行うことがポイントです。一度だけ得られる結果には限りがあるため、視点を変え、数回に分けて施策を行うこともおすすめします。

5.検証・改善

行った施策は、必ず効果を検証しましょう。得られた効果は、一目でわかるように、客観的に数値にすることが重要です。

採用におけるピープルアナリティクス活用事例

ここでは実際にピープルアナリティクスを取り入れている企業を紹介します。

ソフトバンクグループ株式会社

2017年より新卒採用選考時に活用しています。人事担当者による手作業での業務をAIが代わりに行うことで、公平的な判断が行え、約75%もの工数削減に成功したのです。

コニカミノルタ株式会社

2018年に人事部内にピープルアナリティクス専任組織を設置しました。パフォーマンスデータや適性検査などの分析から、求めている従業員像を視覚化し、選考の際のスピード化・取りこぼしの低下を現実化させたのです。

株式会社リクルートマネジメントソリューションズ

2018年より新入社員の適性検査に活用しています。入社時のデータを、活躍している従業員のデータと比べ、活躍する予測を立てることに役立てています。

まとめ

第三者目線で判断し、効率的に作業ができるようになるのがピープルアナリティクスです。

個人情報を扱うことになるので、取り扱いには十分な注意が必要となりますが、企業にとって取り入れてみる価値のある施策と言えるでしょう。

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