障害者雇用とは?一般的な雇用の違いやメリット・デメリット

最近ではダイバーシティやSDGsなどが浸透し、企業においても平等な雇用環境が求められる時代へと変化しています。そのため、多くの企業では積極的に障害者雇用を行っており、多くのメリットや恩恵を受けている現状があります。

そこで今回は、障害者雇用をすることで得られるメリットや助成金など、企業が気になる部分を詳しく解説していきます。

障害者雇用とは

障害者雇用とは、その名の通り障害をもった人材を雇用することであり、具体的には以下のように定義づけられます。

一般的な雇用との違い

一般の人が企業へ就職する際、特に隔たりのない一般採用の枠に応募することに対し、障害者雇用の場合、障害者雇用枠というものに応募します。

これは各企業や自治体が定めているもので、一般の人材と区別をし、障害者のための応募枠を設けています。そのため、就職する際は同じポジションに応募する人は障害者のみとなり、一般の人とポジション争いを行う必要がありません。

このように、一般の人と障害者の雇用枠を分け、平等を保っている採用方法が障害者雇用といえます。

どんな人が障害者雇用となるのか

では実際に、どの様な人が障害者雇用枠として応募することが出来るのでしょうか。

具体的には、身体及び知的障害を持っている人が対象で、一般の人と比べ就業生活を送ることが難しい人材が対象です。

また2016年の法改正後は発達障害や精神障害も障害者雇用の対象として新たに加えられています。上記の改正のおかげで、障害者差別が減り、多くの障害者に対して平等な雇用機会が提供されるようになりました。

障害者雇用促進法とは

障害者にも平等な雇用機会を与えるため、障害者雇用促進法が制定されています。障害者雇用促進法の詳細は以下のとおりです。

障害者雇用率(法定雇用率)の算定基準

障害者は大きく以下の5つに分類されます。

  • 身体障害者
  • 知的障害者
  • 精神、発達障害者(障害者手帳があり、安定した就労が出来る人)
  • 精神障害の特性や疾患がある人(障害者手帳がなく、安定した就労が出来る人)
  • 上記以外の心身の障害がある人(障害者手帳を持たない人)

企業が障害者を雇用した際、上記1,2,3に当てはまった人材であれば障害者雇用率として認められます。その他の人材は対象外となるため、雇用をしても企業の障害者雇用率に変動はありません。

雇用義務を軽減されている業種

現在民間企業の法定雇用率は2.3%となっていますが、以下のような業種に限り、障害者雇用率を一概に遵守する必要がありません。

  • 船舶運航業
  • 幼稚園・小学校
  • 道路旅客運送事業
  • 石炭・亜炭鉱業
  • 林業

上記はほんの一例ですが、この業種からわかるように過度な肉体労働や、高度な専門知識が求められる業種では、障害者雇用率を2.3%まで引き上げなくて良いとされています。

障害者雇用状況報告

障害者を雇用する企業は毎年6月1日に厚生労働大臣へ報告をする、障害者雇用状況報告という制度が義務付けられています。

提出方法は地域ごとの労働局、もしくはハローワークを経由し厚生労働大臣へ提出する流れとなっています。現在では上記のアナログな提出以外に、e-Gov電子申請システムも普及しているため、ネット上で申請を行うことが可能となっています。

障害者雇用納付金制度

画像引用:障がい者としごとマガジン

企業が障害者を雇用する際、障害者雇用納付金制度に注意する必要があります。

障害者雇用納付金制度とは、法定雇用率として定められた2.3%の障害者を雇用していない企業が収める納付金であり、納付された金額は2.3%以上の障害者雇用をしている企業へ調整金や助成金として分配される制度です。

そのため、2.3%の障害者雇用率を満たしていなくても、障害者雇用納付金を支払えば他の罰則などは受けません。

ただ、あくまで納付金を収めているだけなので、障害者雇用率が未達のまま何年も会社が経営されているとハローワークから指導を受けたり、場合によっては企業名を公開されることもあります。

そのため、各企業なるべく障害者雇用率を2.3%以上に維持するよう勤める必要があります。また、具体的な納付金の金額は以下のとおりとなっているので参考にして下さい。

  • 常用労働者100人以上の企業:50,000円/月×未達人数分
  • 常用労働者100以上200人以下の企業:40,000円/月×未達人数分

企業に対する障害者雇用の助成金

障害者雇用納付金とは、障害者雇用率が2.3%以上に達している企業が、先述で紹介した納付金を助成金として受け取る制度です。

企業の人数ごとに、以下のような場合に助成金を受け取ることが出来ます。

  • 常用労働者100人以上の企業:27,000円/月×達成人数分
  • 常用労働者100以下で障害者雇用率が4%以上の企業:21,000円/月×達成人数分

また上記の助成金以外にも、以下のような複数の助成金があります。

特定求求職者雇用開発助成金

主にハローワークなどの紹介から障害者を雇用することで得られる助成金です。
条件にもよりますが、基本的には50万円、中小企業であれば120万円の助成金を受け取ることが出来ます。

トライアル雇用助成金

障害者を試行的に採用した場合、また週20時間以上の勤務が難しい障害者に対して、週20時間以上働けるように援助した場合に得られる助成金です。

障害者雇用安定助成金

障害者を一定人数、継続的に雇用した際に貰える助成金です。

条件として、障害者の雇入れに関する計画書を制作し、その計画に基づき採用活動を行うことが必要です。

また、新規で障害者を5名以上雇用し、障害者の雇用人数が合計で10人以上の状態を継続的に維持する必要があります。上記の条件を満たした場合、事業所の設備などのための費用が、中小企業を対象に助成金を支給されます。

障害者雇用のメリット・デメリット

メリット・デメリット

多様性が必要な現代では、多くの企業が障害者雇用に力を入れています。
そこで、障害者雇用を行うことで得られるメリット、デメリットについて詳細を解説していきます。

メリット

まず最初に挙げられるのが助成金です。

先述で紹介したとおり、障害者雇用率を達成している企業は助成金を獲得することが出来ます。助成金の種類によっては100万円を超えるものもあるため、企業にとっては大きなメリットと言えるでしょう。

次に会社の信用度が向上することが挙げられます。障害者雇用を積極的に行うことで、企業としての信用度や雇用における取り組みが評価され社会的に信用される企業へと成長できます。

またForobsなどの専門誌でも、働きやすい企業特集などを頻繁に取り上げており、その様な社外からの評価も高まることで、企業の実績として求職者や取引先に良い印象を与えることも可能です。

デメリット

デメリットとしてまず挙げられるのが、納付金を収める必要があることでしょう。

障害者雇用率が2.2%以下の場合、未達人数や事業規模によって納付金を収める必要があります。納付金を収めていれば罰則はありませんが、数年間未達成が続くことで行政から指導も入ります。

さらに社名が公開されるケースもあり、社名が公開されると求職者へ良くないイメージを与えてしまい、採用活動においても不利に働きかねません。

また、障害者を採用することでその後の運用やフォロー体制も求められます。障害者採用に慣れていない企業や人材が足りていな企業の場合、障害者を採用することで現場の仕事が思うように進められないこともあるので注意して下さい。

障害者雇用の採用方法

障害者採用を行うのであれば、具体的な計画をたてて、まずは求人広告やハローワークへ出稿する必要があります。その際の注意点として、障害者でもハンデを感じず就業が出来る環境であることを原稿内に記載すると良いでしょう。

他の方法としては就労移行支援事業や特別支援学校とコンタクトを取る手段です。直接コンタクトを取ることで、事業所から人材の紹介を受けるなど、採用に協力をしてもらうことが出来ます。

また障害者採用向けのエージェントを利用し、実際に就労意欲のある障害者と面接を行うことも出来ます。このように、障害者採用が積極的に行われている現代では、多くの方法で障害者を採用することが出来る環境となっています。

まとめ

障害者雇用の重要性が高まる現代では、多くの企業が障害者雇用に前向きに取り組んでいます。

また法改正後、障害者雇用率が低い企業は納付金を納める義務が生じたり、逆に達成している企業は助成金を受け取ることが出来るなど、金銭的な制度も制定されています。

現在障害者雇用をおこなている企業や、これから行う企業の方は、自社の採用スタイルに合わせ障害者雇用を進め、ぜひ障害者雇用率2.3%以上を目指し取り組んで下さい。

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