さまざまな業界で注目を集めている面接手法がグループディスカッションです。グループディスカッションには、応募書類や個別面談だけでは評価が難しい候補者の論理性や積極性、コミュニケーション能力などを見極められるといった特徴があります。
また、グループディスカッションを選考方法に取り入れる企業の割合は、大規模な企業ほど高くなる傾向にあるのです。今回は、グループディスカッションを行う目的や流れ、メリット・デメリットについても詳しく解説します。
グループディスカッションとは
グループディスカッション(GD)とは、1グループ5~7名程の人数に分けて、決められた1つのテーマについて全員で話し合い結論を出します。
さらに、まとまった答えを発表する時間が設けられる場合もあり、そういった時にはグループ内の代表者が結論とその答えに至った過程について簡潔にまとめて発表します。
グループディスカッションを行う目的
グループディスカッションを行う目的には、どのようなことが挙げられるのでしょうか。ここでは、企業視点での目的について紹介していきます。
論理的に考える力
どのような職種でも仕事をするうえで、論理的な考え方ができるかどうかというのは、企業が望む人材像として重要な点といえます。
例えば、会議やプレゼンなどの場で論理的に考える力があれば、筋道を立てて分かりやすい説明ができるのです。グループディスカッションを通して、候補者の「自分の考えをまとめて相手に伝わりやすい説明ができているのか」といった部分をチェックできます。
積極的な発言
積極性はどの企業でも大切にしているポイントといえるでしょう。積極的な発言ができているのか、というのもグループディスカッションを採用に取り入れることで確認できます。
議論を交わす中で積極的な発言ができる人は、自ら進んで行動する力も持ち合わせているでしょう。組織を運営するにあたり、積極性の高い人材がいることで生産性や競争力の向上が見込めます。
自由で斬新な発想
これまでに培った知識、そして固定観念にとらわれない自由で斬新な発想ができる人材を求める企業も多いでしょう。
グループディスカッションにおいて、発想力の高さは重要な評価のポイントの1つになります。どのようなテーマでも、オリジナルの視点で答えを導き出せる人材は、業務の改善や問題解決といった施策の考案に役立つでしょう。
リーダーシップの有無
議論をスムーズに進めるためには、進行役つまりリーダーが必要になります。グループディスカッションで各々担当した役割から、リーダーシップの有無を確認していくことができます。
企業においてもリーダーシップを発揮できる人材は必要不可欠です。企業発展のためには、社員一人ひとりが最大限力を発揮し、チームとして能率的に業務を遂行することが大切です。そのためには、リーダーシップのある人材が必要といえるでしょう。
協調性・コミュニケーション能力の有無
企業にとって協調性やコミュニケーション能力に長けているのも、採用するうえで必要なスキルといえるでしょう。
グループディスカッションの一連の流れを見て、「自分の意見ばかりではなく他者の意見も取り入れているか」「グループ内の空気が読め、誰とでも会話のキャッチボールが成立しているか」などをチェックできます。
グループディスカッションのメリット・デメリット
筆記試験などさまざまな採用選考がある中で、グループディスカッションは候補者の実際の発言や行動を評価できるという特徴があります。ここでは、グループディスカッションを採用に取り入れるメリットとデメリットについて紹介していきましょう。
グループディスカッションを採用に取り入れるメリット
グループディスカッションを採用に取り入れるメリットについて紹介していきます。
候補者のパーソナルな部分が知れる
グループディスカッションを採用に取り入れるメリットとして、「パーソナルな部分が知れる」ということが挙げられます。
候補者のよりパーソナルな部分は、応募書類や個別面談だけで判断するのは難しいでしょう。グループディスカッションを行う中で、どのような考えを持ち、どのような位置で発言するのかなどにより、候補者の個性をチェックできます。
入社後の仕事に取り組む姿勢が実際に見られる
入社してからの業務を想定して取り組む姿勢を実際に確認できるのも、グループディスカッションを採用に取り入れるメリットの1つでしょう。
グループディスカッションでは、一時的とはいえチームを組んで答えを導き出します。実際に企業でプロジェクトを担当する場合でも、個人ではなくチームで動きます。
チームの中で積極的な発言や行動が行えているのか、上手にコミュニケーションが取れているのか、という点が重要です。グループディスカッションを採用に取り入れることで、その能力を見極めることが可能になるでしょう。
効率的に候補者を評価・選考できる
グループディスカッションは、複数のグループで同時進行できるため、一度に多くの候補者を効率的に評価して選考できるといったメリットもあります。さらに、個人面談などと違い個人にかける時間も少なくできるため、企業の手間を省けるのも利点です。
採用においてグループディスカッションを実施する割合が、大企業ほど高くなる傾向にあるのは、多くの候補者の評価・選考を効率的に行えるという理由が大きいでしょう。
グループディスカッションを採用に取り入れるデメリット
グループディスカッションを採用に取り入れるデメリットについて紹介します。
議論が浅くなりやすい
グループディスカッションは、実施する直前にテーマを候補者に伝えます。候補者は事前の準備や対策が難しいだけでなく、時間の制限もあり時間内に自身のアピール、チームとして結論を出すといった作業が必要になるでしょう。
物事をじっくり深く考えるタイプの人には不利な面接の手法であり、瞬発的にアイデアを生み出せるスキルを持つ人材に評価が偏る場合があります。
さらに就職活動に慣れている学生は、グループディスカッションのコツを理解しているので、印象を良くすることだけを考えた内容の浅い議論しかされない可能性も考えられます。
候補者一人ひとりの話を深く聞けない
候補者一人ひとりの話を深く聞けないという点が、グループディスカッションを採用に取り入れるデメリットとして挙げられます。グループディスカッションは、多くの候補者を効率的に評価できる反面、面接官が個人と直接じっくり話をすることはできません。
そのため、単純にグループディスカッションが得意な人が、高い評価を得る場合が多くなりやすく個人でなら高い仕事の成果を上げられる人材を見落としやすくなるでしょう。
グループワークとの違い
グループディスカッションと似たような言葉にグループワークがあります。
グループワークは、複数人のグループを作成後、話し合い答えを導き出したうえで成果物を発表する作業であり、内容ではグループディスカッションとほとんど変わりありません。
大きく違う点を挙げるとすれば、話し合いに焦点が当てられるグループディスカッションに対し、グループワークは、話し合い後に企画書や制作物といった何かしらの成果物を発表または提出します。
グループディスカッションテーマの種類と例
グループディスカッションテーマの種類にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、さまざまな業界の例を参考に紹介していきます。
業界や自社に関連するテーマ
- 「今後建設するとしたら、どのようなマンションにするか」不動産業界
- 「A IやV Rの技術を使ったビジネスの将来性に関してどう思うか」ソフトウェア業界
- 「自社製品・サービスを売り込むためのキャッチフレーズを考える」サービス業界
所属する業界や入社する企業に関連したテーマは、ディスカッションにおいて定番といえます。中でも業界の今後に関わる技術などについての内容が多い傾向にあるでしょう。
また、志望する企業や業界に関する最低限の知識が候補者にあるのか、というのも業界や自社に関連したテーマを取り上げることで確認できます。
時事に関連するテーマ
- 「自社が地域活性化に貢献するためにはどうすれば良いのか」業界問わず
- 「少子高齢化社会の影響や問題、そして解決方法について」保険業界
- 「経済の問題について」銀行業界
ニュースや新聞などで、取り上げられる時事問題に関連した内容も代表的なテーマになります。
少し難しい時事に関するテーマを与えられた際にも、自分の言葉でわかりやすく伝えられる人材は、常日頃から情報や知識のアンテナを張り、ニュースなどをこまめにチェックしている人が多いでしょう。
その他のテーマ
- 「就活をしている学生と社会人との違いは何か」業界問わず
- 「自社の採用条件は何を重視していると思うか」業界問わず
- 「月に行けるとしたら何がしたいか」業界問わず
上記以外にも企業によって多くのテーマが用意されています。中でも「就活をしている学生と社会人の違い」や「自社の採用条件」に関するテーマを取り上げる企業が、多い傾向にあるようです。
また、採用面接を受ける業界や企業とは関係がなさそうな、予想もしないテーマを設定する場合もあるでしょう。
グループディスカッションを採用に取り入れるうえで、自社にあった人材を採用するためにもテーマ選びは重要といえます。
グループディスカッションの流れ
ここでは、一般的なグループディスカッションの流れについて解説していきます。
採用担当者からの説明
企業の採用担当者からテーマや時間、ルールなどの説明を行います。設定する時間を1時間以上設ける企業や10~20分と短く設ける企業などさまざまでしょう。候補者たちが話し合う方向性を統一するためにも、明確なテーマや時間、ルールの共有を設定することが重要です。
候補者同士の自己紹介
候補者同士の自己紹介については、企業側がグループディスカッションの前に自己紹介の時間を設けるケース、または各グループが自主的に行うパターンの2つが挙げられます。採用担当者は、自己紹介の様子を見ながら候補者の顔と名前を一致させることを意識すると良いでしょう。
また、人数が多いグループディスカッションでは、候補者の名前を間違えて評価してしまうのを防ぐため、名札を事前に用意しておくことも大切です。
役割の分担
役割の分担は、進行役・書紀・タイムキーパーなど、グループディスカッションを効率的に進めるため、企業側があらかじめ決めて振り分ける場合もあります。
候補者同士でどのように役割分担をしたのか、誰がどの役割を担ったのか、という部分を評価ポイントに加えたい場合は、企業側で決めずに各グループに決定権を預けましょう。
ディスカッション
グループディスカッションのテーマや時間は、企業によって異なりますが平均して20~60分となるようなテーマに設定するのが良いでしょう。
そのためには、まず企業内で本番を想定した模擬のディスカッションを行い、意見がまとまるまでにかかる時間を目安として定めておく必要があるでしょう。
発表する
最後に代表者が、グループ内で導き出した結論や意見を発表する時間を設けます。その際、「口頭のみの発表形式」「パワーポイントなどを利用したプレゼン形式」「特に指定せず自由に発表する形式」など、発表の形式について決めておく必要があります。
そして、それぞれグループの発表後には、簡単なフィードバックを行い合否連絡の方法や今後の流れなどについて説明を行いましょう。
グループディスカッションの評価ポイント
グループディスカッションは、候補者の純粋な人柄やスキルを確認するために、評価基準を候補者に伝えないようにするのが評価のポイントでしょう。事前に伝えることで、候補者が評価基準に合わせた行動をとる可能性があるからです。
また、役割について評価する際には注意が必要になります。リーダーなどの重要な役割を担当したこと自体は評価対象から外し、割り振られた役割を理解して正しい発言や行動が行えるのか、という部分が評価基準として適切です。
さらに、結果よりも過程に評価の比重を置き、休憩中などの議論以外の様子も評価のポイントとしては重要となります。
まとめ
グループディスカッションを採用に取り入れる目的、その際のメリットやデメリットなどについて紹介しました。グループディスカッションは、企業にとって多くの候補者を効率的に選考しながら採用を決められる方法です。
また、チーム内での議論が必要なため個人面接よりも、候補者の個性を確認できるといったメリットがあります。今後採用にグループディスカッションを取り入れようと考えている人事担当者の方は、ぜひ導入の際に参考にしてみてください。
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