少子化により人材不足が深刻化している日本では、新卒採用はもちろん中途採用にも力を入れている企業が増えています。そこでぜひ利用してほしいのが「中途採用支援助成金」制度です。
中途採用支援助成金には3つのコースが用意されており、比較的受給条件をクリアしやすい制度とされています。
この記事では助成金のコースや受給条件に加え、助成金を確実に受け取るポイント・コツなども紹介していくので、助成金を利用した中途採用を検討している企業はぜひ参考にしてみてください。
中途採用支援助成金とは
人手不足を感じつつも採用活動にかける費用が足りず、積極的な中途採用に踏み切れない企業は多いでしょう。一方で、就職したくてもできない求職者はたくさんいます。それら双方をつなぐ制度として作られたのが「中途採用支援助成金」です。
中途採用支援助成金とは、積極的に中途採用を実施する企業を支援する制度です。
企業と求職者をつないで転職・再就職者の採用機会を拡大するとともに、人材移動の促進を図り、生涯現役社会を目指すことを主旨としています。
中途採用支援助成金を利用するメリット
中途採用支援助成金を利用するメリットは以下の通りです。
- 返済不要の助成金を受け取れる
- 優秀な人材確保に取り組みやすくなる
- 労働環境を整備できる
中途採用の取り組みをして受給要件に当てはまれば、中途採用支援助成金を受給できます。中途採用支援助成金は返済不要で受け取れ、労働環境を整備するために使用できるでしょう。
また、中途採用支援助成金を利用すれば、手間やコストがかかる優秀な人材確保に取り組みやすくなるのです。
中途採用支援助成金3つのコースと受給要件
中途採用支援助成金は「中途採用拡大」「生涯現役起業支援」「UIJターン」の3つのコースに分けられます。以下ではそれぞれのコースの概要と、受給条件について解説していきましょう。
中途採用拡大コース
中途採用拡大コースは、中途採用者の雇用管理制度を整え、中途採用を拡大した企業に助成するものです。中途採用拡大コースは支給内容によって「中途採用拡大助成」と「生産性向上助成」の2つに分かれます。
中途採用拡大助成とは中途採用の拡大に務めた企業に対する助成で、生産性向上助成とは中途採用拡大助成を受けた企業のうち、一定期間経過後に生産性の向上が見られた企業に対する助成です。
中途採用拡大助成を受けたのち、さらに条件をクリアすれば生産性向上助成を受けられます。
取り組み内容と助成額は以下の通りです。
- 中途採用率が20ポイント以上向上:50万円
(初めての中途採用の場合は10万円追加) - 中途採用率が40ポイント以上向上:70万円
(初めての中途採用の場合は10万円追加) - 45歳以上の人の初採用:60万円または70万円
(60歳以上の場合は70万円を助成) - 情報公表と中途採用者数の拡大:30万円
(労働者が1年間定着した場合20万円追加)
受給要件
中途採用拡大助成と生産性向上助成それぞれの受給条件について解説していきます。
中途採用拡大助成を受けるには以下が必要な条件となります。
「要件を満たす労働者を雇用すること」
「中途採用計画期間に中途採用の拡大を図ること」
また、生産性向上助成を受けるには
がクリアできていなければなりません。
生涯現役起業支援コース
生涯現役起業支援コースとは、起業した40歳以上の人が同じ中高年を雇用した際に助成される制度です。生涯現役起業支援コースには、「雇用創出措置助成」と「生産性向上助成」があります。
雇用創出措置助成は、民間有料職業紹介事業の利用料や就職説明会にかかった費用、募集・採用パンフレットの作成費、求人情報掲載費用などの雇用にかかった費用が助成対象となります。
起業者が60歳以上の場合は上限を200万円として助成率は2/3、起業者が40~59歳の場合は150万円を上限として助成率は1/2です。
さらに、雇用創出措置助成を受けて一定期間経過した後、生産性が向上した場合に追加で助成金を受けられるのが生産性向上助成です。雇用創出措置助成で助成された金額の1/4が追加で受給されます。
受給要件
生涯現役起業支援コースの助成金を受けるには、起業から11ヵ月以内に計画書を提出し、都道府県の労働局長の認定をもらう必要があります。
さらに、計画書に記載した期間内に「60歳以上を1人以上雇用」、「40〜60歳を2人以上雇用」、「40歳未満を3人以上雇用」「40歳以上を1人と40歳未満を2人雇用」のいずれかを満たすことが助成金の受給条件となります。
他にも、支給申請書提出日に「雇った人の過半数が離職していないこと」「離職した人の数が、期間内に雇った対象労働者数を超えていないこと」など細かい条件があるので注意しましょう。
UIJターンコース
UIJターンコースとは、移住支援制度を活用してUIJターンした人を雇用した際に受け取れるものです。採用計画で設定した期間内に対象者を1人以上雇用した企業が対象です。
以下の条件を満たす労働者を雇用した場合、100万円を上限としてかかった経費の合計に対し中小企業は1/2、中小企業は1/3が助成されます。
かかった経費の対象となるのは、自社ホームページ・募集パンフレットの作成費、就職説明会・面接会などの実施経費、外部専門家に依頼したコンサルティング費用などです。
受給要件
UIJターンコースでは、以下の条件をクリアしている労働者を雇用する必要があります。
- 東京圏から移住した労働者であること
- 地方公共団体が開設し運営するサイトに掲載されている求人に応募している労働者であること
- 雇用保険の一般被保険者あるいは高年齢被保険者として雇用された労働者であること
- 雇用されてから長期的に働くことが確実であると認められている労働者であること
受給するまでの流れ
それぞれがどのような制度か、どうしたら助成されるのかがわかったところで、3つのコースについて受給されるまでの流れを紹介していきましょう。
中途採用拡大コース
中途採用拡大コースの受給までの流れは以下の通りです。
- 中途採用計画を届け出る
- 計画内容を実行する
- 助成金の申請をする
- 生産性向上助成の支給申請をする
まずは助成対象の求職者を雇う前に、中途採用計画書を作成して労務局へ提出します。中途採用計画書の提出期限は、計画初日の前日から6ヵ月前~計画初日の前日です。
次に中途採用者の雇用管理制度を整え、計画書通りに対象となる人を雇い入れましょう。対象となる人を雇い入れたら、助成金の申請をします。
助成金の申請は、計画終了から6ヵ月が経つ日の翌日~2ヵ月以内に行うことが必要です。助成金を受けてから一定期間後、実際に生産性が向上した場合に生産性向上助成の支給を受けられます。事業の実行をした年度から3年後の会計年度末日の翌日~5ヵ月以内に申請しましょう。
生涯現役企業支援コース
生涯現役企業支援コースの受給までの流れは以下の通りです。
- 雇用創出措置における計画書作成し届け出る
- 労働者を雇用する
- 雇用創出措置に係る申請書を提出する
- 生産性向上に係る申請書を提出する
中途採用拡大コースと同様に、まずは計画書の作成と届出を済ませましょう。計画書の届出は起業から11ヵ月以内であるため、過ぎてしまわないように注意が必要です。
次に、計画書の内容に従って労働者を雇用します。労働者を雇用したら、計画が終了する日の翌日から2ヵ月以内に雇用創出措置に係る申請書を提出しましょう。助成を受けてから一定期間後、実際に生産性が向上した場合に限り生産性向上助成の申請が可能です。
UIJターンコース
UIJターンコースの受給までの流れは以下の通りです。
- 採用計画を届け出る
- 計画内容を実行する
- 助成金を申請する
中途採用拡大コース・生涯現役企業支援コースと同様に、まずは採用計画の届出をしましょう。提出期限は、計画初日の前日から3ヵ月以内~前日までです。採用計画を提出したら、計画内容である採用活動・雇用を計画期間内に進めます。
対象の労働者を雇用して6ヵ月が経過したら、計画期間の終了日から2ヵ月以内に助成金の支給申請を行いましょう。
確実に支給を受け取るためのポイント・コツ
今回紹介した助成金は比較的受給しやすいものですが、より確実に受給するためにはいくつかのポイントやコツがあります。以下で紹介していきますので、制度を活用する際の参考にしてください。
計画書通りに事業を実施すること
提出した計画書通りに事業を実施することは、助成金をより受給しやすくするためのポイントです。もし計画書の内容を変更したい場合、修正して提出し直すことはできます。ただし、計画書の提出回数には限りがあるので注意しましょう。
わかりやすく計画書を作成すること
上記の通り、計画書通りに事業を進めることはより助成金を受給しやすくなるポイントですが、その計画書に書かれている内容がわからなければ計画書通りに事業が進められているか判断できない場合があります。
最悪の場合は申請が通らない場合があるため、わかりやすく計画書を作成しましょう。計画書の書き方がわからない・不安という人は専門家などに聞いてみるのもおすすめです。
まとめ
働き方が多様化してきている昨今では、自分らしく働ける職場を探している人も多いでしょう。その一方で企業も優秀な人材を探すため、積極的に中途採用を行っているケースも少なくありません。
人材の採用にはコストがかかりますが、今回紹介した助成金を利用すれば企業の負担も軽減できるでしょう。この記事を参考に助成金の仕組みを理解して、優秀な中途社員の採用へとつなげてください。
年々競争が激しくなっている中途採用市場ですが、これから中途採用を始める企業にとって、どれくらいの採用コストを掛ければいいか気になるところでしょう。
こちらの記事で、中途採用における採用コストの相場や採用コストを上手く削減して採用する具体的な方法を紹介しているので、ぜひあわせてご覧ください。
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