近年の日本では、少子高齢化問題が深刻であり若年齢層を中心とする労働人口の減少が進んでいます。企業が優秀な日本人の人材確保に苦しんでいる中、注目されているのが外国人留学生の採用です。
この記事では、外国人留学生採用のメリットや注意点を解説していきます。優秀な人材確保のため、外国人留学生の採用を検討している採用担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
留学生の就職状況
文部科学省による「外国人留学生の就職促進について(外国人留学生の就職に関する取組等)」(2022年6月)によると、外国人留学生の就職者数は2010年以降増加傾向にあります。
留学生の主な国籍は、中国、ベトナム、ネパール、韓国、スリランカの順に多く、アジアが全体の大半を占めています。
日本での就職を希望するのは、留学生全体の6割程度です。しかし、実際に就職できているのは3〜4割程度であり希望と実際の数値には差がみられ、2020年度には28.5%と3割を下回りました。
留学生の日本での就職者数が伸び悩む理由の一つとして、日本語能力が企業の求めるものに達していないことが挙げられます。同資料によると、企業側の約4割が外国人留学生に日本語能力の面で改善を求めています。
また、就職に関する課題として、日本では当たり前の「就活」いわゆる就職活動の仕組みが、留学生には分かりにくいことや企業研究の仕方が分からないといった声があるのも事実です。
このような課題に取り組むにあたり、企業側は分かりやすい採用情報を提供することで、留学生が応募しやすい状況をつくれる可能性が高まります。
留学生が日本で就職したいと思う理由
日本への留学を決めた外国人留学生が、そのまま日本で就職をするケースも多くあります。外国人留学生はどのような理由で日本での就職を決めるのでしょう。
理由その1:日本の生活環境に慣れた
「住めば都」という言葉がある通り、どのような環境でも住み慣れればその場所が居心地良く思えるものです。最初の頃は言語や異文化への違いから戸惑うことも多い留学生も、日本の生活環境に慣れれば不自由さがなくなるでしょう。
住み心地が良くなることで、そのまま日本での就職を考える留学生が多くなります。
また、日本では24時間営業のコンビニや公共機関のサービスなど、海外と比較して生活環境が整っていることも理由の一つです。
理由その2:日本が好き
「日本が好き」というシンプルな理由から、日本での就職を考える外国人留学生もいます。中でも日本のアニメは世界的にも人気が高く注目されており、アニメや漫画の日本文化に関心を持ったことがきっかけで、日本での生活を体験したいという留学生が増えています。
卒業後も日本文化に触れながら知識や技術を学びたいと考える留学生が多くいるでしょう。
理由その3:語学力を活かせる
外国人留学生が卒業した後に就く職業で、多いのが通訳や翻訳です。母国語でない日本語を勉強し身につけることで、語学力を活かした働き方をしたいと考える留学生が多い傾向にあります。
また、海外進出している日本企業が多いことから、日本語を学び日本での仕事経験がある外国人留学生は、母国に帰った時に給与の高い日本企業で働くこともできます。
理由その4:治安の良さ
外国人留学生が日本で就職する理由に治安の良さも含まれるでしょう。日本は、経済平和研究所が発表している「世界平和度指数」ランキングで10位に入っています。(2022年時点)
「子どもだけでの登下校」「公園で遊ぶ」「留守番」など、日本では当たり前の光景も、海外では治安の悪さから禁止されている国も。
日本は、海外から見ると治安が良く安心して働ける国と認識されています。また、日本は清潔な国としても海外からの評価が高く、環境の整った清潔な場所で働きたいと考える留学生が、日本での就職を決めるのでしょう。
企業が留学生を採用するメリット
ここでは、企業が外国人留学生を採用するメリットについて解説します。
優秀な人材の確保
日本では少子化による労働力人口の減少が原因で、人材確保が困難になっている企業が多くあります。企業は雇用する人材対象を海外まで広げることで、優秀な人材の確保に繋がりやすくなるでしょう。
また、若い人材が減るということは、企業内で従業員の高齢化も進むことになります。人材の身体機能の低下が理由で生産性低下や健康リスクの問題を抱えてしまうことも考えられます。
そのような不安を解消するためにも、若い外国人留学生を積極的に採用するのは企業にとって大きいメリットとなるでしょう。
海外進出で即戦力になる
海外進出を考えている、もしくはすでに海外事業を展開している企業にとって、外国人留学生は即戦力になるといえます。日本と海外とでは、言葉だけでなく文化や価値観、商取引に関する習慣など、さまざまな面で違いがあります。
この違いを把握していないと、商談や現地のスタッフとのコミュニケーションがうまく行えません。母国と日本の言語や文化、どちらも理解している外国人留学生を採用することで、スムーズなビジネス展開をはかれる可能性が高まります。
企業の活性化が期待できる
異国への留学を決める外国人留学生は、モチベーションが高く真面目な姿勢で業務に取り組む人が多い傾向にあります。そのため、何に対しても意欲的な留学生と一緒に仕事をすることが、企業で働く日本人社員にも良い影響を与え企業の活性化に繋がる効果を期待できます。
また、留学生が仕事内容を理解しやすくなるよう、社員が丁寧な説明を心がけるため、社員のコミュニケーションスキルが上がることも見込めるでしょう。
新しいアイデアが生まれやすい
日本とは違う価値観や考え方を持つ外国人留学生を採用することで、日本人だけでは生まれない斬新なアイデアが生まれ、企業に新しい風をもたらす可能性があります。
また、企業側が解決できていない課題に対して、経験や知識の異なる人材が組織にいると、さまざまな角度からアプローチでき解決の糸口が見つかるというメリットもあるでしょう。
企業が留学生を採用する時の注意点
優秀な人材の確保や企業の活性化など、企業にとってさまざまなメリットをもたらす外国人留学生ですが、採用する時にはどのようなことに注意する必要があるのでしょう。ここでは、企業が外国人留学生を採用する時の注意点について解説します。
在留資格の確認をする
外国人留学生が日本での仕事を開始するには、留学ビザから就労ビザへと変更する手続きを事前にしておかなくてはなりません。企業側は外国人留学生を採用するにあたり、採用日までに在留カードで変更の確認を行います。
許可を得ないまま外国人留学生を働かせてしまった場合、不法就労助長罪といって企業側も罰則が科されるため、注意が必要です。
外国人雇用状況届を提出する
企業は外国人留学生の雇用および離職の際に、「外国人雇用状況届出書」を届け出る必要があります。該当する外国人留学生の在留資格や在留期間、名前などを記入したものを厚生労働大臣に届け出ることが必要です。
外国人雇用状況届出書は、外国人を雇用する全ての企業に義務づけられている手続きのため、怠ると就労ビザ同様に罰則が科される可能性があるので注意しましょう。
異文化や価値観の違いを理解する
日本と外国とでは、文化や価値観が大きく違うケースが多々あります。そのため、企業の社員含め外国人留学生自身も、働きはじめは違和感があるかもしれません。
例えば、「空気を読む」という日本独特の人間関係を円滑にするコミュニケーションは、外国人留学生には伝わらないと考えておくべきでしょう。
指示は明確に伝え、理解をしているのか確認する必要があります。企業側は認識の違いによるトラブル回避のためにも、外国人留学生を採用する目的を明確にして、すでに働いている社員への理解を得ておくことも大切です。
労働条件の明確化
外国人留学生が日本企業で就職する場合、日本人採用同様に労働基準法を守って働いてもらうことになります。日本人を採用する際は、就職する本人が企業から与えられる書面などを読んで理解することができるため、企業側からの説明も簡潔に終わるケースが考えられます。
外国人留学生採用の場合は、企業側と留学生本人との認識のずれを起こさないためにも書面で提示するほか、留学生の日本語スキルに合わせたうえで丁寧な説明を行うことが重要です。
企業が留学生を採用する時に注目するポイント
ここでは、企業が外国人留学生を採用する時に注目すべきポイントについて解説します。
日本語能力の確認
外国人留学生が日本の企業で活躍するためには、日本語能力の高さは必須条件といえます。そのため、留学生の採用では、日本語の会話力や読み書きのレベルを確認しておく必要があるでしょう。
なお、日本語能力を測る基準として、日本語能力試験(JLPT)といった試験を受けているのかを確認するのも一つの方法です。
コミュニケーション力の確認
コミュニケーション力は、働くうえで重視すべきポイントです。一緒に働く日本人社員との関わりはもちろん、仕事によっては取引先との商談や打ち合わせに関わる場面もあり、そのような場では高いコミュニケーション力を求められます。
留学生の受け答えが速いか自然に行えているかなどを総合的に判断して、コミュニケーション力が自社の求めるレベルに達しているのか確認する必要があります。
ビジネスマナーの確認
国によって文化が違うように、ビジネスマナーも国によってさまざまです。面接の受け答え以外に、話している時の態度や入退室の様子といった点まで、視野を広げて観察することもおすすめです。
外国人留学生が日本のマナーを理解して、実行する気持ちを持ち合わせているのかも注目すべきポイントでしょう。
留学生を新卒採用する時の手続き
外国人留学生を新卒採用する時の手続きにおいて、最も重要となるのが留学ビザから就労ビザへの変更です。就労ビザの取得は必要書類を揃えて、基本的には留学生本人が申請手続きを行います。
就労ビザの審査には1~3ヶ月ほどの時間を要するため、留学生に内定を出した後すぐに申請を開始してもらうのがいいでしょう。
なお、内定を出した後に労働契約を締結し「雇用契約書」か「労働条件通知書」を用意します。この書類は、就労ビザの申請の時にも必要になるほか、留学生とのトラブルを避けるためにも必要となります。
留学生の採用をサポートしてくれるサービス
最後に外国人留学生の採用をサポートしてくれるサービスについて紹介します。
Bridgers
株式会社ネオキャリアが提供するサービス「Bridgers」は、外国籍の優秀な人材に特化した人材紹介を行っています。外国人留学生を採用したいけれど、何から手をつければいいのか分からない企業へのサポートも万全です。
Bridgersは年間1,500人もの外国人採用の内定実績があり、ビザ申請から就労まで対応しています。
リュウカツ
リュウカツは、日本で就職を考える外国人留学生と企業の出会いをサポートする就職・採用支援サイトです。外国人材に特化したサービスの展開をしているため、外国人留学生の採用を検討中の企業におすすめといえます。
外国人就労ビザ申請代行サービス
就労ビザの申請には多くの書類が必要となり、手間と時間がかかるため企業側には大きな負担となります。そういった負担を少しでも減らすために外国人就労ビザ申請代行サービスの活用がおすすめです。
書類作成をはじめ、申請や許可取得までを代行してくれます。導入を検討される際は、ウェブサイト等で調べてみるのもいいでしょう。
まとめ
少子化による労働人口の低下により、日本の企業では優秀な人材確保のため外国人留学生の採用活動を視野に入れることが重要になってきます。
優秀な人材獲得のために、今回紹介した外国人留学生を採用するポイントを参考にしつつ、ぜひ外国人留学生の採用活動に活かしてみてください。
他にも外国人を雇用するメリットやデメリット、おすすめの採用媒体について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
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