企業の中核を担うエース社員や中堅社員の場合、会社からの信用度も高く安心して業務を任せられます。
そのため、企業としては、エース社員や中堅社員の退職は、手遅れになる前に防ぎたいのが正直なところでしょう。
「エース社員の退職理由を知りたい」「中堅社員の退職を防ぎたい」と考えている人事担当者のため、この記事ではエース社員や中堅社員が退職してしまう理由や退職の予兆について解説していきます。
未然に防ぐ方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
エース社員・中堅社員の退職で企業が受ける損失
優秀なエース社員や中堅社員が突然退職することで、在籍していた部署に混乱が生じる場合もあります。
では、エース社員や中堅社員が退職すると、企業側はどのような損失を受けるのでしょうか。
まずは、企業側が受ける損失について解説します。
他の社員の負担が増える
エース社員や中堅社員が退職してしまうと、空いた分の業務を誰かがフォローしなくてはいけなくなるため、他の社員の負担が増えることに繋がります。
効率よく仕事を遂行していたエース社員や、中核メンバーとして成果を上げていた中堅社員に業務が集中していた場合、抱えていた仕事の中には難易度の高い仕事もあるでしょう。
そうすると、残った社員ではカバーしきれないことも考えられ、人手が足りなくなることで、単純に業務が回らないといった問題を抱えることにも発展してしまうかもしれません。
残った社員のモチベーションが下がる
常に目標を意識してバリバリ働くエース社員に対して憧れを抱く他社員も少なくないと考えられ、目標とされるような社員の退職は、他社員のモチベーションに大きく影響する可能性があります。
また、管理職と現場との架け橋になってくれる中堅社員に絶大な信頼を寄せる社員もいます。そんな他の社員の模範ともなる存在がいなくなることで、仕事に対する意欲が低下し、社内または所属していた部署の士気が下がる恐れもあるのです。
生産性が低下する
エース社員や中堅社員の退職が企業に与える影響として、生産性の低下も挙げられます。
効率よく業務をこなせるエース社員や、重要度の高い仕事を多く任されることが多い中堅社員が退職したあと、同じようなクオリティーで業務を続行することは難しくなってしまうことが考えられます。
他の社員が続けて退職する可能性がある
エース社員や中堅社員の退職が影響して、他の社員が続けて退職する可能性があります。そもそもエース社員や中堅社員が辞めてしまう会社は、何かしら問題を抱えている可能性があるでしょう。
「○○さんが辞める会社に未来を感じない」「○○さんがいたから今まで頑張れた」といった理由のほか、業務負担が増えて辛いからと、他の社員が続けて退職する場合もあります。
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もう手遅れ?エースや中堅社員が退職してしまう理由
エース社員や中堅社員の退職は、企業にさまざまな影響を与えます。ここでは、退職してしまう理由を詳しく解説します。
やりがいを感じない
エース社員や中堅社員は、仕事の理解や業務スピードが他の社員に比べて速い傾向にあるため、上司から優先的に仕事を任せられることが多くなります。しかし、さまざまな業務を引き受けることでルーティンワークが多くなってしまい、その状態が長くなると物足りなさを感じてしまうことがあります。
また、常に「成長したい」と考え向上心を持って仕事に取り組む姿勢があるため、成長している実感がないと結果的にやりがいを感じられなくなってしまう場合もあるでしょう。
キャリアアップが見込めない
キャリアアップが見込めないことも、退職に繋がる可能性があります。
キャリアアップには「マネジメントの経験」「昇進や昇格」などが該当しますが、常に目標を掲げて業務にあたるエース社員や中堅社員にとって、とても重要な基準となります。
本人の能力とは関係なく、年齢や勤続年数などにより昇進が決まる企業の場合、今後の成長が見込めないと感じて退職を決意するケースもあるでしょう。
人間関係に悩んでいる
人間関係の悩みもエース社員や中堅社員が退職する原因の一つです。優秀な社員だからこそ、周りから妬まれて嫌味を言われることもあるでしょう。
コミュニケーションが面倒になり孤立すると、より一層居心地が悪くなります。こういった人間関係によるストレスで、退職する恐れもあります。
給料が良くない
退職を判断するきっかけとして、給与の面もとても重要です。多くの業務を任されて、負担も大きく忙しいのに給料が良くない、サービス残業ばかりなど、仕事負担と給与面が釣り合っていないと退職を考える大きな原因となります。
責任ある立場につくことが多くなる中堅社員ともなると、企業によっては見合った給料をもらえる場合もあります。
他の企業の同世代と比べた時に自分の給料が少ない場合、より良い条件の職場を探すのはやむを得ないでしょう。
経営方針に納得できない
経営方針に納得できない社員は退職してしまうケースが多いでしょう。
優秀な社員であるほど、自分が勤める企業の未来をシビアに予測する傾向にあります。
経営方針に納得できないと企業の将来性に不安を抱くことに繋がり、スキルアップのためややりがいを感じないといった理由から退職を検討することがあります。
このようなケースでは、たとえ給与や待遇が良い職場であっても退職する可能性が高くなります。
業務量が多くて負担が大きい
エース社員や中堅社員の場合、他の社員に比べて業務量が多くなる傾向にあります。そのため、ワークライフバランスが保てなくなると心身ともに疲れ切ってしまいます。
その結果、重大な病気を抱えることに繋がる場合も珍しくありません。業務量が多くて負担が大きくなると、退職を検討することがあります。
他の企業からのスカウト
仕事のできるエース社員や中堅社員は、他企業からも「優秀な人材」として注目される存在になり得るでしょう。
そのため、スカウトされて退職する社員もいます。優秀な社員の評判は、社外に伝わっていることもあるため、競合他社からスカウトされる社員も多くいます。
給料面や業務内容の条件が今の会社より良ければ、退職してスカウトされた企業への入社を選択することもあるでしょう。
危険!エース社員・中堅社員が退職する予兆
エース社員や中堅社員が退職する時には予兆があります。その予兆を敏感に察知できれば、エース社員や中堅社員を失わずに済むかもしれません。
ここでは、退職する予兆について解説していきます。
コミュニケーションが少なくなる
職場でのコミュニケーションが少なくなるようであれば、退職を考えている可能性は大きいでしょう。退職となれば「もうこの職場の人たちとは関係なくなる」という考えになり、一線を引いてしまう場合があります。
また、退職を悟られたくなくて、わざとコミュニケーションを少なくしているケースも考えられます。
積極的な姿勢が見られなくなる
積極的な姿勢が見られなくなるのも、退職する予兆の一つといえます。
もともと会議での発言が積極的だったエース社員や、スキルアップのために学ぶ姿勢があった中堅社員が、そうでなくなった時は注意が必要です。
退職を決めた社員の中には、とりあえず与えられた仕事をこなすだけで業務にやる気がなくなるという人もいます。
頻繁に休みを取るようになる
頻繁に休みを取るようになった場合も退職する予兆と考えられるでしょう。
有給休暇を利用して転職のための準備を進めている可能性があるほか、退職に向けて有休を消化しようと考えている場合もあります。
現在の会社で働く理由が個々の社員によって異なるように、「仕事を辞めたい」と思うのにもさまざまな理由があります。職場の人間関係をはじめ、仕事内容や働き方が合わない、仕事にやりがいを感じられないなど、実に多様です。 しかし、突然の退職を防[…]
退職の意を告げられた時の引き止め術
ここでは、辞めてほしくない社員から退職の意を告げられた時の、引き止め術について効果的な方法を紹介します。
退職希望の社員に寄り添いしっかり話を聞く
まず、大切なのは退職希望の社員の話をしっかり聞くという姿勢が大切です。
なぜ退職したいのか、何に悩んでいるのかなど、とにかく話を聞くことで「あなたのことを考えています」という姿勢を分かりやすく表現できます。
最初は意見や助言をすることなく、ただ話を聞き問題があれば解決法を探すようにしましょう。
退職希望者のキャリアビジョンに合った条件の見直し
退職を希望している社員を引き止めるためには「これからもこの企業で働きたい」と思ってもらわなければなりません。
そのためには、退職希望の社員が思い描く将来像や働き方といった、キャリアビジョンをしっかり確認して求める条件の見直しをする必要があるでしょう。
その際、これまでの功績を心から評価して感謝していることを伝え、企業にとって必要な存在と伝えることも重要です。
改善案を伝え改善することを明確にする
退職希望の社員の話をしっかり聞いたうえで、問題解決のための改善案を伝えましょう。
社員が納得すれば、その方向で改善するための実行内容を明確にします。
抱えている問題や課題を解決できれば、少なからず辞める理由がなくなるのと、企業に留まってくれる可能性も高くなります。
エース社員・中堅社員の退職を未然に防ぐ方法
できれば、エース社員や中堅社員が退職を考えてしまうことのないよう、企業としては対策をしていく必要があるでしょう。最後に、退職を未然に防ぐ方法について解説します。
業務内容の見直しをする
エース社員や中堅社員の仕事量が多い場合は、業務内容の見直しをする必要があります。業務過多による体調不良や、仕事とプライベートとのバランスが崩れて仕事が辛いとなってからでは遅いのです。
そのようなケースの場合、
- 「社員同士で業務の再分配をする」
- 「業務の一部を外部に委託する」
といった対応を迅速に行っていきます。
そうすれば、エース社員や中堅社員にとっての問題解決となり、定着度を上げることに繋がるでしょう。
定期的に経営層との面談を設ける
経営方針に納得できないことが理由で退職するのを防ぐために、経営層との面談を定期的に設けることも大切です。
定期的な面談によって、お互いのビジョンの擦り合わせをすることで、双方が同じ方向を向ければ社員のモチベーションアップも期待できるでしょう。
キャリア形成の支援をする
社員が成長するための環境やチャンスを作り、キャリア形成を支援することも退職を未然に防ぐために有効な手段といえます。
自己成長にどん欲なエース社員や、立場的に成長することを望んでいる中堅社員にとって、スキルアップやチャレンジというやりがいを感じられる環境はベストといえます。
そういった環境を企業側がサポートできれば、会社への貢献が期待できるだけでなく、そもそも退職という考えを回避できるでしょう。
コミュニケーションを取る
エース社員や中堅社員の退職を防止するには、コミュニケーションを積極的に取る必要があります。
普段からコミュニケーションを取ることで、相談しやすい環境や関係性を築くことができ、何か問題が発生した時に早く解決できる可能性があります。
どんな社員でも「いつも仕事に対して積極的で助かっている」など、自分のことを気にかけてくれる言葉を上司からかけられれば嬉しくなるでしょう。
また、上司が部下のことをきちんと見ている(評価している)ということを分かりやすく伝えられます。
社員が孤独を抱えないためにも積極的なコミュニケーションは必要です。
評価制度を見直す
退職を未然に防ぐためには、評価制度の見直しも重要です。
実力と評価が見合っていなくて、評価がしっかりされていなければ社員のモチベーションは上がらないでしょう。評価の基準を明確にして、見える化することで社員は納得して仕事ができます。
まとめ
エース社員や中堅社員は企業にとって重要な存在です。そんなエース社員や中堅社員が退職するのは、企業側に原因がある場合が多く、手遅れとなる前に対策を講じることが重要です。
今一度、正しい業務量となっているのか・正しく評価できているのか・コミュニケーションは取れているのかなど様々な面で見直してみてはいかがでしょう。
この記事を参考に、エース社員や中堅社員が退職する予兆を見逃さず、退職予防の対策をしてみてください。
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