「老害」の対義語として、最近よく耳にするようになった「若害」をご存知でしょうか。まわりの大人から困惑・反感を招く言動が目立つ若者たちを指す言葉ですが、企業内でもそんな若害に頭を悩ませるケースが後を絶たないようです。
今回は、そんな「若害」の意味、若害が増えてきた背景などを解説します。また、実際にあった若害エピソード、このような人材を見抜くコツなどをまとめました。採用担当の人事の方は、ぜひチェックしてください。
若害とは
若害(じゃくがい)とは、まわりの大人から困惑・反感を招く言動が目立つ若者たちを指す言葉です。
周囲に迷惑をかける高齢者を意味する「老害」の対義語として、注目を集めています。社会的な「害悪」といったニュアンスを込めて呼ぶ表現であり、最近テレビなどメディアでも耳にする機会が増えてきました。
若害と呼ばれる若者が増える背景
なぜ、「若害」と呼ばれる若者たちが増えているでしょうか。その背景には、少子化問題や昨今の人材不足、そして若者世代が過ごしてきた社会的背景が関係しているといわれています。詳しく見ていきましょう。
人材不足で新人は「お客様扱い」
少子化などの影響を受けて、人材不足が叫ばれる昨今、ここ数年間にわたり「売り手市場」が続いています。そのため、若者たちは引く手あまたの状態です。就職が決まった企業で万が一うまくいかなくても、すぐに転職先が見つかるため、特定の企業にしがみつく必要はありません。四大卒の学歴を持った学生や、魅力的なスキル・経験を持ち合わせる学生は、どの企業に行ってもちやほやされ、「お客様扱い」をされている状態です。
また、これまで周囲の大人たちから愛情をたっぷり受けて育ってきた若者も多く、あまり自分自身を否定されたり、批判されたりする経験も少なかったといわれています。それゆえ、年配者と比べて失敗・挫折の経験も少なく、現代の若者は「打たれ弱い」といった印象を持たれる場合が多いようです。
社会不安が強い世代
これまで若者たちが育ってきた時代背景も、若者たちの特徴や人格形成に大きな影響を与えたと考えられます。
現代の若者たちは、物心がついてきた頃から「東日本大震災」や「コロナ感染症の流行」など、「いつ何が起こるか分からない時代」を生きてきました。そのため、社会不安が高まりやすく、安定志向が強い傾向があるといわれています。そのため、「いつ何があるか分からない」「1つの企業に依存できない」といった気持ちが強いといわれています。
これまで上の世代の人たちとの交流経験が乏しかったため、年配の方とのコミュニケーションが苦手な人が多いようです。一方で、同世代との情報交換は得意だといわれています。
そんな若者たちは、自分のキャリアに対する不安も強く、「自分が入社する企業は、(企業側に選ばれるのではなく)自分が決める」といった意識が強いともいえます。良い言い方をすれば、「数々の社会不安を乗り越えてきた世代」ともいえるかもしれません。
「若害」によるトラブル事例エピソード6つ
ここからは、企業で起きた若害によるトラブル事例を見ていきましょう。ここでは、実際にあった、新入社員・新人の若害エピソードを紹介します。
無断欠勤で「今日休みます」
新入社員が出社時間になっても会社に来ないので、連絡を入れたら「今日、(有給休暇を使って)休みます」の連絡がありました。そのため、有給休暇を取得する場合には営業日2日前までに申請してほしい旨を連絡すると、「そのようなルールは聞いていない」「昨日決めた休暇なので、2日前は難しい」と、そもそも有給申請が必要だということすら理解していませんでした。
言葉遣いが悪い・敬語が使えない
新入社員が、いきなりタメ口で話しかけてきたのでびっくりしました。敬語の使い方が分からないらしく、自分のことを「俺」と言っていたり、私のことを「お姉さん」と呼んできたりします。メールを入れたら、一言「そっか」と返ってきて、それにも驚きました。
注意すると泣いてしまう
入社早々、新入社員から「私の成長プランを教えてください」といわれました。業務は細かい指示書を見ないと進められず、必要以上の仕事は取り組まない姿勢です。「もう少し、主体性を持って取り組んでほしい」と伝えると、自分が責められていると感じたのかその場で泣いてしまい、とても困りました。
服装マナーを知らない
オンラインミーティングをしたときに、新人がパジャマ姿で登場したときには驚きました。出社時は、白いワイシャツの下に派手なTシャツを着ているようで、柄がくっきりと透けていました。当たり前だと思っていた社会人としてのルールも、「手取り足取り教えなければならないのか」と呆れてしまいました。
電話に出ないがメールは返す
入社してきた新人たちは、こちらからかけた電話にあまり出てくれません。何度か電話をかけても、1回も折り返しがなく、そのあとメールを送信してみるとすぐに返信がきます。
電話応対がひどいので、数年前から会社で「電話のかけ方研修」を取り入れました。台詞の書いてあるマニュアルを用意し、目の前で電話をかける実演をおこない、ようやくビジネスマナーとしての電話応対を覚えてくれました。
辞めるときは退職代行サービスを利用
入社してから3ヵ月経った新人は、職場にも慣れて、同期たちとも意気投合して働いていました。
しかし、ある日突然、人事宛てに退職代行サービス会社の担当者から電話あり、「(新人が)退職希望している」と連絡が入りました。退社理由など詳細は一切教えてくれず、そのまま退職してしまいました。理不尽に指導した記憶もなかったので、今でもモヤモヤしています。
採用前に「若害」を見抜くコツ4つ
企業側としては、入社後早々に退職されてしまったり、他の社員とトラブルを起こしたりする人材の採用は避けたいところです。しかし、履歴書の内容や一般的な面接をおこなうだけでは、このような人材を採用前に気づくのは難しいといわれています。
若害にあたるような人材を採用しないようにするためには、どのような対策が必要でしょうか。ここでは、若害を見抜くコツや防止策を4つご紹介しましょう。
価値観や考え方を聞く質問をする
入社してすぐにやめてしまう人の退職理由は、「イメージしていた会社・仕事内容と違った」といった理由が多くなっています。このような場合には、社風・価値観の不一致が原因になっています。そのため、面接ではその人の価値観や考え方を知るための質問を投げかけるように意識してみましょう。
特に、会社のなかで当たり前になっている勤務時間・残業時間・休日休暇の取得方法などは、ギャップを感じやすいポイントとなっています。他にも、仕事の進め方や決裁の取り方など、会社内のルールに戸惑う新入社員も少なくないようです。
面接時には、「どのような働き方をしたいか」「どのような職場で働きたいか」などを聞き、それを受けたうえで「どうして?」「なぜ?」と深掘りをして、その人の価値観や考え方を把握していきましょう。質問の回答から本人が「どう思っているのか」を知ることで、若害を見極めるきっかけになります。
職場見学・先輩社員と話してもらう
「思っていたのと違った」といったギャップを生まないためには、働く予定の場所、そこで働く人の様子を実際に見てもらうのもいいでしょう。職場環境や雰囲気は、言葉で説明するよりも、実際に見てもらった方が早いケースもあります。
また、さまざまな理由から実際の職場を見せることが難しい場合には、先輩社員と交流できる機会をつくり、企業風土を知ってもらいましょう。人事が面接をするのではなく、先輩社員と会話する機会を得ることで、在籍している社員の目線で「自社に合っている人」を見極めてもらうきっかけにもなります。
仕事内容や大変なことなどを伝えて反応を見る
新入社員が働いてすぐに退職したいと感じる理由のなかには、「思っていた仕事内容と違った」などの理由が挙げられることが多くなっています。「入社説明会などの案内で伝えているはずなのになぜ?」と思われる人事の方も少なくないでしょう。「実際に働いてみたら、辛くて辞めたくなった」とならないように、仕事内容の詳細や現実をきちんと事前説明することが大切です。
事前にその仕事の大変なことを聞いておけば、より仕事内容をイメージできて、入社後に「そんなはずじゃなかった」と思うようなギャップは生まれにくいでしょう。
オヤカク対策をする
若害の原因は、本人だけでなく、親が原因となっている場合もしばしば見られます。新入社員から「社則で気になる点があると親が言っていたので、教えてください」と質問された、という実例もあるそうです。
親からの反対で早期退職してしまうケースなどを防ぐためには、親に入社の意志や内定承諾の確認を取る「オヤカク(親確)」対策が有効です。オヤカク対策としては、子供が入社する企業を理解し、安心感を持ってもらうことが一番です。そこで、さまざまな対策をおこなう企業が増えています。ここでは、オヤカク対策の一部をご紹介しましょう。
- 親宛に会社案内などパンフレット、IR情報の送付
- 親向けの採用ページを開設する
- 親から入社の同意書を交わす
- 親向けの企業訪問イベントなどを開催する
- 内定者懇親会などに親も参加する
上記のような対策を講じることで、親が安心して子供を入社させることにつながり、入社後の早期退職やトラブルなどを回避できるひとつの手立てとなるでしょう。
採用面接で見極めたい【資料DL】
■惹きつける面接と見極める面接
■面接の質問例(新卒・中途)
■オンライン面接での見極めポイント
まとめ
若害とは何か、他社でも起きている若害のトラブル事例、若害と呼ばれてしまうような人材を採用しないコツなどをご紹介しました。
時間をかけて採用選考した人材が、入社してすぐ辞めてしまったり、現場で「若害」といわれる様子があったりすると、人事としては非常に心苦しいものです。今回紹介したポイントを参考にして、できる限り入社前の段階で対策を講じていきましょう。
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