面接フィードバックは、企業への志望度向上を図るため効率的な手段の一つとされています。
近年、学生や経験者など候補者に対する企業の魅力付け、ミスマッチ防止などの観点から面接フィードバックを実施する企業が多い印象です。
そこで、今回は、面接フィードバックの目的や種類、メリットなどについて具体例を交えながら解説します。「どのような方法での実施がいいのか」など、疑問を持つ採用担当者の方は、チェックしてみてください。
面接フィードバックとは
面接フィードバックとは、企業側が求職者に対して面接の内容をフィードバックすることであり、良かった点や改善すべき点などを伝えます。
基本的に面接フィードバックは、合格した応募者に対して次の選考ステップに進むために行われ、フィードバックの方法は各企業によって異なります。
面接フィードバックの種類
面接フィードバックにはいくつか種類があります。以下で詳しく説明していきましょう。
ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックとは、候補者の良い点や評価した部分を具体的に伝える方法です。
褒めるなど前向きな言葉を中心に進められ、否定的な言葉や言い回しは避ける傾向にあります。
そのため、候補者の自己肯定感を上げることにつながり、評価を受ける候補者のモチベーションを高めたいと考える場合に有効な方法です。
例えば、「プレゼンテーションのスキルが高く、論理的に話せていました。」と、候補者が入社に向けて前向きになれる言葉を選んで伝えるようにします。
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ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックとは、候補者の改善点や課題を伝える方法です。
候補者に今後の改善や成長に役立ててもらうことを目的に行いますが、ネガティブな指摘は候補者にとって厳しい内容にもなりえます。
そのため、フィードバックの際の言葉選びには注意が必要であり、改善点や課題を一方的に伝えるのでは意味がなくなってしまいます。
例えば、「回答が簡潔でない部分がありました。次回は結論を先に伝えるよう意識してみてください。」のように、改善案をプラスで伝えることが重要です。
混合型フィードバック(サンドイッチ方式)
混合型フィードバックとは、ポジティブな内容・改善点・ポジティブな内容の順番で伝える方法です。サンドイッチ方式とも呼ばれ、パン・具・パンの順で作られるサンドイッチに由来しています。
例えば、「話し方が丁寧で安心感があります。ただ、時折声が小さいことがあったので、相手に伝えることを意識しましょう。
でも誠実な印象が強く伝わりました。」と伝えます。このように、改善点をポジティブな内容で挟むことで、候補者が受け取りやすくなり、さらには成長を促す効果も上がるでしょう。
逆質問へのフィードバック
面接中に候補者が逆質問で自分の評価や改善点を訪ねるケースへの対応です。
例えば、「選考の次のステップに進むうえで問題はありません。ただ、業界知識を深めるとさらに良い印象になります。」というように、具体的かつ正確に答えることが大切です。
ただし、フィードバックの内容は合否に関わる場合もあるため、話せない場合は正直にその旨を伝えても問題ないでしょう。
企業基準に基づくフィードバック
企業の評価基準を基に候補者を位置づけることで、適性を含めたフィードバックを伝える方法です。
例えば、「弊社には『チーム協調性』という評価基準があり、その観点からみて高い適性を感じました。」と伝えます。候補者の誰もが分かりやすく、納得しやすい基準を置くことが重要でしょう。
面接フィードバックの目的とメリット
ここからは、面接フィードバックの目的とメリットについて解説します。
企業目線のメリット
まずは、企業目線のメリットについて解説します。
候補者に企業の魅力を伝えられる
まず、企業が面接フィードバックを行うメリットは、候補者に企業の魅力を伝えられる点が大きいでしょう。
面接フィードバックで候補者の人柄や能力など、評価した点を伝えることで「この会社は自分のことを真剣に見てくれる」という好印象を与えられます。
面接フィードバックにより、候補者の満足度が上がれば企業のイメージアップにもつながります。
良い候補者を採用する確率が上がる
誠実かつ熱心な面接フィードバックは、候補者に対して良い印象を与えることができます。そのため、優秀な人材を惹きつけるのに効果的です。
また、候補者の良い点や改善点などを伝えて成長をサポートすることで志望度がアップすれば、良い候補者を採用できる確率も上がるでしょう。
採用ミスマッチの防止
面接フィードバックは、自社の評価基準を伝えられます。求められる能力や適性を知ることで、候補者は自分と企業がマッチしているのか判断することができるでしょう。
候補者目線のメリット
続いて、面接フィードバックを実施する候補者目線のメリットについて解説します。
自己成長につながる
面接フィードバックにより、候補者は自身の能力やスキルを客観的に評価してもらえます。そうすることで、具体的な自身の改善点を把握でき、スキルアップなど自己成長につなげられるでしょう。
企業の評価基準を知れる
企業が面接フィードバックを実施することで、候補者は企業がどのような基準で選考を進めているのかを理解し知ることができます。
企業の文化や価値観について候補者が理解することにもつながり、自身が企業に合うかどうか判断する材料にもなります。
モチベーションの向上
面接フィードバックは、候補者にとってポジティブな要素も多くなるため、自身の強みや良い面を認識でき評価してもらえたと感じます。
そうすることで、候補者の自己肯定感を高められ、仕事に対するモチベーション向上にもつながります。
面接フィードバックの注意点(デメリット)
ここでは、面接フィードバックを行う際の注意点について解説します。
面接官の負担が増加する
面接フィードバックを導入することで、面接官の負担が増加する点には注意が必要です。
面接官は限られた時間の中で候補者の良い点や改善点を把握し、分かりやすく的確に伝える能力が求められます。
適切なフィードバックを行うには、トレーニングのための労力や相手の感情に配慮した伝え方をする精神的な負担など、通常の面接とは異なるスキルが必要になるのです。
採用基準が漏洩するリスク
面接フィードバックを実施することで、企業の採用基準が他の候補者や外部に漏洩するリスクが高まる点に注意する必要があります。
評価基準が明らかになれば、候補者はその内容にあわせて自己PRを調整することができます。すると、面接官は候補者の本当の能力や適正の見極めが難しくなってしまうでしょう。
不適切なフィードバックが逆効果になる
不適切なフィードバックは、候補者の企業に対する認識にズレが生じるだけでなく、企業の評価や志望度を下げることにもつながります。
そのため面接フィードバックには、面接官の深い洞察力と高いコミュニケーション能力が必須といえます。
面接フィードバックの実施タイミング
面接フィードバックは、注意する点を押さえておけば企業と候補者の両方にメリットがあります。そんな面接フィードバックの実施タイミングについて解説します。
面接後すぐに実施する(候補者に合否を伝える際)
企業によっては、面接後すぐに実施するケースもあれば、後日面接担当者から電話などで行われることもあります。
次の選考に進む前(合格者向け)
面接フィードバックは、合格者向けに選考合格通知のあと1~2日程度おいてから行われる場合があります。
日をあけてフィードバックを行うことで、合格通知とは別の重要な情報という意味で伝えられます。
最終選考後(採用・不採用どちらの場合も)
面接フィードバックは通常、入社に向けて次のステップに進む合格者に提供されます。ただし、企業によっては不採用の場合にも実施するケースがあります。
新卒採用などの場合、不合格者が今後の仕事のパートナーや顧客になりえるため、将来を見据えて面接フィードバックを実施する必要もあるでしょう。
候補者からフィードバックを求められたとき
面接フィードバックは、候補者から求められたときに実施するケースもあります。このケースの場合、企業は伝えた改善点などを候補者がどう受け止めるかを観察することが大切です。
面接フィードバックで伝えるべき内容と具体例
ここでは、面接フィードバックで伝えるべき内容と具体例について解説します。
評価したポイント(良かった点)
面接フィードバックでは、候補者の強みやスキル、印象に残った行動など評価した点を具体的に伝えることが大切です。
例えば、「プレゼンが非常に論理的であり、相手に分かりやすく伝える能力が優れています。」と、ポイントをしぼると伝わりやすくなります。
改善が必要なポイント(課題)
面接フィードバックでは、候補者の成長のために必要な改善点を伝える場合があります。その際も良かった点を伝えるのと同様に、改善するための具体的な方法をあわせて伝えることが重要です。
例えば、「志望動機がやや漠然としていました。弊社の仕事の内容をもう少し詳しく調べ、内容を詰めてみてください。より一層具体的な志望動機になると思います。」と、プラスで改善策を用意しておきましょう。
企業の評価基準に照らした適性のフィードバック
企業の評価基準や採用基準に基づいて、候補者がどの部分が適性の対象となるのか説明します。
例えば、「当社ではチームワークを重視しており、あなたの協調性の高さは業務でも活かしてもらえると感じました。」のように、企業が重視している適性に候補者が適合していると伝えます。
次の選考やキャリアに向けたアドバイス
面接フィードバックでは、次の選考やキャリアに役立つ具体的なアドバイスも伝えます。
例えば、「業界全体のトレンドをさらに深掘りしておくと、面接時の回答により説得力が増します。」のように、現在のスキルや強みにプラスすることで成長につながる内容が良いでしょう。
効果的な面接フィードバックを実現するコツ
ここでは、面接フィードバックを効果的なものにするためのコツについて解説します。
ポジティブフィードバックで好感度を高めるコツ
ポジティブフィードバックによって好感度を高めるには、評価した候補者の能力やスキルが企業業務の何に活かせるのか伝えることが大切です。
1人ずつに丁寧に対応する姿勢が自社への好感に繋がり、候補者は自身の持つスキルが役に立つことをイメージしやすくなり働く意欲を高められます。
ネガティブフィードバックは「具体的な改善案」とセットで
ネガティブフィードバックは、具体的な改善案とセットで伝えることが大切です。
前向きな内容とは違い、ネガティブな内容の指摘は候補者に嫌な印象を与えかねません。具体的な改善案をプラスし、候補者と真摯に向き合っている姿勢を示すことを心がけましょう。
面接評価シートの活用術
面接フィードバックの実施は、企業にとって面接官の負担増加などが考えられます。
面接官の工数増加を軽減するため、面接評価シートの活用がおすすめです。
面接の評価基準や項目を明確化して共有できるため、フィードバック内容の言語化に役立ち、評価の一貫性も確保できます。
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面接官が知るべき「伝え方のマナー」
面接フィードバックは、候補者への伝え方が非常に重要です。ここでは、伝え方のマナーについて解説します。
面接フィードバックで伝えるべき内容
面接フィードバックでは、「この会社で働きたい」といった志望度を高めてもらうために実施するケースがほとんどです。そのため、ポジティブな表現で伝えることが大切です。
候補者を尊重する伝え方とは
面接フィードバックを実施するにあたり、候補者を尊重する姿勢を忘れてはいけません。ネガティブな内容を伝える場合、候補者自身が否定されたと感じることのないよう細心の注意を払う必要があります。
面接官の言葉で伝えることの重要性
面接フィードバックでは、面接官が自身の言葉で伝えることが重要です。「一般的な意見として」という言い回しでは、面接官がフィードバックをするうえで責任を持っていないように感じる場合もあります。
候補者に誠意のある態度を示すためにも「私はこう感じています」と伝えることが大切です。
まとめ
面接フィードバックの実施は、自社の魅力付けや採用ミスマッチ防止などメリットがあります。その一方で、面接官の負担増加や候補者への伝え方など注意するポイントも発生します。
評価シートの活用など、より効果的に面接フィードバックを行える環境を整え、採用活動の質を向上させることに役立てましょう。
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