ナビサイトといえば、かつては新卒採用の「王道」とも言える存在でした。マイナビ、リクナビなどの大手ナビサイトを使えば、数多くの学生に企業情報を一斉に届けられ、多くの応募者を集めることができました。しかし、近年では「ナビサイト離れ」という言葉が広まり、従来の採用手法では応募数が伸び悩む企業も増えています。
本章では、ナビサイトの基本的な役割と、なぜ「ナビサイト離れ」が進んでいるのか、そして今の就活市場がどう変化しているのかを詳しく解説します。
ナビサイトってそもそもどんな役割?
ナビサイトは、企業と学生をつなぐ大規模な求人情報プラットフォームです。主に以下のような役割を担っています。
- 求人情報の一括掲載:企業は自社の概要や募集要項、社風などを掲載でき、就活生は複数企業の情報を一度に比較できます。
- エントリー受付・管理機能:学生はナビサイトから直接エントリーでき、企業側は応募者情報を一元管理可能です。
- 説明会・インターンシップの告知:採用イベントの情報を広く拡散できるため、母集団形成に有効です。
- 企業ブランディング:企業紹介ページを活用して、自社の魅力をアピールできます。
特にマイナビやリクナビは新卒採用市場で圧倒的な認知度を誇り、多くの企業が「とりあえず掲載する」媒体として長年利用してきました。
しかし、その一方で、近年はナビサイトに依存した採用手法に限界を感じる企業も増加しています。次のセクションでは、実際にナビサイトの利用状況にどのような変化が起きているのかを見ていきます。
学生のナビサイト利用率の現状
かつては「就活=ナビサイト」と言われるほど、ほぼ全ての学生がマイナビやリクナビを利用していました。しかし、近年ではナビサイトの利用率が減少傾向にあります。
登録はするけど、積極的には使わない?
多くの学生はナビサイトに「とりあえず登録」していますが、実際には頻繁に活用しないケースが増えています。例えば、競合サイトの調査によれば、登録しているのに実際に利用していない学生が全体の30〜40%を占めるというデータもあります。
学生は「より自分に合った情報」を求めている
ナビサイトでは多くの求人情報が一括で見られる反面、「情報が多すぎて選べない」「似たような企業ばかり」と感じる学生が増加。その結果、SNSや企業の公式サイト、ダイレクトリクルーティングサービスなど、より自分にマッチする情報源に流れる傾向が強まっています。
「ナビサイトだけじゃ足りない」が現代の就活生の本音
今の就活生は、ナビサイトを「数ある情報源のひとつ」として活用しているにすぎません。SNSや口コミサイト、YouTubeの企業紹介動画など、多様なチャネルを駆使して企業研究を行っています。
なぜ就活生はナビサイトを使わなくなったのか?
かつては就活生のほとんどが「ナビサイト」から情報を得ていましたが、近年ではその利用率が減少し、「ナビサイト離れ」が進んでいます。では、なぜ就活生はナビサイトを積極的に使わなくなったのでしょうか?
その背景には、学生の情報収集行動の変化や、ナビサイト自体の課題が大きく影響しています。この章では、ナビサイト離れが進む4つの理由を詳しく解説します。
1、 情報収集先が多様化した
就活生が企業情報を集める手段は、もはやナビサイトだけに限られていません。SNSや動画コンテンツ、企業のオウンドメディアなど、情報収集の選択肢が増えたことで、ナビサイト一強の時代は終わりを迎えつつあります。
特に、X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなどのSNSでは、実際に働く社員の投稿や企業文化が垣間見える情報が豊富で、学生は企業の「リアルな姿」を積極的に探しています。
さらに、OpenWorkやONE CAREERなどの就活専用掲示板や口コミサイトでは、選考の流れや内定者の体験談など、ナビサイトには掲載されていない具体的な情報を得ることができ、企業選びの参考にされています。
2、情報過多で「選べない」問題
ナビサイトには数万社もの求人情報が掲載されており、学生はその中から自分に合った企業を探さなければなりません。しかし、この膨大な情報量が逆に学生を迷わせているのが実情です。掲載されている企業情報はフォーマットが統一されているため、どの企業も似たような印象を与えてしまい、学生は企業ごとの特徴を見つけにくくなっています。その結果、「結局どの企業も同じに見える」と感じ、企業選びに消極的になるケースが増えています。
さらに、検索結果では大手企業が上位に表示されやすく、中小企業やベンチャー企業は目立ちにくいという課題もあります。これにより、学生が自分に合った企業に出会えないまま、ナビサイト以外の情報源を頼る傾向が強まっています。
学生の本音としては、「結局、目立つ企業ばかり出てきて、自分に合う企業が見つけられない…」という声が多く聞かれ、これがナビサイト離れを加速させる要因の一つとなっています。
3、 個人情報流出などの信頼問題
ナビサイト離れが進む背景には、個人情報の取り扱いに対する不安も大きく影響しています。特に過去に発生した個人情報流出問題は、学生の警戒心を強める大きな要因となりました。一部の大手ナビサイトでは、学生の登録情報が漏洩する事件が発生し、「自分の個人情報がどう扱われているのか分からない」と不信感を抱く学生が増加。その結果、ナビサイトへの登録自体を避ける動きも見られるようになりました。
また、企業から届くスカウトメールに対しても不満を抱く学生が少なくありません。ナビサイトではスカウト機能を通じて多くの企業から連絡が来ますが、その多くがテンプレート化された内容であるため、「興味のない企業からの連絡が多すぎる」「迷惑メールのようだ」といったネガティブな声が目立っています。実際に、「登録した途端、大量のメールが届いてうんざりした…」と感じる学生も少なくないのが現状です。
このように、ナビサイトの利便性がかえって裏目に出てしまい、学生の信頼を損なう結果となっているのです。
4、学生の「企業選び」の価値観が変化
「大企業=安定」という考え方が薄れつつある中、近年では中小企業やベンチャー企業を志望する学生が増えています。彼らは企業規模よりも、企業理念や社会貢献性、働きやすさといった「企業の内側」に価値を見出しているのです。
しかし、従来型のナビサイトではこうした情報が十分に伝わりにくく、学生は自分に合った企業を見つけるために、SNSや口コミサイトなどナビサイト以外の情報源に目を向けるようになっています。
企業がナビサイトを使い続ける理由
「ナビサイト離れ」が進む中でも、多くの企業が依然としてナビサイトを採用活動の主要なチャネルとして活用しています。それは、ナビサイトならではの効率性や広範なリーチ力に強みがあるからです。
ここでは、企業がナビサイトを使い続ける理由を具体的に解説します。
多くの学生に一度に情報を届けられる強み
ナビサイトの最大のメリットは、圧倒的な集客力にあります。マイナビやリクナビといった大手ナビサイトには、毎年多くの就活生が登録しており、企業は短期間で多くの学生に情報を届けることが可能です。
特に以下の点が企業にとって魅力的であり、ナビサイトは「まず多くの学生に自社を知ってもらう」という目的において、今でも有効な手段です。
-
全国の学生に一斉に情報発信できる
→ 地方の学生や遠方の就活生にもリーチでき、母集団の幅を広げられる。 -
検索機能や条件設定で、求める学生に見つけてもらいやすい
→ 業種・職種・勤務地などで絞り込みを行う学生にアプローチ可能。 -
認知度が高く、エントリー数が集まりやすい
→ 知名度の低い企業でも、ナビサイトに掲載することで一定の注目を集められる。
ページ作成や応募管理が効率的にできる
ナビサイトには、企業側が使いやすい管理機能が豊富に備わっているのも大きな利点です。
-
テンプレートに沿って簡単に企業ページを作成できる
→ 専門知識がなくても見やすいページを作成でき、短期間で公開可能。 -
エントリー情報を一元管理できる
→ 学生の基本情報、志望動機、選考ステータスなどをサイト内で一括管理でき、選考状況の把握がスムーズ。 -
メール配信やリマインド機能が充実
→ 説明会案内や面接日のリマインドなどを自動で送信でき、業務負担を軽減。
特に中小企業や採用専任の担当者がいない企業にとっては、ナビサイトの管理機能を活用することで、限られたリソースでも効率的な採用活動が実現できます。
スケジュール調整などの事務作業を代行してもらえる
採用活動には、面接の日程調整や説明会の案内、応募者対応など、多くの事務作業が発生します。ナビサイトでは、こうした煩雑な作業の一部を代行してもらえるのも大きな魅力です。
-
面接や説明会のスケジュール管理機能
→ 学生とのやり取りをサイト上で完結でき、日程調整の手間を削減。 -
選考ステータスの自動更新
→ 書類選考の合否通知や次回選考の案内などをワンクリックで対応可能。 -
問い合わせ対応のサポート
→ 一部ナビサイトでは、学生からのよくある質問に自動対応する機能も搭載。
このように、事務的な業務を効率化できることで、企業の人事担当者は選考の質向上や採用戦略の立案など、より重要な業務に時間を割けるようになります。
就活生との接点が増える機会も確保できる
ナビサイトは単なる求人掲載の場ではなく、学生との接点を増やす場としても機能しています。企業と学生の接点を増やすことは、エントリー数の向上だけでなく、学生の企業理解を深め、ミスマッチを減らす効果も期待できます。
これらの機能を活用することで、企業は単なる求人掲載にとどまらず、学生との関係構築を強化することができます。
-
企業説明会や合同説明会の告知
→ ナビサイト主催のイベントやウェビナーに参加でき、多くの学生と直接接点を持てる。 -
インターンシップの募集や短期プログラムの告知
→ 学生が企業を深く知る機会を提供し、早期から優秀な人材と関係を築ける。 -
スカウト機能を活用して積極的にアプローチ
→ 興味を持ちそうな学生に直接連絡でき、受け身ではない採用活動が可能。
ナビサイトに頼らなくても学生を集める手法
「ナビサイト離れ」が進む今、従来の求人媒体に依存しない新たな採用チャネルを模索する企業が増えています。特に、Z世代の就活生はSNSやダイレクトリクルーティングなど、企業と直接つながれる手法を好む傾向があります。
ここでは、ナビサイトに頼らずとも優秀な人材と出会える、これからの採用チャネルを5つご紹介します。
ダイレクトリクルーティング
企業自らが、学生を見つけにいく採用手法となります。求職者からしても自分をアピールする場所であり、企業からしても欲しいターゲットの人財を獲得出来る手段といえます。ですが、ただ単に運用したからといって簡単に効果が得られるものはありません。
- 欲しい人財のターゲットをしっかり定義する
- ターゲットがどういう情報を知りたいのかを細かく分析する
活用する(活用していきたい)場合は、この2点をしっかり準備する必要があります。そして、企業の魅力付や理解を深めるためのコンテンツも非常に重要な要素となります。現に、キミスカやOfferBoxでは高い反応率を叩き出し、メール離れの概念を覆しております!
オウンドメディアリクルーティング
オウンドメディアリクルーティングは、企業が自社の採用サイトやブログ、YouTubeなどを活用し、独自の情報発信を行う採用手法です。ナビサイトのような制約がないため、企業の魅力や社風を自由に伝えられるのが特徴です。
社員インタビューや企業のミッション紹介、職場の雰囲気を伝える動画などを発信することで、共感を生み出し、企業理解の深い応募者を集めやすくなります。広告費を抑えつつ長期的な採用効果も期待でき、企業の想いや文化を発信したい企業に最適な手法です。
SNS採用(ソーシャルリクルーティング)
Z世代の就活生にとって、SNSは企業情報を集める重要なツールとなっています。企業側もX(旧Twitter)、Instagram、TikTokなどを活用し、学生と気軽に接点を持てるようになりました。SNS採用の魅力は、企業のカルチャーや雰囲気を“等身大”で伝えられる点です。
企業の雰囲気や人柄をダイレクトに伝えられることで、学生との接点が増え、「偶然の出会い」からエントリーにつながるケースも多く見られます。Z世代の心をつかむには、“共感”と“親近感”が重要なカギです。
新卒紹介サービスの活用
エージェントサービスやスカウト型サイトを活用することで、企業は求める人材とのマッチング精度を高めることができます。特に、自社に適した人材を厳選して採用したい場合に効果的です。
エージェントサービスでは、採用のプロが企業と学生の間に入り、ミスマッチを防ぎます。求職者の適性や志向性を考慮して候補者を紹介するため、内定率が高まりやすいのも特徴です。「質の高い候補者と効率的に出会いたい」「選考の歩留まりを改善したい」と考える企業に最適な手法です。
ナビサイト離れに対応していくための施策
ここでは、ナビサイトに頼らずとも効果的な採用ができるおすすめの施策について紹介していきます。
自社採用サイトの強化で「応募したくなる企業」へ
ナビサイトに依存せず、学生や求職者に直接アプローチするためには、自社採用サイトの強化が欠かせません。自社の魅力や働く環境をリアルに伝えることで、「この会社で働きたい」と感じてもらえる応募者を増やせます。
特に、以下のポイントを意識してサイトを充実させることが重要です。
- 企業の理念やビジョン、社風をしっかり発信
- 社員インタビューや1日の業務紹介など、リアルな声を掲載
- 写真や動画で職場の雰囲気を視覚的に伝える
- エントリーフォームを簡潔にし、応募ハードルを下げる
近年では、動画コンテンツやブログ形式での社員紹介などを取り入れ、求職者との距離を縮める企業も増えています。自社サイトを通じて企業の世界観や価値観を伝えることで、ナビサイトでは埋もれてしまう中小企業やベンチャーでも魅力をしっかりアピールできます。
スカウト型サイト・ダイレクトリクルーティング活用法
前述している通り、「待ち」の採用ではなく、企業から積極的にアプローチできるのがスカウト型サイトやダイレクトリクルーティングです。ナビサイト離れが進む今、「自分に合った企業から直接声をかけられたい」と考える学生も増えており、特にZ世代の就活生との相性が良い採用手法です。
代表的なスカウト型サービス:
- OfferBox:学生が登録したプロフィールを企業が閲覧し、スカウトを送信できる。
- キミスカ:自己PRや適性検査を基に企業がターゲット層に直接アプローチ。
このようなサービスを活用することで、求める人物像にピンポイントでアプローチでき、応募者とのマッチング精度が向上します。また、スカウトメールには個別性を持たせ、学生の興味を引く内容にすることが重要です。
活用ポイント:
- ターゲットとなる人物像を明確に設定
- スカウトメールはテンプレートではなく、個別対応で魅力を伝える
- 学生の強みや価値観に共感した内容を盛り込む
積極的なアプローチを行うことで、受け身の採用では出会えない優秀な人材とつながるチャンスが広がります。
採用管理ツールで業務効率化と応募者データの一元管理
採用チャネルが増えると、応募者情報の管理や選考の進捗管理が煩雑になりがちです。そこで役立つのが、採用管理ツール(ATS:Applicant Tracking System)です。これらのツールを導入することで、応募から内定までのフローを一元管理でき、採用業務の大幅な効率化が実現できます。
採用管理ツールの主な機能:
- 応募者情報の一元管理(履歴書・職務経歴書・評価など)
- 面接日程の自動調整機能
- エントリー状況や選考進捗の可視化
- 分析機能で採用活動の課題を把握
採用代行(RPO)サービスで工数を大幅削減
「ナビサイトに頼らない採用をしたいけれど、リソースが足りない」「採用活動に割ける時間や人手がない」——そんな企業に最適なのが、**採用代行(RPO:Recruitment Process Outsourcing)**サービスです。
採用代行では、求人票の作成、候補者の集客、書類選考、面接日程の調整など、採用に関わるさまざまな業務を外部パートナーに委託できます。これにより、企業側は負担の大きい事務作業から解放され、より戦略的な採用計画の立案に集中できるようになります。
採用代行サービスの活用例:
- 社内リソースが不足している中小企業
- 採用活動の最適化や工数削減を目的とした導入
- 短期間での大量採用や急な人員補充が必要な場合
採用のプロが関わることで、ミスマッチを防ぎつつ、効率的に優秀な人材を確保できるのも大きなメリットです。
まとめ
近年、就活生の「ナビサイト離れ」が進み、従来の採用手法だけでは優秀な人材の確保が難しくなっています。SNSや口コミサイト、ダイレクトリクルーティングなど、情報収集手段が多様化したことで、企業側も柔軟な採用戦略が求められる時代です。
一方で、ナビサイトには依然として集客力や応募管理のしやすさといった利点があり、完全に手放す必要はありません。しかし、競争が激化する中で、自社採用サイトの強化やSNS活用、ダイレクトリクルーティングといった新しい採用チャネルの活用が不可欠です。
また、採用手法が複雑化する中、特にマンパワー不足の企業では、リソース不足が大きな課題となります。そんなときこそ、採用代行(RPO)サービスの活用を検討してみてください。
採用のプロに業務を委託することで、企業の負担を軽減しつつ、効率的に優秀な人材を確保することが可能です。時代の流れに合わせた柔軟な採用戦略を構築し、自社に合った最適な人材と出会うチャンスを広げていきましょう。