採用候補者の経歴などを入社前に確認するバックグラウンドチェックをご存じですか?
今回は、バックグラウンドチェックが実施されている背景や、調査を行う目的、実際の調査項目などをご紹介します。
リファレンスチェックとの違いや、実施する際の注意点もあわせて説明するので、参考にしてみてください。
バックグラウンドチェックとは
バックグラウンドチェックとは、採用候補者の経歴や前職状況などを事前に確認する調査です。
採用候補者の経歴詐称を防いだり、トラブル防止をしたりする観点で実施されています。
リファレンスチェックとの違い
バックグラウンドチェックと類似した調査に、リファレンスチェックがあります。
両者を同じものと認識している方も多いですが、リファレンスチェックは候補者の前職の同僚や上司などに聞き取り調査をするもので、前職での活躍ぶりや性格、人となりや評価など、プラス面・マイナス面ともにリサーチをします。
一方、バックグラウンドチェックは正確な経歴を確認するための質問、調査がメインとなる点で異なります。
画像引用:リファレンスチェックツール「Parame Recruit」記事より
バックグラウンドチェックを行う目的
バックグラウンドチェックを行う目的を確認してみましょう。
経歴詐欺を防ぎ、公平な採用を行う
候補者が提出する履歴書、職務経歴書の内容は基本的に自己申告となるため、本来は真偽が確認できません。しかし、万が一経歴詐称をしていたり、犯罪歴があったり、過去の職場でトラブルを起こしていたりした場合、採用の公平性が失われてしまいます。
トラブルリスクを避ける
もし候補者に大きな犯罪歴があったり、病や障害を抱えていたりしたことを知らずに採用してしまうと、トラブルが起きる可能性があります。犯罪者や病を抱えていることが悪いのではなく、本来は正しく伝えなくてはならない情報を共有しなかった結果、業務や企業そのものに迷惑をかけられてはたまりません。
面接では見破れない問題を発見できる
バックグラウンドチェック専門機関の株式会社企業サービスの調査によると、最終面接に残った応募者でも約32%が何らかの問題を抱えていたそうです。
画像引用:株式会社企業サービス
その中でも最も多かったのが「経歴詐称」で、金銭トラブルや性格面(対人関係、責任性など)、能力不足、メンタル面と続きます。
トラブルが大きくなり、最悪の場合、企業利益に多大な損失をもたらすなどのリスクを避けるためにも、バックグラウンドチェックを実施するのです。
バックグラウンドチェックの効果・メリット
バックグラウンドチェックを実施することで、企業にはどのようなメリットがあるのか確認していきましょう。
企業を守ることができる
先ほどもご紹介した通り、候補者が過去の経歴を隠すなどの行為で企業が被害を受ける可能性があります。
アメリカでは、バックグラウンドチェック未実施によって企業が損害を受けた場合、候補者ではなくて企業が責任をとるという考えもあります。
この考え方を受けて、日本でもバックグラウンドチェックを行う責任は企業にあり、バックグラウンドチェックによって企業を守れるという見方があります。
バックグラウンドチェックの調査項目内容
続いて、バックグラウンドチェックの調査項目をご紹介します。
過去の経歴
経歴には、学校の経歴や資格取得歴、前職までの勤務歴などが挙げられます。
確認方法としては、卒業証明書や資格証明書、源泉徴収票などの提出があります。前職に電話連絡を行うなどの調査をする場合もあります。前職の同僚や上司などに調査することをリファレンスチェックとして、単独で実施するケースも見られます。
登記情報
法務局の登記簿で、不動産情報が閲覧できます。不動産などの資産が差し押さえられていないか確認する場合があります。
SNS、インターネット情報
近年では、SNSに関するトラブルが増えているため、多くの企業ではSNSやインターネット検索によるバックグラウンドチェックを実施しています。複数のSNSアカウントを確認し、どういった発言をしているか、どのような交流関係を持っているかなどを調査します。
民事訴訟歴
新聞や各種メディアの判決記録などの情報から、民事訴訟の有無などを確認する場合があります。調査会社に依頼するケースが多いです。
犯罪歴
犯罪歴も民事訴訟と同様に調べるのが困難なため、調査会社への依頼や、インターネット情報などから調査を実施します。
破産履歴
自己破産の履歴がないか確認をします。
反社情報
反社チェックは多くの雇用契約、民間の契約で確認項目として盛り込まれています。実際にどこまで調査するかは、企業によって幅があります。
その他
候補者の住むエリアの近隣住民などに聞き込み調査を行って、怪しい行動はないか確認する場合もあります。
バックグラウンドチェックの流れ
ここからはバックグラウンドチェックを実施する流れを見ていきましょう。自社で行う場合と、外部委託の場合にわけて解説します。
自社で行う場合
1、同意を得る
自社で行う場合、まずは候補者にバックグラウンドチェックを実施することの同意を得る必要があります。企業が勝手に調査を進めてしまうと、日本では個人情報保護法に触れてしまうため注意しましょう。
2、決めた項目を一つずつ調査
本人の同意を得たら、社内で決めた項目を一つずつ調査していきます。先の章でご紹介した調査項目によっては、独自に調査することが難しい場合があります。適宜、外部の調査会社やバックグラウンドチェック専用のサービスなどを活用して進めていきましょう。
3、調査内容をまとめる
調査が一通り終わったら、調査内容をまとめます。
この際、候補者から預かった卒業証明書や源泉徴収票などの書類の保存方法は、それぞれ適切に管理してください。まとめたレポートをもとに、採用に影響するものはあるか社内で確認をしましょう。
外部に委託する場合
基本的な流れは、自社で実施するバックグラウンドチェックと大差はありません。
調査前に、候補者本人にバックグラウンドチェックを行う旨を共有し、同意を得ることは必須となります。依頼会社によって調査項目や調査期間が異なるため、各サービスの詳細情報はご自身で確認してください。
外部に依頼する際の費用
なお、外部委託する際の費用は、調査項目の種類や項目数により前後します。簡単なものでは3万~5万円、場合によっては10万円ほどかかるケースもあります。自社の採用人数に照らし合わせて、外注可否を検討するとよいでしょう。
導入時の注意点
バックグラウンドチェックを行うメリットや実施方法は理解してもらえたかと思いますが、実施する際にはどのようなことに注意して行ったら良いのでしょうか?
内定取り消しのタイミングに注意
バックグラウンドチェックを行う際の注意点は、内定取り消しのタイミングです。
バックグラウンドチェックを行った後、内定を取り消すことは難しいため、内定の判断をする前に調査を実施すべきと言えます。万が一、候補者の経歴詐欺などの嘘が発見された場合は内定取り消しが可能ですが、内定取り消しはトラブルのもとになります。
内定前にバックグラウンドチェックを、本人同意のもとで行うよう注意しましょう。
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すべての人材に「バックグラウンドチェック」を行うのか
もう一点、注意点としては、「本当にバックグラウンドチェックを行うべきかどうか」という点です。
バックグラウンドチェックを外部委託する際に一人あたり3万円かかるとして、自社の採用人数とあわせて費用算出をしてみましょう。もともと採用予算が少なく、採用媒体やスカウトサービスなどに費用を充てるだけで精一杯の企業は、無理にバックグラウンドチェックを導入しなくても良いケースもあります。
バックグラウンドチェックを行う対象を、経営陣や部長職など一部のポジションに限定する企業もいるため、実施範囲は慎重に検討してみてください。
まとめ
今回は、候補者の経歴や信頼情報などを入社前に調査する、バックグラウンドチェックについてご紹介しました。
バックグラウンドチェックは、アメリカや外資系企業などで一般的に行われており、近年実施を検討する企業も増えています。とくにSNSなどのトラブルが相次いでいるため、SNS・インターネット関連のバックグラウンドチェックは単独で実施しても良いかもしれません。
自社の採用フローにバックグラウンドチェックを取り入れるかどうか、この機会に検討してみてください!
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