採用活動の中でも、入社後の定着や活躍といった人材育成を見据え、企業が求める人材を自社に呼び込むために行う「採用広報」は特に重要性が高い仕事です。採用広報に力を入れるかどうかで、自社の将来が決まると言っても過言ではありません。
今回は、採用活動に欠かせない採用広報の重要性や、トレンドの手法、成功事例についてご紹介しましょう。
採用広報とは
採用広報は、数多くの企業が行なっている採用活動の一つです。
採用活動というと、応募者の中から最適な人材を選出する活動に目を向けがちですが、その前のプロセスである応募者集めも重要です。説明会やパンフレットの配布に加え、web上での求人情報公開もすべて採用広報にあたります。企業にとって最適な人材を確保するため、求職者に自社の魅力を伝える活動を総称して採用広報と呼ぶのです。
なぜ採用広報を行うのか
なぜ採用広報は必要なのでしょうか。ここでは、採用広報のメリットや重要性について解説していきます。
採用広報のメリット
採用広報のメリットは、求職者や潜在求職者に自社の魅力を発信でき、認知度を高められるところです。
株式会社リクルートキャリアの『2019年卒新卒採用における課題』によると、第2位にあげられているのが「自社認知度」で63.7%でした。
オウンドメディアやブログ、SNSなどを駆使した幅広い採用広報を行うことで、求職者はより手軽に情報を入手できるようになります。いままでの採用活動では伝えきれなかった情報を知ってもらい、認知度の向上とともに採用成功率アップに繋げられるところが採用広報の魅力です。
採用広報の重要性
採用活動では、入社後の働き方まで見据え、自社で活躍し続けられる人材を確保することが求められます。せっかく応募者が集まっても、面接や採用後にミスマッチが起こって応募辞退や早期退職につながってしまっては意味がないからです。
自社の社風や働き方、制度や仕組みなどといった細やかな情報を発信する採用広報を行うことで、事前に企業と応募者の間のズレをなくすことが期待できます。後々お互いにとって不利益が生まれないように、採用広報は企業にとっても求職者にとっても大切な活動なのです。
また、近年の採用活動市場では人材不足が深刻化している上、求職者が企業側に求めるものも変わりつつあります。職場や企業の質を重視する若者世代に対して、従来通りの求人を出して待つだけの採用活動だけでは、他社に遅れを取りかねません。優秀な人材を逃さないためにも、求職者に積極的にアプローチする採用広報が重要なのです。
採用広報で得られる効果
採用広報により認知度が上がるということは、応募者が自社のことをよく理解しているということです。
選考の初期段階から志望度の高い応募者が集まれば、採用活動の効率化が期待できます。入社後のミスマッチによる早期退職を防ぐことにもなるため、採用広報は採用活動にかかるコストダウン効果が高い活動と言えます。時間や費用を抑えられた分、求職者に対する他のアプローチ方法に注力できるので、より質の高い採用活動が実現可能です。
採用広報の担当は「人事」?「広報」?
採用広報は、人事と広報の両方に関わりのある領域です。採用広報の担当に関して明確な住み分けはありませんが、近年では両者が協力して一緒に採用活動を行うケースが増えています。採用広報は、人事担当者と広報担当者がお互いの持つ知識やノウハウを積極的に分け合い、取り組むべき業務だからです。
もっと言えば、採用は企業全体に関わる重要なプロジェクトなので、企業全体の協力が求められます。会社の風土や各部署の仕事内容などを広報するには、現場の社員の手助けが欠かせないからです。採用広報においては、担当という枠に囚われず、全社一丸となった協力体制が重要なポイントと言えるでしょう。
採用広報を行う主な手法
続いて、採用広報には実際にどのような手法があるのか、それぞれの特徴やメリットと共にご紹介していきます。
就職情報サイト
出典:株式会社ディスコ【2023卒】9 月後半時点の就職意識調査
『キャリタス就活 2023 学生モニター調査結果』によると、就職活動に関する情報の入手先で最も多かったのが「就職情報サイト(95.0%)」です。サイト掲載にあたり費用はかかりますが、最も求職者の需要が高く、効果的な採用広報の手法と言えるでしょう。
オウンドメディア
オウンドメディアとは、ホームページや採用サイト、採用ブログなど、自社で運営するメディアのことです。
前述の『キャリタス就活 2023 学生モニター調査結果』では、就職活動に関する情報の入手先で「各企業のホームページ(採用サイト)」が68.9%を取得しており、就職情報サイトに次いで第2位の結果となっています。新しくメディアを開設する手間もなく、既存メディアを活用できるといったメリットもあります。
ソーシャルメディア
TwitterやInstagramなどの一般的なSNSをはじめ、WantedlyやYOUTRUSTなどといった採用特化型のSNSによる採用広報が有効です。
特に後者は必要な項目が整理されているので、初心者でも手軽に始められるのが魅力です。
採用イベント
会社説明会や異業種交流会などのイベントも、重要な採用広報の一つと言えます。
求職者と直接顔を合わせるイベントの場では、企業の雰囲気を肌で感じてもらうことができます。何度も繰り返し実施するよりは、最適なタイミングを見極めて開催するのがおすすめです。
パンフレットなどの公開
会社説明や採用資料などといったパンフレットには、SNSやブログなどの情報と比べて、体系立てた自社情報を理解してもらえるのが特徴です。
求職者にとっても、順を追って求める情報が確認できるので、気になる点や質問事項を整理しやすいというメリットがあります。
イマドキ、採用広報のトレンドツール
採用広報にはさまざまな手法があることをご紹介しました。続いては、採用広報のトレンドツールをご紹介していきたいと思います。
Twitterは、日本でも多くの利用者がいるSNSです。企業のリアルな日常や情報をリアルタイムで発信できるため、求職者に親近感を持たれやすいというメリットがあります。気軽に投稿できて費用がかからない点からも、採用広報の最適なツールと言えるでしょう。
Wantedly
採用に特化したSNSのうちの一つで、企業情報やインタビューなどの情報を投稿できるのが特徴です。20〜30代のビジネス職やエンジニアなどを中心に利用されており、求人の情報ページも充実しています。
Youtube
近年では、若者の認知率を踏まえたYouTube動画での採用広報も人気が高まっています。パンフレットやネット上の言葉では分かりづらい、社員や企業のリアルな雰囲気を伝えられるのが特徴です。スマートフォンでの見やすさを重視したコンテンツ作りがポイントになります。
採用広報、成功事例3選
さいごに、採用広報が成功した事例を3つご紹介したいと思います。
LINE株式会社
日本でも非常に認知度の高いLINEですが、採用広報の手法として社員個人がコンテンツを更新する「リファラル採用」に取り組んでいます。
2019年7月にスタートした総勢500人以上の社員によるリファラル採用により、従来の人材紹介経由に比べて10倍以上の人材確保に成功しています。全社一丸となった採用広報に加え、紹介した社員に対するリファラル手当や、紹介入社に対する入社祝い金などといった制度の導入が功を奏したといえる成功事例です。
参照:hypex「採用広報で知っておきたい企業の成功事例11選!」
株式会社Gunosy
株式会社Gunosyは、Wantedlyを使った「Gunosiru」と呼ばれるメディア運営を行なっています。基本的な会社情報だけでなく、忘年会などの入社後の自分を想像しやすいリアルな情報を載せている点も、求職者にとっては魅力的なポイントと言えるでしょう。入社前後のギャップや、採用後のミスマッチの軽減に大きく貢献している採用広報です。
株式会社iCARE
クラウドサービス「Carely(ケアリー)」を運営する株式会社iCAREは、人気の動画配信サービス「TikTok」を使用した採用広報を、日本で初めて実践した会社です。類を見ない挑戦的な試みで6名の応募者を獲得しただけでなく、SNSや新聞、テレビなどの各種メディアで連日取り上げられ、企業広報にも拡大させた成功事例です。
参照:Note「【おそらく日本初】TikTokで採用PRをするとどうなるのか?」
まとめ
採用広報は、自社の求める優秀な人材を呼び込めるだけでなく、採用後のミスマッチや早期離職を防ぐために欠かせない採用活動の一つです。
SNSやオウンドメディアなど、採用広報の手法は多岐に渡りますが、大切なのは全社一丸となって取り組むことです。ぜひ現在のトレンドや成功事例に目を向け、自社に有効な採用広報を取り入れてみてください。
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