日本経済が低迷する中、海外での事業拡大を視野に入れる企業の数は年々増えつつあり、企業のグローバル化を牽引する存在ともいえるのが「グローバル人材」です。
しかし、実際には
- 「グローバル人材に必要なスキルとは?」
- 「採用のデメリットは?」
と疑問に思う人事担当者もいるのではないでしょうか。
この記事では、グローバル人材という言葉の定義や企業が必要とする背景について、紹介します。加えて、グローバル人材を採用するメリットやデメリットも解説するので、グローバル人材採用をお考えの人事担当者の方は参考にしてみてください。
グローバル人材とは?
文部科学省の定義では、グローバル人材に必要な要素は以下の内容となっています。
- 語学力とコミュニケーション能力
- 主体性と積極性、異文化理解の精神
- 日本文化に対する理解、日本人としてのアイデンティティー
グローバル人材とは国内外のさまざまなビジネスシーンにおいて成功を収められる人材のことです。そして、グローバル人材には、高い語学力やコミュニケーション能力が求められています。
先ほど日本人のグローバル人材の定義について紹介しましたが、外国籍のグローバル人材採用に積極的な企業も増えています。
企業がグローバル人材を必要とする背景
企業にとってグローバル人材はなぜ必要なのでしょう。その背景について解説してきます。
日本人口の減少
グローバル人材が企業に必要とされる理由に日本人口の減少が挙げられます。
総務省によると2023年1月の時点で、日本の総人口は1億2477万人であり、この数字は前年に比べて53万人の減少となっています。日本での少子高齢化はさらに進むとされているため、日本の労働力人口も減少傾向にあるのです。
少子高齢化による労働力の確保が難しくなると、企業の労働生産性は低下し、日本全体の経済成長も失速していくことが考えられるでしょう。そういった中、企業の労働力を確保するために外国人労働者が注目されています。
グローバル人材は国内外での活躍はもちろん、企業と外国人労働者の間に入り良好なコミュニケーションをとることで、ビジネスの場で活躍することも期待されています。
日本経済の停滞
日本経済の停滞により、国内だけでなくビジネスの場を海外に広げる企業が増えていることも、グローバル人材が必要とされ注目される理由の一つでしょう。
かつて製造業を中心とし高度経済成長を実現した日本は、1970年代はじめに先進国の仲間入りをしました。この頃は、自動車や家電製品の需要が急激に増加したこともあり、高品質な製品を作れば売り上げが伸びる時代でした。しかし、現在の日本において高品質だから売れるとはいえず、日本経済は鈍化しています。
日本経済の停滞を表す指標としてGDP(国内総生産)があり、日本は1995年頃に最高記録を示した後は、年によって増減はあるものの全体的にみると回復の兆しが見られず低迷しています。
今後も日本の経済成長が見込めないことを考えた時に、海外市場へ視野を広げる企業は多くなるでしょう。その際、スムーズな海外進出を可能にしてくれるのがグローバル人材といえます。
ダイバーシティの推進
グローバル人材が企業において必要とされる理由の3つ目として、ダイバーシティの推進が挙げられます。
ダイバーシティとは「多様性」を意味しています。多様性を重視する企業は、年齢や性別、人種、障害などにとらわれず「優秀な人材は積極的に採用」という傾向にあります。そのため、価値観の違う人々が協力して働く場面が増えているのです。
また、多様化が進むことで、重要視しなくてはならないことが、さまざまな顧客ニーズに合うサービスや製品の提供でもあります。多様化が進む現代において、多様な価値観や文化を理解するグローバル人材は活躍が期待されています。
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グローバル人材に必要なスキル
グローバル人材に必要なスキルについて解説していきます。
活躍の場を広げられる語学力
外国語でのメールのやりとりをスピーディかつ正確に行うために、英語をはじめとした外国語を話すだけでなく、読み書きもスムーズにできることが基本となるでしょう。言語が幅広く使える人材であれば、さまざまな国の人とのコミュニケーションが円滑に行えることから、海外ビジネスの活躍も大きく期待できます。
また、日本人のグローバル人材は、時には海外に日本文化を紹介することもあるでしょう。そのような時には、日本文化とともに日本語に対する正しい理解も重要になります。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力とは、人の話を聞いて意図を汲み取れる能力をいいます。
グローバル人材に求められるコミュニケーション能力は、違う価値観や習慣のある人に対して理解を示したうえで、交渉や主張をする能力です。
国境を超えてさまざまな立場の人々と関わるグローバル人材には、コミュニケーション能力は語学力と同じくらい必須なスキルといえるでしょう。
自分で考えて行動する主体性
グローバル人材は、ただ指示されたことだけを行うのではなく、自分で考えて行動できる主体性も必要になります。
ただし、業務の内容や立場によっては、自分だけで判断するには難しい場合もあるでしょう。そのような時に、率先して上司などに確認をとり指示を仰げる行動もまた主体性です。
ビジネス環境の変化しやすい現代社会において、柔軟な判断や対応をするには主体性が求められ、グローバル人材に必要なスキルです。
新しいことに挑戦する姿勢
海外ビジネスの場では、失敗を恐れず新しいことへ挑戦する姿勢がとても大切です。
現状よりもさらに良い結果を残すためには、今までのやり方を見直して課題の解決を試みる必要があります。ビジネスにおいて試行錯誤する段階では、失敗もあるでしょう。
しかし、そういった事実に屈することなく、新しい市場の開拓や違う方法で取り組み、現状維持で満足しないチャレンジ精神が、グローバル人材には求められます。
違う価値観を受け入れられる協調性
グローバル化が進むことで、さまざまな文化や価値観、バックグラウンドを持つ外国人と働く場面が多くなります。
グローバル人材には、自分とは違う価値観を受け入れ、吸収しつつ上手にすり合わせられる協調性が必要です。価値観の異なる人同士で仕事をするケースでは、意見が合わないこともありますが、グローバル人材には相手を尊重しつつ自分の意見も伝えられる力が必要です。
最後までやり遂げられる責任感
グローバル人材には最後までやり遂げられる責任感も必要です。
海外ビジネスの場合、思いもよらない問題が発生することもあるでしょう。そのため、今自分がしなくてはならないことを認識して、仕事を全うできるのがグローバル人材に必要なスキルといえます。
さまざまな国に合わせられるビジネスマナー
ビジネスマナーは、日本人同士のビジネスの面でも必要不可欠なスキルです。日本人同士はもちろん、価値観や文化の違う外国人とのビジネスシーンでは、特にビジネスマナーの習得が重要になります。
握手の仕方一つとっても、強い握手が失礼になる国、ビジネスの場でのみ異性との握手が可能な国など、国によってさまざまです。そのため、他国に合わせたビジネスマナーを身につけることが大切です。
グローバル人材を採用するメリット
多様なスキルを必要とするグローバル人材を採用することは、企業にどのようなメリットをもたらすのでしょう。企業におけるグローバル人材採用のメリットを紹介します。
海外の事業展開がスムーズになる
グローバル人材を採用する最大のメリットともいえるのが、海外の事業展開がスムーズになる点でしょう。海外事業の拡大を考えた時、現地の文化や習慣、土地に精通した人材がいることで、ビジネス上の取引などがスムーズになります。
組織の活性化に繋がる
グローバル人材を採用することで、外国人雇用もしやすくなるため企業のダイバーシティ化が進みやすくなります。異なる文化を持つ人材の採用が、さまざまなアイデアや新しい価値観を生むことになり、組織活性化にも繋がります。
グローバル人材を採用するデメリット
次に、グローバル人材を採用するデメリットについて紹介します。
雇用手続きに手間と労力が必要
外国籍のグローバル人材の場合は、雇用する際の手続きに労力を必要とすることがデメリットとして挙げられます。習慣の違いなどから日頃のコミュニケーションがうまくいかないケースもあり、企業側はそういった部分のフォローも必要です。
また、日本人、外国籍ともに競争率の高いグローバル人材の獲得は難しいため、採用計画を練って人材を獲得するための活動を行います。採用から雇用に至るまでの一連の作業にも時間と労力を要することを覚えておきましょう。
グローバル人材の長期雇用が難しい
グローバル人材のような向上心が強く、枠にはまらない考え方ができる人材はキャリアに関する考え方もそれぞれで、転職によりキャリアアップしていきたい人材ももちろんいるでしょう。グローバル人材のキャリアに対する考え方によっては、長く雇用し続けることが難しい場合もあるかもしれません。
グローバル人材を採用する時のポイント
日本人のグローバル人材採用の選考では、求職者のスキルレベルや人物像の見極めをポイントに進めていけば問題ないでしょう。
しかし、外国籍のグローバル人材の採用に関しては、異なる文化や価値観への柔軟な対応ができるのかという見極めが大切です。柔軟性のある人材ならば、早い段階で組織に馴染むことができるでしょう。
また、即戦力になるグローバル人材の採用だけでなく、自社での社内育成を視野に入れることも必要といえます。求職者の中で語学力に長けている人材がいる場合、社内研修などを利用してグローバルに活躍できる人材を育成することも可能です。
グローバル人材の募集方法
ここでは、グローバル人材の募集方法について解説していきます。
人材派遣・人材紹介サービス
グローバル人材を募集する方法として最もポピュラーなのが、人材派遣や人材紹介サービスの活用です。外国籍のグローバル人材に特化した派遣会社もあるため、企業が求める要件に合う人材を紹介してくれます。
求人サイト
グローバル人材を専門とした求人サイトを活用する方法もあります。日本での就職を希望するグローバル人材に幅広くアピールすることが可能です。ただし、企業の求める人材とマッチしないパターンもあるため注意が必要です。
紹介してもらう
外国籍のグローバル人材であれば、コミュニティーの繋がりから適した人材を紹介してもらう方法もあります。リファラル採用(社員紹介)の促進により、繋がりを活かした採用もグローバル人材確保には有効な手段です。
ヘッドハンティング
高いスキルが求められるグローバル人材の採用には、ヘッドハンティングも効果的な方法といえます。すでに海外拠点の立ち上げといった実績のある能力の高い人材を確保することも可能です。直接ヘッドハンティングする方法もありますが、ヘッドハンティング専門のエージェントの力を借りることもできます。
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グローバル人材紹介会社
最後にグローバル人材を紹介している会社について紹介していきましょう。
マイナビグローバル
「マイナビグローバル」は、マイナビグループの中でも外国籍のグローバル人材に特化した人材派遣会社です。日本企業に幅広い業種や職種の人材の紹介をしています。また、そのような人材を受け入れることを考えている企業向けのセミナーなども定期的に開催しています。
dodaグローバル
「dodaグローバル」は、中国や韓国、インドネシア、シンガポールなどアジアを拠点とする企業の求人情報を多く扱っています。また、「英語を活かしたい」「中国語を活かしたい」と考える多くの人材がこのサービスを活用しているため、企業としては語学力に長けた人材の確保に繋がる可能性が高まります。
グローバル採用ナビ
20年以上にもわたりさまざまな業種の人材を企業に紹介してきた実績を持つのが「グローバル採用ナビ」です。日本人では、海外生活が長い・留学や海外の大学へ進学といった経験のある人材を海外出張の多い企業などへ紹介しています。中国人や台湾人、インド人などの人材紹介実績も豊富です。
まとめ
グローバル人材の定義や企業が求める理由のほか、採用する際のメリットとデメリットについて解説しました。日本人口の減少や日本経済の停滞といった理由から、企業にとってグローバル人材の必要性は今後ますます高まるでしょう。
グローバル人材の採用は、違う価値観に触れることができるため、組織活性化にも繋がります。グローバル人材をうまく活用することができれば、企業のさらなる発展を目指すことも可能になるでしょう。
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