人事の仕事内容といえば、面接を中心とした採用活動が思い浮かぶ方が多いと思います。しかしそれ以外にも人事にはたくさんの仕事があります。
実際にどのような仕事を行っているか、詳細を把握していますか?今回は新任の人事の方向けに、必要なスキルや役割、注意すべきポイントを解説していきたいと思います。
社内における人事の役割
人事において求められる役割は、組織編成をもとに会社を活性化させることです。具体的には以下の3つが人事の役割といえます。
組織力を高め利益を上げる
まずは人数を増やしたり、研修を行いチーム力を上げることが求められます。
最終的に組織が活性化することでチーム力が上がり、会社の売上向上にも繋がっていきます。そのため営業や開発などとは違い、直接利益を上げることはありませんが、現場の組織力を上げ間接的に利益を向上させることが求められます。
離職率を下げる
転職が当たり前になりつつある現代では、社員の離職率を抑えたい企業は多いと思います。
離職率を抑えようと思った時、真っ先に動くのが人事部です。採用活動など先のことに目が行きがちですが、既存社員のフォローアップなども忘れてはなりません。
採用ブランディングを確立する
採用難が続く現代、ただやみくもに採用活動をしていても良い人材と巡り合うことは難しいです。そのため人事部では、自社がどのような会社で、何のためにどのような人材が必要かといったターゲティングを行う必要があります。
またそのマーケティングの結果をもとに、ターゲットにとって魅力的に映るよう採用ブランディングも行わなければなりません。他社と差別化し、自社の魅力を発信するブランディング力も近年の人事に求められる役割の一つです。
人事と労務の違い
よく人事部と労務部は合わせて人事労務部と言われることがあります。しかし、人事と労務では明確な違いがあります。
人事は組織編成において、採用や教育、研修などチーム力を上げることが主なミッションです。一方の労務は入社手続きや各種保険の手配など、法律や会社規定に基づいた事務作業が主な業務内容です。
そのため同じ人材や組織に関する仕事でも、「人事=組織編成を作る」「労務=労働環境を整える」といった明確な違いがあります。
人事担当者の業務内容一覧
人事には基本的に組織編成、採用活動、教育・研修、フォローアップといった4つの業務が求められます。どれも社内の人材に関わる重要な業務なので、それぞれ解説していきます。
組織編成
まず最初に組織編成についてです。
社内の組織編成は、中長期的にどのようなチームになるかを考えます。そのため3年後、5年後、10年後といったように、段階ごとにビジョンを持たなければなりません。
またそのビジョンを叶えるために何が必要なのか、逆算し実行に移す必要もあります。人材が足りなければ採用を行い、戦力を上げたいのであれば研修や教育などを行うでしょう。このように人事では、理想とする組織編成を設定し、その目標を達成するための戦略設計などが求められます。
採用活動
増員や欠員の補充など、採用活動は人事が中心になって行う業務です。
具体的にはまず、どのような人材が必要なのかの要件定義を行います。ターゲットが決まった後は、どのようにしてその人材を採用していくか、実際の戦略設計が必要になるでしょう。
さらに戦略が決まった後は、新卒採用なら年間の採用スケジュール決めや、中途採用であれば転職市場のマーケティングなどを行い、最も効果的な採用手法を導き出さなければなりません。
自社完結での採用であれば、媒体の選定・面接官のアサイン、選考調整など採用に関するすべての業務を行っていくことになります。
採用人数によっては、新卒紹介や人材紹介サービスを利用した方がコスト削減になるかもしれません。そうなった場合にはエージェントなどと打ち合わせも行います。このように多くの企業で人事は戦略設計から実際の採用活動、面接など採用業務に関するあらゆる仕事を任されます。
他部署と採用業務を兼任している企業などは、採用業務の一部、または全行程において委託する「採用アウトソーシングや採用代行(RPO)」を導入しているところも数多くあります。
教育・研修
人事の仕事は、人材を採用して終わりではありません。入社後に社員が活躍できるよう、教育や研修を行います。
新入社員が増えた際の研修はもちろんですが、中長期的に強いチームを作るのであれば年代ごとの研修なども必要になるでしょう。社内で研修を行うケースもありますが、場合によっては外部の会社に依頼することもあります。
そのため人事部では、将来目指す組織編成と現在で何が足りないのかギャップを把握し、その要素を埋めるために研修や教育を行う必要があります。
今回のテーマは「新入社員特徴と離職率を下げるための研修事例」です! 企業に新入社員が入社したら、必ず行われる新入社員研修。毎年4月~6月の約3ヵ月の間に、新入社員研修を実施している企業が多いのではないでしょうか。企業によって新入社員研[…]
フォローアップ
入社した社員が離職しないよう、適宜フォローアップを行うことも人事の業務内容です。
特に内定者フォローアップなど、採用活動の最中は比較的忙しくなります。内定をもらったものの辞退されないよう、入社日まで応募者の質問に答えたり、適宜コンタクトを取ることが求められます。
他にも既存社員がキャリアに関して悩んでいる場合に面談をしたり、相談に乗ったりといったフォローアップも必要です。組織編成や新戦力の補強ももちろんですが、人事の場合いかに離職者を減らすかも重要な業務と言えるでしょう。
人事の年間スケジュール
企業により異なりますが、一般的に人事のスケジュールは上記のとおりです。基本的に新卒採用を行う企業であれば、年間を通して新卒採用の業務が多くあります。
また8月、12月に賞与ををもらった後に転職をする層をターゲットとした、夏と冬の中途採用を行う企業も多いでしょう。それぞれの月で発生する業務の準備時間がかかるため、基本的にその月の2~3ヶ月前辺りから戦略設計を行い、実行に移すケースが一般的です。
人事業務のやりがいとは?
人事の業務は、会社にとっての直接的な利益は上げられませんが、組織編成を通して以下のようなやりがいを感じるシーンがあります。
求人の反響が良かった時
多くの企業が求人広告を出稿している状況で、ただ単に求人を公開しても反響を得ることは難しいでしょう。そのためマーケティングなどの戦略設計を行い、その術中通り反響を出せることは人事にとって大きなやりがいとなります。
ターゲットの採用が成功した時
優秀な人材こそ採用が難しいため、要件に当てはまる人材を採用できた瞬間はやりがいを感じます。
人材要件の設定や市場のマーケティングなど、長期間の戦略が採用という結果につながる瞬間の喜びは、人事ならではの感覚でしょう。
離職率が下がった時
新卒入社の3割が3ヶ月で退職すると言われているなか、自社の離職率を下げることは難しい時代です。とくに組織編成の大部分を担う人事部にとって、離職率を下げることも大きなミッションとなります。
そのため自分たちの施策で、前年度よりも離職者が減ることは人事にとってやりがいを感じる瞬間といえます。
人事担当者でつらかったこと
逆に人事ならではの悩みを感じるシーンも少なくありません。職業柄、人を相手にするため、以下のような悩みも多く抱えます。
広告の反響が出ない時
求人広告の費用は高く、相場的には1ヶ月の掲載で平均50万円前後かかります。
そのためせっかく予算を使い広告を出稿したにも関わらず、反響が得られない時などはつらいと感じることが多いのです。
内定辞退があった時
要件に当てはまる優秀な人材に内定を出したものの、直前になって辞退されるケースも少なくありません。
書類選考からフォローアップまでの業務を一貫する人事の場合、内定辞退があった時に責任を感じることも多く、原因や理由を考えて悩んでしまうシーンも少なくありません。
急な欠員に対応しなければならない時
人材の流動が激しい会社では、急に退職者が出て迅速に欠員補充をしなければならないケースもあります。
そのため急に1ヶ月以内に欠員補充をしなければならないなど、イレギュラーが発生すると業務も増え残業が続くこともあります。
人事担当者に必要なスキル
人事は基本的に人を相手にする職種です。組織編成のためには、以下のようなスキルが求められます。
コミュニケーション能力
面接や研修を行う人事部にとって、コミュニケーション能力は必須です。
応募者に対して適切な対応やサポートをしたり、意義のある研修時間を過ごせるようにするためには、相手の話をよく聞き端的に要件を伝える必要があります。
折衝力
エージェントや媒体社と戦略設計をすることが多い人事部では、社外との折衝も行います。
そのため社内のコミュニケーションだけではなく、パートナー企業とも良好な関係を築くための折衝力も求められるでしょう。
マーケティティングスキル
必要な人材をどうすれば採用できるか、他社や市場はどのように動いているかなどのマーケティングスキルも欠かせません。適切な市場調査のもと採用活動を行うことで、時間やコストのカットに繋がるため採用力の向上にも繋がります。
まとめ
このように人事の基本的な仕事内容は、組織編成にまつわる業務全般です。
そのため採用活動や研修、離職者を出さないような施策など多岐にわたります。これから人事部に配属され、何をするのか、どんなスキルが必要なのか把握したい方は、この記事を参考にしてみてください。
今回のテーマは「理想の採用担当者・ざんねんな人事にならないための行動ポイント」です。 会社説明会や面接などで顔を合わせ、電話やメールで連絡を取る。採用の現場で応募者と接するのは、常に採用担当者です。つまり、採用担当者は「会社の顔」とし[…]