企業の生産性を上げるために人材採用は重要なポイントの一つです。しかし、採用にかかるコストは意外にも大きいのが現状でしょう。
「なるべく採用にかかるコストを削減したい」と考える企業に役立つのが、採用活動に活用できる補助金です。
採用で活用できる補助金制度は種類が多く、自社に合ったものを活用できれば、企業の負担が少なくなります。
この記事では、採用における補助金について解説していきます。採用に携わる方は、参考にしてみてください。
採用補助金とは?
採用における補助金とは、企業の人材採用を手助けするための支援対策であり、国や地方の公共団体が企業へ支給するお金のことです。
企業は、採用補助金を活用することで、採用や雇用で発生するコストの削減を行えます。
また、受け取った補助金は返済不要なのもポイントです。以下では、採用補助金について、さらに詳しく解説していきましょう。
採用補助金の基本的な仕組みと考え方
採用における補助金は、公募が行われ採択された場合だけ利用できる仕組みです。
補助金は国などにより予算額が決められているため、企業からの応募数が多いと、たとえ条件を満たして申請したとしても利用できないケースもあります。
また、申請件数のほかにも採用補助金の手続きや事業計画書の内容で、不備等があった場合も利用できなくなる可能性があるので注意が必要です。
どんな目的で活用されているのか
採用の補助金制度は、新規採用などにかかる人件費の負担を減らすことを目的に活用される場合が多いでしょう。
採用における財務状況が改善されれば、企業にとって新たな人材の採用に対するハードルが下がります。
また、継続的な社員の教育や訓練を支援する補助金もあるため、社員のスキルアップや職場への定着も期待できます。
採用に使える補助金の主な種類
ここからは、採用に使える補助金の種類について解説していきます。
雇用調整助成金の特徴と対象
「雇用調整助成金」は、従業員の雇用の維持を目的に支給される制度です。
景気悪化など経済上の理由により、事業の縮小を余儀なくされた企業に対し、従業員を解雇することなく雇用の維持が可能になるよう休業手当といった賃金の一部を助成します。
ただし、雇用保険の適用事業主であるなど、対象となる企業には満たさなくてはいけない条件があります。
若年者雇用促進補助金はどんなときに使える?
「若年者雇用促進補助金」は、企業が若年者の正規雇用を積極的に行っていきたいと考えている場合に活用できる制度です。
この制度は、若年者の雇用促進、生活の安定を図ることを目的に実施されています。そして、その地域への定住と産業振興を促進する狙いもあります。
特定求職者雇用開発助成金で人材確保
「特定求職者雇用開発助成金」は、高齢者や障害者、母子家庭の母など特定の事情により就職が困難な方を雇い入れる場合に利用可能です。
特定就職困難者コースや就職氷河期世代安定雇用実現コースなど、雇い入れる労働者のタイプによっていくつかのコースに分かれています。
特定求職者雇用開発助成金の支給額は、対象のタイプを含め企業規模などに応じて変わります。
就職困難者に対して支援することで、企業の人材確保をサポートする事業です。
トライアル雇用助成金でお試し雇用が可能に
「トライアル雇用助成金」を活用すれば、企業はお試し雇用で求職者の適性を確認したうえで本採用に進めることが可能になります。
一般トライアルコースや障害者トライアルコース、障害者短時間トライアルコースなど、いくつかのコースに分かれます。
例えば、一般トライアルコースは、就業経験の不足などを理由に就職が困難な求職者を、企業が無期雇用への移行を前提に雇い入れる場合に利用可能な事業です。
申請には、対象となる就職困難者をハローワークなどの紹介で雇い入れることや、原則として3か月はトライアル雇用をすることなど主な条件があります。
本採用前に仕事への適性をチェックができるのもこの制度のメリットでしょう。
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採用補助金の申し込みステップ
採用補助金を活用するためには、申込みの際に適した書類の提出や手続きが求められます。以下では、採用補助金の申込みステップについて見ていきましょう。
申請に必要な書類を準備
採用補助金の利用は、申請に必要な書類を準備することが必須となります。
準備する書類は、給与明細のほか、就業規則の写し、出勤簿やタイムカード、労働条件通知書(雇用契約書)です。
これらの書類は、雇用形態や雇用期間、賃金などが補助を受ける基準に合致しているかを証明するために必要であり重要です。正確に漏れのないよう確認して用意しましょう。
提出方法とスケジュールの流れ
書類の準備が完了したあとは、提出方法とスケジュールの流れを確認しておきましょう。
書類をもとに、管轄の労働局に支給申請を行います。提出した書類の内容審査が行われ、内容に問題がなければ補助金の支給を受けられます。
補助金は種類によって流れが異なる場合があるため、申請したい補助金の手続き内容を事前にチェックしておくと安心です。
審査から採択までのプロセス
補助金は、申請して採択されると交付決定となり利用ができます。補助金の採択とは、審査の結果、補助金を受け取れる企業を決定することです。
採択されるには、補助を受ける目的が明確かつ、目的達成の可能性が高いことが必要となります。
補助金を使うときに気をつけたいポイント
企業の採用において活用できる補助金ですが、使用する際には気をつけるべきポイントもあります。以下では、補助金を使うときに気をつけたいポイントについて解説します。
不適切な使い方は返還のリスクも
採用補助金を活用する大きな魅力は、返済不要である点でしょう。
特に、採用や研修といった人材の育成にコストを割くことができない小規模の企業などにとって、採用補助金は助かる制度です。
しかし、補助金を不正に受給した場合には、全額返還する必要があります。
例えば、書類の偽造や虚偽の雇用実態での申請、実際は行っていない研修の申請などが違反行為となり、返還のリスクが高まります。
支出内容は目的に沿って管理する
事業期間を定めるのが一般的な補助金制度では、この間に支出した経費以外を経費として認めず補助が受けられないケースもあります。
補助金の支出内容は、目的に沿って管理するようにしましょう。
採択後の報告やフォローも大切
補助金が支給されたあとには、使用状況報告の義務が発生します。報告を怠ると補助金の返還を求められるケースもあるため、注意しましょう。
また、採用補助金を活用して対象者を雇用した場合、対象者がスムーズに職場での業務に馴染めるよう継続的なフォローアップやサポートすることも大切です。
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申請の締切や期間をうっかり忘れない
補助金を活用するための申請には、締切や期間が定められています。
その間に、申請作業を行えなければ、いくら受給するための条件をクリアしていたとしても受け取ることができません。そのため、申請の締切や期間は忘れないように注意しましょう。
補助金を採用にうまく活かすためにできること
補助金は、企業における採用活動のコストの負担軽減を可能にします。ここでは、補助金を採用にうまく活かすためにできることについて以下で解説していきましょう。
自社の課題に合った補助金を選ぶコツ
自社の課題に合った補助金を選ぶには、まず補助金の目的や対象などが記載されている公募要項をよく確認しましょう。
そして、人材の育成にかけるためのコストを確保したいのか、特定の求職者の見極め期間にかかる資金確保のためなのかなど、目的を明確にしたあとに自社の課題に合った補助金を選びます。
また、補助金を探すのに役立つ公的なサイトやコンサルタントなども存在するため、それらをうまく活用することで、自社に合った補助金を効率的に見つけることもできます。
短期的ではなく長期的な戦略を意識する
補助金を選ぶ際は、短期的ではなく長期的な戦略を意識することも大切です。
補助金を一時の救済としてとらえるのではなく、事業を継続させるための一部として活用することが求められます。
補助金終了後、得られた効果を引き続き活かしていくためにも、短期間ではなく長期的に考えていくことが重要です。
社内の人・時間・知識をうまく使おう
補助金を採用活動にうまく活用するためには、社内の人(人材)と時間、知識を目的に合わせて有効活用することも大切です。
補助金活用に関する業務を効率的に進めるために、人事担当者や労務担当者など、採用に関わる知識や経験のある社員の協力は必須といえます。
場合によっては、自社の顧問社労士や社外の人事担当者など、ネットワークを頼るのも大切です。
迷ったときは誰に相談すればいい?
企業の採用において手助けとなる採用補助金ですが、迷ったときには誰に相談すればいいのでしょう。ここでは、主な相談先について解説します。
社労士・中小企業診断士など専門家の活用方法
採用補助金を活用する際は、社労士(社会保険労務士)・中小企業診断士など、必要に応じて外部の専門家との連携も必要になる場合があるでしょう。
社労士は、社会保険や労働に関する問題を専門に扱う国家資格者です。企業の採用をはじめ、退職までの業務、年金に関する相談なども扱います。
中小企業診断士は、中小企業を対象に経営課題を解決するための助言などを行う専門家であり国家資格者です。
採用補助金に関して、分からないことや迷うことがある場合は、専門家の知識や経験をうまく活用することがおすすめです。
申請手続きなどがスムーズに進められ、採択率を高めることにも繋がります。
相談前に準備しておきたいポイント
専門家へ有意義な相談をするためには事前準備が大切です。
「どういった人材を、いつまでに、どの程度採用したいのか」など、自社の現状把握と課題を明確化しておきます。
その課題に必要な補助金をいくつかチェックしておき、相談したい補助金に関する質問事項をリストアップしておくと、スムーズな相談を可能にするでしょう。
まとめ
採用補助金をうまく活用できれば、採用活動にかかるコストを大きく削減できます。
補助金を活用するにあたり、支給条件や期間、申請など注意すべき点があるため、事前にチェックするところから始めてみてはいかがでしょう。
企業成長に繋げるためにも、採用補助金の活用を一度検討してみてください。
企業成長に必要な採用マーケティングについてはこちらをご覧ください。
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