【経歴詐称で解雇できる?】事前に見抜く方法&応募者に騙されないための具体策!

  • 高橋昂宏
    • 2026-01-21
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    今回のテーマは「経歴詐称の見抜き方」についてお届けします!

    誰しも、自分が入りたいと思う企業に対しては、よく見せようとする心理が働いてしまうものです。しかし、そう思うがあまり、間違った方向に進んでしまい、経歴までも詐称をしてしまう人が稀に存在していることを知っていますか?

    せっかく良い人材だと思って採用決定したのに、入社後に経歴を詐称されていたとわかっては、現場社員も本当に信用して良い人間なのか不安になってしまいます。

    今回は、そんな事態に陥る前に、きちんとした見分け方を知って、未然に防いでもらえたらと思っています。

    面接評価シート

    経歴詐称とは

    経歴詐称とは、就転職活動中において、自身の実績や学歴などをよく見せようと経歴に嘘をつくことです。

    具体的には年齢、学歴、職歴、犯罪歴、過去の実績などの項目があり、それらの項目を事実とは異なるよう捏造したりする求職者も少なからずいます。

    ただ、0から1を作るような真っ赤な嘘ではなく、実績を少し盛ったような、いわば1を3や4にするような詐称であれば、大目に見ている企業もあり、状況はケースバイケースです。

    経歴詐称の種類

    経歴詐称にはいくつかの項目が種類ごとに分けられています。一体、どの様な経歴詐称が主に発生しているのでしょうか

    年齢詐称

    キャリア形成の観点から年齢を意識したい場面もありますが、募集・採用で年齢による制限を設けることは原則として禁止されています(例外事由あり)。そのため年齢詐称は、応募者側の問題であると同時に、企業側も募集要件や選考基準の設計・表現に注意が必要です。

    年収の詐称

    企業によっては、前職の年収を考慮し内定者の年収を決める企業も多くあります。その制度を逆手に取って、自身の年収を実際よりも多く申告する求職者もいます。
    この場合、実際に証明書などを要求しなければ、口頭で好きなように言えるため、見抜くことが難しいです。

    学歴詐称

    中途採用で多いのが、学歴の詐称です。
    出身大学を有名大学に偽造したり、海外での留学がなくてもあたかも留学経験があるかのような詐称をする人も非常に多くいます。
    また場合によっては、出身大学は偽りがないものの、留年などを隠すために在籍期間を詐称するケースも増えてきているので注意が必要です。

    資格・スキルの詐称

    前職での職務内容や、自身ができるキャパシティを偽り、少しでも優秀に見せようとする人の場合、資格や経験を詐称する傾向が強いです。
    そのため、面接の際に話を聞いた分には優秀だと感じたものの、実際に採用をすると期待ほど仕事ができないなんてことにもなりかねません。

    転職回数の詐称

    日本は海外と違い、転職回数が多いことに関してまだまだネガティブなイメージを持っています。
    そのため、転職回数が極端に多いと、在籍期間の少なかった会社を記載しないなどして、転職回数を偽ることもあります。

    解雇できる場合とできない場合

    経歴詐称解雇できる場合とできない場合

    経歴詐称は人事にとって非常に厄介なもので、選考時に気づけば良いものの、実際に採用してしまってから発覚した場合は面倒なことになりかねません。
    そこで、経歴詐称が発覚した際、解雇することはできるのか、またどういう場合には解雇できないのか知る必要があります。

    懲戒解雇できる場合

    経歴詐称が発覚し、懲戒解雇できる一般的な基準としては、「重大な経歴詐称」があったかどうかになります。

    重大な経歴というのは、採用条件に直接関わるものを言い、選考段階においてもし本当のことを知っていたら雇用契約は結ばなかったであろう経歴です。

    例えば、

    ・大卒以上の募集に対して、高卒を大卒だと詐称した場合
    ・TOEIC800点以上が最低条件であるのに、650点を850点と申告した場合

    などです。

    なお、犯罪歴や病歴など(取扱いに配慮が必要な情報)について、応募者が事実と異なる申告をしたり重要な点を秘匿していた場合でも、直ちに解雇できるとは限りません。職務遂行や採用判断に重大な影響があったか、就業規則の定め、本人への確認・弁明の機会などを踏まえて、個別に慎重な判断が必要です。

    解雇できない場合

    では逆に、解雇ができない(または認められにくい)のは、どのような場合なのでしょうか?

    一般的には、「採用条件に直接かかわる重大な詐称」ではないケースだと、解雇(特に懲戒解雇)が認められにくい傾向があります。
    また、学歴・職歴・犯罪歴などに事実と違う申告があったとしても、就業規則や懲戒規程にどう書かれているか、詐称の内容が採用判断や仕事にどのくらい影響するか、本人への確認や説明の機会を設けたか――といった点も含めて、総合的に判断されます。

    そのため、「詐称が見つかった=すぐに解雇できる」というわけではありません。

    その結果、採用の合否に直結しない程度の詐称の場合は、解雇が無効と判断されるリスクも高くなります。無理に解雇を進めてしまうと、不当解雇としてトラブルに発展し、未払い賃金(バックペイ)や損害賠償などの負担が発生する可能性もあります。

    だからこそ、経歴詐称は入社後に慌てて対応するのではなく、選考の段階で気づけるように、人事側で対策を進めていくことが大切です。

    詐称発覚後、解雇できない場合の対処法

    本来であれば、選考段階で経歴詐称を見抜きたいところですが、それができなかった場合はどうすればよいのでしょうか?

    経歴詐称の有無を公表するか決める

    その場合は、すぐに結論を急ぐのではなく、まずは当該社員とどう関わっていくかを整理しながら、落ち着いて対応していくことが大切です。そのうえで、経歴詐称があった事実を「社内で共有するか」「共有するとして、どこまでの範囲にするか」を決めましょう。

    社内共有が必要になるケースもありますが、むやみに広く伝えると、本人の名誉やプライバシーに関わり、別のトラブルにつながる可能性もあります。そのため基本的には、業務上必要な関係者(人事・法務・配属先の管理職など)に範囲を絞って共有し、全社員への周知は慎重に判断するのがおすすめです。

    給与を下げる場合には

    また、企業によっては給与を下げるべきか迷う企業も多くあります。ただ、詐称があったからと言って一方的に給与を下げるとトラブルが発生することも十分にありえます。

    そのため、もしも給与を下げるのであれば、保有資格や経験年数など、具体的に数値や資格など、可視化出来るフェアな条件を提示するようにしましょう。

    そうすることで、不当に一方的な給与ダウンをしたことにはならず、公平性を保ったままの交渉ができます

    実際にあった経歴詐称での裁判事例

    実際にこの章では、過去にあった経歴詐称に伴う裁判事例について紹介します。

    経歴詐称での解雇が認められた事例

    KPIソリューションズ事件

    システムエンジニア・プログラマーを募集し採用したところ、職歴を偽っていたことが判明し当該社員を普通解雇しました。能力に自信を示し、給与の増額を行っていたにもかかわらず、実際はプログラムはほとんどできなかったということもあり、普通解雇を有効とした他、会社への損害賠償が認められた事例です。この事件では、「真実を告知したならば採用しなかったであろう重大な経歴」はないとして懲戒解雇は否定されました。もっとも信頼関係は破綻したとして、普通解雇が有効と判断された事例です。(引用元:企業法務ナビ

    正興産業事件

    高校中退を高校卒業と偽って自動車教習所の指導員となった者につき、高卒の学歴を有していないことが当初から判明していれば採用することはなかったとし、就業規則の懲戒解雇事由に該当するとした事例です。(引用元:企業法務ナビ

    炭研精工事件 

    この事件では、実際には大学を中退していたのですが、当時の募集対象者が高校卒業者又は中学卒業者となっていたため、高校卒業と学歴を偽って採用されました。

    裁判では、経歴詐称(学歴詐称)は就業規則の懲戒解雇の事由に該当すると判断したのですが、懲役刑の有罪判決を受けた事実、従業員の情状を考慮した上で、懲戒解雇を有効と判断しました。(引用元:なるほど労働契約法

    経歴詐称による解雇が認められなかった事例

    マルヤタクシー事件

    タクシー乗務員として採用されるにあたり、刑の消滅した前科を秘匿し、また職歴にも3ヶ月間の稼働期間の違いがあったという事案について、「前科」は賞罰欄に記載すべきですが、刑の消滅した前科については、その存在が労働力の評価に重大な影響を及ぼす特段の事情がない限り、告知すべき信義則上の義務はないし、また、3ヶ月間の職歴の稼働期間の違いでは、労働力評価を誤らせるということはできないとして、解雇を無効としました。(引用元:企業法務ナビ

    秋草学園事件

    履歴書に職歴の不実記載をしたこと、学生や教職員に暴言等をしたこと等を理由とする私立短大教員に対する解雇につき、解雇事由としての職務の適格性の欠如に相当するまでの事実は認められないとして、右解雇が無効とされた事例。(引用元:労働基準判例検索・全情報

    経歴詐称者を企業に残しておくデメリット

    調査を行った結果、経歴詐称が発覚した場合、その社員をどうするのかは非常に悩ましいものであり、場合によっては解雇ができず会社に残さなければなりません。

    そこで、採用してしまったばかりに解雇ができず、会社に経歴詐称を行った社員が存在するとどの様なことが起こるのでしょうか。

    人事部自体の信頼がなくなる

    経歴詐称を見抜けなかったことや調査不足、更には最終的に解雇できない自体に陥ったリカバリー能力の低さなど、まずはじめに人事部に対しての風当たりは強くなるでしょう。

    また、既存社員へそのことが知れ渡ることで、社内のケミストリーが崩壊してしまうことや、チームでの業務が円滑に進まなことも想定されます。

    取引上における信用問題に発展する可能性も

    さらに最悪の場合、何らかの形で取引先に知られてしまうと、取引上における信用問題にも発展しかねないため、経歴詐称者を会社に残しておくと、非常に多くのデメリットがあります。

    そのため、選考の際に慎重になることはもちろんですが、実際に内定を出す前にその応募者の調査なども怠ってはいけません。

    経歴詐称者を見抜く!事前の対策

    ここまで解説したように、一度経歴詐称者を採用すると、デメリットが多かったり解雇できなかったりと何かと面倒なことが多いです。

    そのため、事前に経歴詐称者を見抜き、内定を出さないことが求められます。経歴詐称を見抜くためのポイントは把握しておくべきと言えるでしょう。大きく分けて経歴詐称を見抜く方法は、主に以下のような方法があります。

    • 各種書類のチェック
    • 面接時の受け答え
    • 第三者への調査依頼(リファレンスチェック)

    書類のチェック

    学歴や職歴の詐称は、それを証明する書類を提出してもらうことで未然に回避することができます。

    学歴の場合 卒業証書、卒業証明書
    職歴の場合 雇用保険被保険者証、(必要に応じて)基礎年金番号通知書/年金手帳など※
    免許・資格の場合 免許証、スコア証明書など
    年収の場合 源泉徴収票

    ※年金手帳は保有者もいますが、現在は基礎年金番号通知書で案内されるケースがあります

    面接時の受け答えでチェック

    書類上では色々と嘘を並べられても、面接時に深堀りしていけば、必ずどこかでボロが出てくるものです。少しでも気になったり違和感を感じた場合には、事細かに質問し、受け答えの反応をしっかりと見るようにしましょう。

    ただ、受け答えの回答を事前に準備して臨んでくる場合もあり得るので、想定外の質問をすることができたらベストです。

    面接評価シート

    第三者への依頼調査(リファレンスチェック)

    求職者の働きぶりや人物像を知る前職の上司や同僚などの第三者に調査依頼することで、本当に信頼できる人物かどうかを見極めることが可能になります。書類の詐称が見極められることはもちろんのこと、面接時にも分かりえなかった情報も入手することができるというメリットもあります。

    リファレンスチェックには、オンラインですべて完結するツールなどもあり、活用してみるもの一つの手といえます。

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    まとめ

    採用市場は時期や業界によって波がありますが、最近は求人ニーズが戻ってきている企業も増えています。

    そんな中で、少しでも良く見せたい気持ちから、学歴・職歴・資格などを実態より盛ってしまう(事実と違う申告をしてしまう)応募者が出てくることもあります。

    だからこそ採用担当者は、書類の整合性チェックに加えて、面接での深掘り質問や、必要に応じたリファレンスチェックなどを組み合わせて、ミスマッチを防いでいきましょう。

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