キャリア採用とは?中途採用との違い&即戦力人材確保の基礎知識

キャリア採用とは?即戦力人材確保のために知っておきたい基礎知識

企業の求人情報で「新卒採用」「中途採用」ではなく「キャリア採用」と記載されているのを見かけることがありますが、皆さんはキャリア採用の意味を正しく理解していますか?

中途採用と同じ意味合いでキャリア採用と使っている場合もありますが、実はより即戦力となる特定の人材募集をする際に、この言葉が用いられるケースがあります。

今回は、転職・就職活動をするときに知っておきたい基礎知識として、キャリア採用の概要をお伝えします。

キャリア採用とは

キャリア採用とは、新卒採用以外の「一定のキャリアのある方」の採用を指します。

平たく言うと、社会人経験のある方の採用はキャリア採用となるので、中途採用と変わらないと思う方も多いでしょう。

企業によっては、「中途採用=キャリア採用」と、まったく同じ意味合いで使っている場合もありますが、一部企業ではあえてキャリア採用という用語を使用しています。両者の使い分け方をもう少し詳しく見ていきましょう。

キャリア採用と中途採用の違い

似ているようで異なる、キャリア採用と中途採用ですが、この2つの採用活動には、どのような違いがあるのでしょうか。

採用活動は、もともと学校を卒業する人を対象とした新卒採用と、それ以外の人を対象とした中途採用の2つに分けられていました。

キャリア採用とは

その中途採用の中でも、キャリア採用と呼ばれるものがあり、下記のような採用対象の違いがあります。

キャリア採用 中途採用
求める社会人経験の長さ 社会人として一定の年数を経験している。特定の業界や職種で3年以上の経験者が目安 キャリア採用よりも受入れ範囲が広い。

フリーターや派遣社員などから正社員を目指す人、業界や職種の未経験者や第二新卒も含む

※募集要項は求人ごとに異なる

経験してきた仕事の実績 特定の業界、職種で一定の実績がある 未経験、第二新卒も含む
雇用形態 正社員として、特定の業界経験を積んでいる想定 アルバイト・パート、派遣、契約社員から正社員を目指す場合も含んで使われる

時代の流れとともに、第二新卒や正社員未経験者など、社会人としての経験があっても即戦力には満たない人の採用も増えてきました。

キャリア採用は、企業を成長させるために即戦力として活躍してくれる人材を見極めるための、重要な採用活動といえます。
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なぜキャリア採用が使われるようになったのか?

キャリア採用が注目された背景としては、副業・兼業の解禁による雇用の流動化や終身雇用制度の崩壊が挙げられます。

労働人口が減少を続け、「1社に一生勤める」という終身雇用の時代が終わったことは、皆さんも実感があるでしょう。

雇用の在り方が変化し、国は働き方改革のもと副業・兼業の解禁を行いました。この解禁を受け、多くの人が自分の持っているスキルを本業以外で活かそうと動き出しています。

「そのときのライフスタイルや自分の価値観、スキル経験にあった会社で力を発揮する」考えにシフトしていく中で、未経験から人を育てる中途採用よりも「今あるスキル経験をすぐに活かせる採用」へとニーズが変わってきたと考えられます。

キャリア採用(経験者採用)実施の状況と見通し

マイナビでは、今後キャリア採用を積極的に行っていく企業は増えるだろうと予測しています。

キャリア採用の実施傾向

・今後の中途採用の見通しは、「経験者採用・未経験者採用ともに積極的」が41.9%で最も多い。「経験者採用に積極的」計は79.9%、「未経験者採用に積極的」計は48.6%。
・過年度と比較すると、「経験者採用に積極的」計、「未経験者採用に積極的」計ともに、微減している。
・前年2020年の中途採用の見通しと比較すると、「未経験者採用に積極的計」が6.6ポイント減、「経験者採用に積極的計」が0.8ポイント減となっており、今後2021年の採用活動は経験者採用に積極的とする傾向。

(引用:マイナビ中途採用状況調査2021年版 2021年3月

キャリア採用を積極的に行っている企業

キャリア採用を積極的に行っている企業には、以下のものが挙げられます。

  1. 外資系企業
  2. ベンチャー/スタートアップ企業
  3. IT企業

外資系企業は、もともとジョブ型採用を採択しているケースが多いため、必然的にスキルや実務経験重視のキャリア採用となっています。

ベンチャーやスタートアップ、IT企業は未経験者を採用して育てるよりも、即戦力者を集める傾向が強いため、キャリア採用を行っているケースが多いです。

キャリア採用を積極的に行う職種

一般の中途採用よりも、ピンポイントのスキル経験のある人材を募集する際に使われるキャリア採用が、具体的にどういった職種で行われているか確認していきましょう。

  • 営業、営業企画
  • 人事、財務、法務、経理などコーポレート職
  • ITエンジニア、SE、プログラマーなどIT職種

営業職

営業職は未経験者から広く募集していることが多いですが、営業推進や営業企画といった専門的な職種ではキャリア採用を取り入れる傾向にあります。

これまで営業のキャリアを積んできた人は、取引先との商談やプレゼンテーションなどを通して営業スキルを身につけています。このスキルは、研修や短期の経験では、なかなか習得できません。

また一から育てるには、時間やコストがかかるのも現状です。向き不向きもあるため、キャリアを積んだ人を採用する方が即戦力となり、会社にとっても有益といえるでしょう。

人事・財務

人事や財務なども、一定期間の実務経験がないと対応が難しい職種であり、ITエンジニアはそもそも人手不足が顕著な業界のためキャリア採用を行う場合が多いです。

特に人事の業務は採用活動などを行うため、優秀な人材を見抜く能力が必要です。さまざまな視点から人を見る技術が問われる職種といえるでしょう。

このような技術は、経験がないとなかなか身につけることはできません。人事での経験がある人をキャリア採用した場合、人を見る能力や感覚が備わっている可能性が高く、即戦力として活躍してくれることが期待できます。

技術

自動車関係やIT関係など、さまざまな技術職では、専門的な知識が必要となる場合がほとんどです。このような知識や技術は、短期間で身につくものではありません。キャリアを積むことでノウハウや、トラブルへの臨機応変な対応などが身につきます。

技術職の人材を採用する場合、未経験の人を採用すると研修にかなりの時間を費やしてしまいます。キャリア採用で、これまで経験を積んできた人を採用すれば、自社にはなかったノウハウを吸収できる可能性もあるといえるでしょう。

キャリア採用のメリット

キャリア採用を導入するメリットをみていきます。

育成時間やコストを削減できる

即戦力となる人材をキャリア採用した場合、基本的な研修が不要なことが多いため、新卒採用や未経験者の採用に比べて、その分の時間やコストを抑えることができます。

会社の成長につながる

他社でキャリアを積んだ人材をキャリア採用した場合、自社にはなかったノウハウや知識を持っている場合も多くあります。すでに自社で働いている社員に刺激を与えてくれるのはもちろん、会社を大きく成長させてくれる可能性もあるでしょう。

既存事業をグロースさせる新たな視点を取り入れたり、事業の成長スピードを加速させたりしたい場合は、特定の業界・職種で実績のある人材を集めるのが賢明です。

キャリア採用のデメリット

では逆にキャリア採用のデメリットにはどんなことがあるのでしょうか。

給与報酬が高い

キャリア採用を行う際は、未経験人材よりも母集団形成が難しくなる傾向にあり、キャリアアップのために転職を考えている求職者側は、給与報酬が今の会社より高いことを条件とする場合がほとんどです。

そのため採用コストが上がる可能性があり、即戦力を獲得するためには、報酬額を高く設定することも必要となります。

また、採用後は人材の実績やスキルに見合った報酬を還元する必要があるため、総じてコストがかかるデメリットがあります。

長く在籍するとは限らない

キャリアアップを目指し転職してきた人は、今後も条件のよい会社へ転職をする可能性があります。優秀な人材に長く在職してももらうためには、待遇や給料面など、会社側の努力も必要でしょう。

また、一定期間、自分自身の仕事の進め方を確立しているため、入社後すぐに自社のやり方に馴染むとは言い切れません。とはいえ、これは中途採用全般に言えることなので、キャリア採用を行ったら絶対に社風に馴染んでもらえない、という意味ではありません。

新卒採用、中途採用、キャリア採用どれをとっても、入社後に会社の風土にマッチするまでには時間を要するため、各ポジションでしっかりとオンボーディングプログラムを計画する必要があるでしょう。

キャリア採用の主な採用手法

キャリア採用の手法キャリア採用の採用手法は、一般的な中途採用と大きく変わりません。代表的な採用手法としては、求人広告、人材紹介などが挙げられるでしょう。

特定の業界、職種で経験のある人材を狙っていく場合、業から直接オファーを送れるダイレクトスカウト型のサービスや、ヘッドハンティングの手法、業界・職種特化型の転職サイトなども検討すると良いでしょう。

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キャリア採用を成功させるポイント

キャリア採用を行う場合は、次のポイントを意識して実施を進めると良いでしょう。

  1. キャリア採用に適切な職種かどうか
  2. 募集要項を明確にしてPR文に落とし込む
  3. 報酬設計や入社後フォローを慎重に

キャリア採用に最適な職種かどうか

すべての採用募集がキャリア採用に合っているわけではないです。

たとえば、一定のスキル経験を保有した人材が市場に少ない場合は、採用ターゲットを業界未経験者に切り替えなければ難しいケースもあるでしょう。

場合によっては、1度リタイアしたシニア社員を狙ったほうが、採用がスムーズなときもありますし、無理にキャリアを求めなくても自社でジュニア層を育成したほうが効率的なこともあります。

募集要項を明確にしてPR文に落とし込む

企業がいくらキャリア採用とうたっていても、求職者は「中途採用=キャリア採用」と受け取っている場合もあります。

通常の中途採用とは何が違うのか、とくに募集要項は明確に書き分け、求人広告などPR文にしっかり「求めるキャリアレベル」を反映させるのが重要です。

キャリア採用と記載しながらも、募集文章に「経験が浅くてもOK!」など書いてしまうと、けっきょくどのような人材がほしいのかブレが生じてしまいます。求める人材要件を適切に募集文章に落とし込むよう意識してください。

報酬設計や入社後フォローを慎重に

繰り返しになりますが、キャリア採用は一定期間の実務経験やスキル保有を前提とした採用となります。

そのためキャリア採用で募集した人材は、他の企業も欲しがる即戦力人材となるため、入社後のケアは慎重に行うべきでしょう。

新卒採用や未経験者なら、オンボーディングが不要という意味ではありません。しかし経験者は、「自分が成果を出せば報酬がこのくらい受け取れる」と、ある程度ご自身の市場評価を知っている場合が多いです。そのため、入社後の報酬や福利厚生が不十分であれば、他の企業へ移ってしまうリスクもあります。

大前提として終身雇用ではないことを理解しながら、即戦力人材との関係性構築に力を入れなければならないでしょう。

キャリア採用にOJTは必要か

ojtは必要か実務を通して業務を教えるOJTは、キャリア採用で知識や経験がある場合も必要であるといえます。

OJTをはじめとした受け入れ準備が整っていない場合、転職者が実力を発揮できなくなるケースもあります。キャリア採用で採用された人材は、即戦力とはいっても、転職先で働くのは初めてです。会社独自のルールや前職との違いなどを把握してもらうためにも、OJTをしっかり行いましょう。

まとめ

キャリア採用と中途採用の違い、キャリア採用のメリットやデメリットなどを紹介しました。キャリア採用は、企業の早期戦力化に適した採用方法です。

新卒採用、中途採用、キャリア採用など何気なく使っている表現でも、少し意識するだけで母集団は大きく変わります。

キャリア採用で優れた人材を見極めることが、会社の将来を決めるといっても過言ではありません!

キャリア採用と中途採用の意味をしっかりと理解して、即戦力となる人材を獲得しましょう。自社にはなかった知識やノウハウをもった人材は、既存社員にも刺激を与え、会社を大きく成長させてくれる可能性もあります。

キャリア採用の意味について、深く考えたことのない採用担当者は意外と多いはずです。今後、募集活動を行う際は、ぜひキャリア採用の特徴を理解したうえで進めていただければ幸いです。

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