・ダイレクトリクルーティングなど、採用手法ごとの特徴やメリットデメリット
・戦略的な計画、AI活用など、2025年に中途採用を成功させるために押さえるべき具体的なポイント
2025年 中途採用市場のトレンド
最新の中途採用市場動向を解説
まず、中途採用市場の動向を具体的なデータを交えて見ていきましょう。2024年11月の有効求人倍率は1.25倍と、引き続き「売り手市場」が続いていますが、その実態は業種によって大きく異なります。
画像引用:厚生労働省 一般職業紹介状況(令和6年11月分)について
例えば、dodaの業種別転職求人倍率をみると、IT通信業では転職希望者1人に対して7.46倍の求人がある一方で、小売・流通業では0.73倍と、業界ごとに人材不足の様相が異なります。
画像引用:doda 転職マーケットの”今”を知る!2024年12月19日発表転職求人倍率レポート(2024年11月)
このように、業界ごとの求人倍率には大きな差があり、人材不足の深刻さも業界ごとに異なります。これにより、企業は自社が属する業界特有の採用課題を正確に把握し、それに応じた戦略的な採用手法を導入する必要があります。
例えば、以下のように、業界ごとの特性に応じた採用戦略を立てることが、競争が激化する採用市場での成功につながります。
- IT通信業のような高倍率の業界:ダイレクトリクルーティングやSNS採用など、ターゲット層に直接アプローチする手法が効果的
- 小売・流通業:未経験者歓迎の求人や柔軟な働き方をアピールし、幅広い層からの応募を促進する戦略が求められる
また、マイナビ「中途採用実態調査2024年版」によると、企業が早期離職と考える勤続年数の平均は「9.5カ月以内」で、転職経験者の約4割(40.8%)がこの期間内に退職を経験しています。
画像引用:マイナビキャリアリサーチ中途採用実態調査2024年版(2024年9月30日公開情報)
従来は「3年以内」が早期離職の目安とされていましたが、企業の認識は短縮傾向にあります。背景には終身雇用の見直しや転職の一般化など、日本型雇用の変化が影響しています。9.5カ月以内の離職は採用コストの損失となるため、採用時のマッチングや入社後のフォロー体制の強化が必要です。
求職者のニーズと採用競争の激化
中途採用の成功には、求職者のニーズを正確に理解することが不可欠です。
現在、転職希望者の間で特に注目されているのが「職場環境の改善」や「柔軟な働き方」といった条件で、具体的には、以下のようなニーズが求職者の優先事項として挙げられます。
- 労働条件の明確化と改善:給与以外にも、働きやすい職場環境が求められています。
- ワークライフバランスの確保:転勤の少ない職場やリモートワークの導入が、応募の決め手となることが多いです。
- 通勤距離の短縮:特に女性求職者の間で重視されています。
こうした背景から、企業は従来の採用戦略を見直し、求職者のニーズに応える労働条件を提供することが求められています。また、職場環境の改善を採用マーケティングの一環としてPRすることで、採用競争を有利に進めることが可能です。
注目すべき2025年の市場トレンド
ここ数年、中途採用市場では以下のようなトレンドが注目されており、これらを踏まえ、2025年はさらなるデジタル化の進展やAIツールの活用が採用活動の鍵を握ると考えられています。
- 新卒採用から中途採用へのシフト
- 未経験者歓迎求人の増加
- オンライン採用の定着
特に、未経験者採用が広がる中で、効率的にポテンシャルを見極めるためのテクノロジー活用が企業の競争力を左右する年になると予想されます。
新卒採用から中途採用へのシフト
企業の採用戦略が大きく変わりつつあります。新卒採用が難航する中、即戦力を求める企業が中途採用にシフトしています。2024年5月2日の日経新聞の記事によると、特にメガバンクなどの大企業では、2024年度に中途採用が新卒採用を上回る見通しです。
3メガバンクの2024年度の採用計画が出そろった。三菱UFJ銀行は中途で23年度比7割増の600人を採用し、新卒を初めて上回る見通しだ。3メガ銀全体で中途比率は45%と5割に迫る。デジタル化や富裕層向けビジネスの重みが増すなか、新卒一括採用で様々な部署を経験させて人材を育成してきた従来の手法が転機を迎えている。 引用:日本経済新聞
未経験者歓迎求人の増加
即戦力の人材が不足する中、企業は未経験者を積極的に採用し、育成する傾向が強まっています。エン転職の調査では、2023年「未経験者歓迎」の求人が全体の80%を占めています。2020年と比較すると25%も増加している状況となっており、多くの企業が人材育成を前提とした採用にシフトしていることを示しています。
画像引用:エン転職
オンライン採用の定着
新型コロナウイルスの影響で採用活動のオンライン化が進み、現在もハイブリッド型の採用活動が主流となっています。オンラインでの説明会や面接を活用することで、全国の求職者にアプローチすることが可能となり、採用活動の効率化が進んでいます。
中途採用トレンド手法と特徴
中途採用市場では、従来の求人サイトを利用した採用手法に加え、新たなアプローチが注目されています。売り手市場が続く中、企業は「攻めの採用」を強化し、より効率的に優秀な人材を確保する手法を導入していく必要があります。
それぞれの手法の特性を理解し、自社の採用ニーズに応じた柔軟な戦略を構築しましょう。
必見!主流となる「ダイレクトリクルーティング」
ダイレクトリクルーティングは、企業が求職者に直接スカウトを送る「攻めの採用手法」です。従来の求人情報を掲載し、応募を待つ受動的な方法ではなく、自社にマッチする人材を能動的に探し出し、アプローチする点が特徴です。
ダイレクトリクルーティングが注目され、採用手法の主流となりつつあるのは、現在の採用市場の変化や求職者の動向に対する有効性が高いためです。求職者が優位な売り手市場において、即戦力となる人材を効率よく確保できるため、多くの企業が導入を進めています。
・求職者のモチベーションを確認しながら採用できるため、ミスマッチが少ない
・導入費用が高額になる場合がある
代表的なサービス例
- BizReach(ビズリーチ):ハイクラス層向けで、経営幹部や専門職の採用に強み
- Wantedly(ウォンテッドリー):企業カルチャーを重視し、若年層やエンジニアの採用に特化
- dodaダイレクト:地方採用に強く、登録者の詳細な情報検索が可能
求人サイトや人材紹介のエージェントなどを利用しても「応募は集まるけど企業に適した人材がみつからない…」という人事の方も少なくないはず。 そこでおすすめしたいのが、企業が自社にマッチした人材を直接スカウトできるダイレクトリクルーティング[…]
採用手法の王道「求人広告」
求人広告は、企業が人材を募集するために媒体(求人サイト、新聞、フリーペーパーなど)を通じて情報を公開する手法です。
従来から使われている採用手段ですが、デジタル化やターゲティング技術の進化により、現在でも広範囲に求職者にアプローチできる有効な手法とされています。
・求人情報を発信することで、採用目的だけでなく、企業の知名度向上やブランド強化にもつながる
・求人広告は誰でも応募可能なため、応募者の質にばらつきがある
代表的な転職求人媒体サービス
- マイナビ転職:幅広い業種・職種に対応しており、特に20~30代の若手層に人気。地方求人にも強い媒体
- doda:転職エージェント機能も併せ持ち、求人広告だけでなくサポートを受けられるのが特徴。求人数が多く、中堅層や即戦力人材向けに適している
- type:IT・Web業界やベンチャー企業に強みがあり、特に技術職や専門職をターゲットとした求人で高い成果を発揮
再注目の「転職フェア」
転職フェアは、複数の企業と求職者が一堂に会する採用イベントです。対面形式のため、直接企業の魅力を伝えられる点が強みです。
再注目されている理由として、コロナ禍で一時中断された対面交流の場が復活し、直接企業の魅力を伝えられる効果が見直されたことが挙げられます。さらに、自社を知らない層にアプローチできる点や、応募前の求職者を惹きつける即効性があることも理由の一つです。
・対面でのやり取りで応募者を惹きつけやすい
・必ずしもターゲット層に合った人材が参加するとは限らず、採用の成果に結びつかない場合もある
主な転職フェア例
- マイナビ転職フェア:年間140回以上開催、地方採用にも対応
- doda転職フェア:来場者数が多く、面談数を最大化する仕組みが特徴
- 女の転職type転職フェア:女性求職者に特化したユニークなフェア
最新手法!「求人特化型採用プラットフォーム」
求人特化型プラットフォームは、企業が求職者に直接アプローチできる採用手法であり、クリック課金制を採用することが多いのが特徴です。これらのプラットフォームは、求人情報を集約するアグリゲーションサイトとして機能し、求職者に幅広い選択肢を提供します。
この手法は2020年代のはじめから注目され、特に2024年以降、利用する企業が大きく増えています。求人特化型プラットフォームの知名度も広がり、多くの企業が採用活動に取り入れるようになりました。地方や特定の職種の採用に強く、採用のデジタル化が進む中で、さらに重要な役割を果たしています。
・採用予算に応じた柔軟な運用が可能
・自社で運用しなければならないため、ある程度の運用知識が必要
代表的なプラットフォーム例
- Indeed:SEOに強く、幅広い求職者にリーチ可能
- 求人ボックス:日本発のプラットフォームで、日本人に使いやすい設計。20代後半から40代前半までが大半を占めており、ミドル層の採用に最適
自社のホームページや採用サイトで求人情報を掲載しても、そもそも求職者の目に留まらなければ、適した人材の獲得にはつながりません。 そこでおすすめなのが、アグリゲーションサイトです。アグリゲーションサイトのメカニズムを知り、有効活用すれば[…]
ターゲット層にアプローチできる「SNS採用」
・動画や写真を活用して企業の魅力を直感的に伝えられる
・魅力的な投稿の作成やコメント対応など、運用負担が大きくなる可能性がある
主なSNS例
- Instagram・Facebook:企業の魅力を視覚的に伝える
- X(旧Twitter):ハッシュタグを活用した情報拡散が得意
高マッチング率を実現する「リファラル採用」
リファラル採用とは、既存社員が知人や友人などを紹介する形で行う採用手法です。企業内での人的ネットワークを活用するため、採用コストを抑えながら効率的に人材を確保できる特徴があります。
リファラル採用は、コスト効率や定着率の高さが魅力ですが、偏りやスケールの課題を補完するために、他の採用手法と組み合わせて活用するのがおすすめです。
・既存社員が企業文化や業務内容を説明した上で紹介するため、ミスマッチが少なく、離職率が低くなりやすい
・既存社員が紹介した候補者が不採用になった場合、紹介者が気まずい思いをする可能性がある
元社員を採用する「アルムナイ採用」
アルムナイ採用とは、退職した元社員(アルムナイ)を再雇用する採用手法です。企業を知り尽くした即戦力の人材を採用できるため、教育コストや適応期間を削減できる点が特徴です。退職者と継続的に関係を保つためのネットワーク構築が重要になります。
・過去の勤務実績を把握しているため、採用時のミスマッチリスクが低く、安心して採用できる
・退職者との関係を継続的に保つためのアルムナイネットワークの構築や運営にリソースが必要
2025年の中途採用を成功させる5つのポイント
2025年も中途採用は企業にとって重要な課題です。採用の難易度が上がる中で、成功するためには柔軟な対応と計画的な取り組みが欠かせません。ここでは、特に効果的な5つのポイントをご紹介します。
戦略的な採用計画を立て、ペルソナに沿った見直しを行う
採用活動を成功させるには、計画の段階で「どんな人材を求めているのか」を具体的に明確にすることが大切です。
ただ大まかに「営業を数名採用したい」という目標を立てるのではなく、どんなスキルや経験、性格を持つ人材が理想的なのかを考え、ペルソナ(理想の人材像)を作成しましょう。その上で、採用の流れや基準を細かく見直すことが、成功につながります。
採用基準の見直しと柔軟性のある対応
今までの基準では応募が集まらない、または面接通過者が少ない場合、採用基準を変えることも必要です。たとえば「経験3年以上」といった条件を設けている場合、それが本当に必要かを見直してみましょう。
ポテンシャルを評価する仕組みを取り入れると、求める人材を確保できる可能性が広がります。競争が激しい中での採用では、柔軟性が大きな力になります。
応募後の迅速なフォローと長期的な定着支援
応募があってから内定に至るまでのスピードは、採用の成功率を左右する大事な要素です。書類選考や面接の日程調整を素早く行うこと、面接の前にはリマインドメールを送ることなど、丁寧で早い対応が求職者の信頼を高めます。
さらに、採用後のフォローも重要です。1on1ミーティングや研修を取り入れて、新しい社員が働きやすい環境を作りましょう。
AIや管理ツールを活用した効率的な採用活動
採用活動の負担を軽減し、効率を上げるためには、AIや管理ツールの活用が効果的です。たとえば、スクリーニングの自動化やスカウトメールの作成をAIに任せることで、採用担当者が本来力を入れるべき部分に集中できます。
候補者との連絡を一元管理できるツールを使えば、選考のミスを防ぎ、スムーズな進行が可能になります。
採用におけるDE&I(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の推進
さまざまな背景を持つ人が活躍できる環境を作ることは、これからの企業にとって重要なテーマです。
性別や年齢だけでなく、価値観や働き方の違いを尊重することで、多くの人材に選ばれる企業となることができます。特に、こうした取り組みを外部に向けて発信することは、求職者に対する企業の魅力を高めるポイントになります。
トレンドの中途採用手法を選ぶポイント
中途採用市場のトレンドは年々変化しており、新しい採用手法が次々と登場しています。しかし、トレンドを追うだけでは自社に適した採用活動が実現できるとは限りません。
ここでは、最新の採用手法の中から、自社に適したものを見極めるためのポイントを解説します。
自社の採用課題を明確にする
トレンドの手法を取り入れる前に、自社の採用課題を明確にすることが重要です。たとえば、「新しい市場で人材を確保したい」「特定のスキルを持つ人材を採用したい」など、課題を具体的に洗い出し、トレンドの手法がその解決に役立つかどうかを検討しましょう。
複数の手法を組み合わせる
最新の採用手法を試す際は、従来の手法と組み合わせて活用するのが効果的です。たとえば、ダイレクトリクルーティングを導入しつつ、求人サイトで幅広い層にアプローチすることで、効率よく応募者を集められます。トレンドの手法が必ずしも万能ではない点に注意しましょう。
採用期間とコストを考慮する
トレンドの採用手法は導入コストが高い場合もあるため、採用予算やスケジュールに合うかを確認しましょう。短期間で採用を完了したい場合は、即効性のあるサービスを、長期間で育てる手法が可能ならばSNS採用やリファラル採用を検討するなど、コストパフォーマンスを意識して選びます。
他社の事例を参考にする
トレンドの手法は新しい分、正攻法が確立されていないケースがあります。他社の活用事例を調査し、成功事例を参考に自社に適したアレンジを加えることがポイントです。特に同業他社の事例は、より現実的なヒントを得る助けになります。
外部サービスの利用を検討する
トレンドの採用手法を効果的に活用するためには、採用代行やコンサルティングサービスを利用するのも有効です。特に、ダイレクトリクルーティングや採用マーケティングなど、専門知識が求められる分野では、プロの支援を受けることで、成功の可能性を高めることができます。
まとめ
DODAが行った転職求人倍率調査によると、2020年9月の求人倍率は1.61倍(前月比-0.04pt)。転職希望者数は前月比105.4%、前年同月比111.4%でした。 転職希望者数が増加しているのに、「なぜか”ターゲットとなる人材”を確[…]