採用CX(候補者体験)とは?辞退を防いで採用成功につなげる改善法&事例

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内定辞退や早期離職、ミスマッチ、ターゲットにした人材がなかなか確保できないなど、人事担当者が抱える悩みは多岐にわたります。

「候補者を選ぶ時代」から「候補者から選ばれる時代」に変化しつつある昨今、採用CXは優秀な人材を獲得するために重要です。

そこでこの記事では、採用CXの基礎知識や企業が取り組むメリット、採用CXを改善する方法などを紹介していきます。

候補者から選択される企業になるために、何をすべきか悩んでいる人事担当者はぜひ参考にしてください。

目次

採用CX(Candidate Experience)とは?

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まずは採用CXについて理解を深めましょう。

採用CXの基本概念

採用CXとは、『Candidate(=候補者) Experience(=体験)』の略で『候補者体験』のことです。

つまり採用CXとは、候補者(求職者)が企業を認知してから選考〜採用されるまでに起こる全ての体験(タッチポイント)のことを指します。

※タッチポイントについては後程ご説明します。

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候補者が企業を認知するときにはHPやSNS・口コミを確認するため、ここにも注力する必要があります。

入社する・しないに関わらず、会社の魅力を前面に伝え、候補者(求職者)に少しでも良い体験(タッチポイント)を提供していこうというのが採用CXの概念です。

採用フローと採用CXの違い

採用フローは、企業が募集を開始してから採用を終了させるまでの流れのことです。

採用CXと似ていますが、採用CXは「採用フローの中で応募者が得られる体験」のこと、採用フローは「採用の流れ」と認識しておきましょう。

採用CX(候補者体験)が重要な理由

採用CXが重要な理由や背景を、3つの観点から解説していきます。

優秀な人材が確保しづらい

新型コロナウイルスの影響を受ける以前、有効求人倍率は上昇し続けていました。

そのため、複数社で1人の求職者を奪い合うことになり、採用CXをしっかりと決めて採用活動をしていくことが重要視されていました。

現在、下降気味の有効求人倍率をみて「買い手市場に移行しつつあるんじゃないの?」と思うかもしれませんが、依然として倍率は1倍以上を保っています。

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データ参照:厚生労働省(一般職業紹介状況)

つまり、コロナウイルスの影響を受けたからと言って「優秀な人材を採用することが難しい状況」は変わらないというわけです。

少子化(若手人材不足)による終身雇用制度の崩壊

第二次世界大戦以降、これまで多くの企業が「終身雇用制度」を導入してきました。しかし、2019年経団連が「企業が終身雇用を続けていくのは難しい」と言及します。

その背景には少子化の影響があり、不足している若手人材確保のために「成果主義」を導入し始めている企業が増えていることが挙げられます。

ご存じの通り、人口は年々減少傾向です。厚生労働省による2020年9月の発表では、出生数は過去最少の86万5239人でした。

現在1995年生まれの25歳(新卒3~4年目世代)は約119万人いますが、10年後2030年の25歳は約106万人(-11万人)。

さらに10年後の2040年には、約101万人(-18万人)。25年後には、今よりも約32万人第二新卒世代が減少することになります。

不足していく若手人材をより多くの企業で奪い合う。その中で自社を選んでもらうために、様々な方法でアプローチしていく必要性が増しています。

SNSによる採用情報の透明化

インターネットが普及したことで、口コミやSNSに誰でも簡単に、思ったことや感じたことを公開できる時代になりました。

求職者が「認知」の段階でマイナスなイメージを持ってしまえば、次の「応募」のフィールドには上がってきません。

企業側は求職者に悪い印象を与えることなく、より良いイメージ雰囲気の情報を発信し続けていく必要が出てきています。

採用CXを向上させるメリット

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採用CXを向上させるメリットを確認しておきましょう。

企業のイメージアップにつながる

候補者が自社の採用プロセスにおいて良い体験をした場合、口コミサイトやSNSなどで企業の情報を発信する可能性があります。

現代は、良くも悪くも情報がすぐに拡散される時代のため、良い口コミやポジティブな投稿を見た人たちの企業に対するイメージアップが期待できるでしょう。

一方で、ネガティブな情報も拡散されやすいので、そのリスクについて理解しておく必要があります。

応募率・選考通過率が向上し、採用の歩留まりが改善される

歩留まりとは、採用プロセスにおいて次のフェーズに進んだ人の割合を指します。

採用CXを向上することで、良い体験をする候補者が増え、応募率・選考通過率が向上し、低下していた歩留まりへも良い影響を与えるでしょう。

内定承諾率が向上し、入社後の定着率が高まる

候補者にとってスムーズな応募や選考は、企業のイメージアップにつながります。内定承諾率の向上にも効果的でしょう。

また、内定後も新卒採用・中途採用に関わらず、内定者フォローや手続きのサポートなど、それぞれのフェーズで必要な支援をすることが良い体験となり、入社後の定着率も高まるとされています。

自社のファンを増やし、リピーター応募が増える

採用CXへの取り組みで優れた体験を提供することは、自社のファンを増やし、リピーター応募の獲得にも効果的です。

今回は採用を見送った候補者でも、再度応募してくれる可能性があります。また、エンゲージメントの高い候補者を採用することも可能です。

自社に良いイメージを持っている候補者は、入社後も活躍・成長する傾向にあります。

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採用CXの設計|5つのフェーズとタッチポイント

採用CXは5つのフェーズとタッチポイントによって設計されています。タッチポイントとは、企業へ入社するまでの間に候補者と企業が接触するタイミングや機会のことです。

以下では、5つのフェーズとタッチポイントについて解説していきます。

フェーズ1|認知(求職者が企業を知る段階)

認知のフェーズでは、自社に対して好印象を持ってもらうことを目標に、採用CXに取り組みましょう。

認知段階のタッチポイントは、就職・転職活動を始めたときに見る求人票や採用サイト、社員SNS、自社イベントなどです。

これらをうまく活用し、「あの会社で働いたら楽しそう」と候補者に思わせることが大切です。

フェーズ2|応募(興味を持ち、応募する段階)

応募のフェーズでは、候補者の応募意欲の向上を目標とした施策に取り組みます。応募段階のタッチポイントは、スカウトメールや求人票、SNSのDM、採用担当者からの連絡などです。

ここでは「面接を受けてみたい」と候補者に思わせることが大切です。そのためには、迅速なレスポンスや誠実な対応が必要といえます。

フェーズ3|選考(面接・試験を受ける段階)

選考のフェーズでは、オンライン・オフラインともに候補者の入社意欲の向上を目指します。

選考段階のタッチポイントは、オフィスの雰囲気や体験入社、選考中のコミュニケーション、候補者の質問に対する回答などです。

ここでは初めて候補者と企業が顔を合わせるケースも多く、スピーディーさと誠実さが求められます。

候補者に「自分に対して興味や関心を持ってくれいる」「きちんとした会社だ」と思ってもらえるような対応が大切です。

フェーズ4|内定・オファー(採用決定・条件提示の段階)

内定・オファーのフェーズでは、内定承諾を確実にするためにも、候補者の入社に対するモチベーションの向上を目標とした施策が必要です。

内定・オファーの段階のタッチポイントは、内定通知や内定フォロー、社内イベント、入社前研修などです。

候補者は他の企業からも内定をもらっている可能性もあるため、内定通知後も油断せず、積極的に接触のタイミングを作っていきましょう。

フェーズ5|入社・オンボーディング(職場に適応する段階)

入社・オンボーディング(入社後の活躍)のフェーズでは、候補者がいち早く会社に慣れ、安心して働くための環境を整備しましょう。

具体的な取り組みとしては、既存メンバーへの紹介やウェルカムランチ、ブラザーシスター制度などです。

候補者に「歓迎されている」「この会社のために頑張ろう」と思ってもらうことで、入社後も定着しやすくなるでしょう。

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採用CXを改善する4つのステップ

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採用CXを改善するために必要な4つのステップを紹介していきます。

ステップ1|採用ペルソナを明確にする

まずは、年齢や学歴、経験、スキル、価値観など、自社の事業の成長に欠かせない具体的な人物像を明確にしましょう。

採用ペルソナが決まれば、その相手に響く情報や仕事内容を訴求できます。

ステップ2|候補者との接点を洗い出す

認知から入社に至るまでの各フェーズの中で、候補者と企業の接点であるタッチポイントを洗い出します。

タッチポイントごとに、「どのような対応が必要か」「どうすれば候補者が満足のいく体験を得られるか」を考えましょう。

ステップ3|各タッチポイントの課題を分析する

ステップ3では、ステップ2で洗い出したタッチポイントがきちんと機能しているかどうかを検証します。

「候補者が良い体験を得られていないタッチポイント」を見つけ出し、採用ペルソナに合わせて問題点を分析することが大切です。

ステップ4|課題に対する改善策を実行し、効果を測定する

ステップ4では、ステップ3で見つけた課題に対する改善策を考え実行し、効果を測定します。

採用サイトで会社の魅力を十分に伝えられていなければ内容を深める、面接官のレスポンスに問題がある場合はトレーニングを行う、というように、タッチポイントごとに改善していきましょう。

課題解決に対し自社のリソースが割けない場合は、外部のサービスやツールを利用するのも一つの方法です。

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採用CX向上のためにできる具体的な施策

ここでは、採用CX向上のためにできる具体的な施策を紹介していきます。

迅速なレスポンスで候補者を待たせない

応募や選考のやり取りでは、返信が遅いと候補者が不安を感じてしまうことがあります。

こうした不安感は徐々に不信感へと変わり、応募意欲・入社意欲を低下させる原因になります。

そのため、社内で連携し、迅速なレスポンスを心がけることで候補者体験を良いものにできるでしょう。

面接時に企業の魅力やカルチャーを丁寧に伝える

候補者体験を良いものにするには、候補者のニーズを把握したうえで、面接時に企業の魅力やカルチャーを丁寧に伝えることが大切です。

候補者が入社後の様子をイメージしやすくなり、入社意欲を高めることにつながるでしょう。

また、事前に採用ピッチ資料を候補者に送付しておくのもおすすめです。自社への理解が深まっている状態で、面接を進めることができます。

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選考のフィードバックを提供し、候補者の納得感を高める

選考後は、候補者へのフィードバックを忘れずに行います。働くうえで課題になりそうなネガティブな点に加え、候補者へ期待していることを一緒に伝えるのがおすすめです。

候補者は「自分に対して真摯に向き合ってくれている」と感じられるでしょう。

採用CX改善に成功した企業事例

ここでは、採用CXの改善に成功した企業の事例を紹介していきます。

株式会社メルカリ

ここ数年で急成長を遂げている株式会社メルカリでは、2018年、選考の結果たとえ不採用であっても「選考を受けてよかった」と思ってもらえるための施策を行いました。

実施内容は「候補者アンケート」です。選考活動に対するフィードバックを候補者から得ることを目的としました。

企業規模が拡大したことで、応募職種やポジションも増え、採用に関わる人数が100名を超えたことをきっかけに、面接の構造化・面接官トレーニングを試験的に行っていたそうです。

メルカリのようなBtoC企業は、候補者(求職者)がユーザーであることが多いため、選考を良い印象で終わらせることが、その後の企業成長に繋がります。

Salesforce(セールスフォース)社

openwork調査の「働きがいのある企業ランキング2020」で第1位に輝いた、クラウド型の営業支援ツールを提供するSalesforce(株式会社セールスフォース・ドットコム)は、優れた採用CXが行われていることでも有名な企業です。

面接官や採用担当のトレーニングと、適性検査などのアセスメントツールを活用し、潜在的に候補者(求職者)を偏った視点で判断することを防ぐ策を講じています。

また、採用専用サイトをしっかりと作りこみ、候補者に対しての採用情報・採用プロセスの概要を明確に説明しています。

Sansan株式会社

Sansan株式会社では、1人の候補者に対し5回以上の面談を行うことがあります。

「自社が見据えているビジョンと候補者の希望が重なっているか」、「自社に対して納得感を得られているか」をきちんと確認することで、高い内定承諾率を獲得しているのです。

また、人事担当と現場との密な連携により、会社全体が同じ方向を向いて採用活動をしています。

採用担当者の自己流で行う採用を防ぎつつ、候補者へのアクションも積極的に行っています。

まとめ

転職が珍しくない昨今の日本では、人材獲得競争が激化しています。

その状況下で注目されているのが採用CXです。採用プロセスにおける各フェーズで、候補者の満足度向上を目指した取り組みや工夫をする重要性が高まりつつあります。

今後もその重要性は高まっていくでしょう。内定辞退や早期離職でお悩みの人事担当者は、ぜひこの記事を参考に、採用CXに取り組んでみてください。

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