ジョブ・カードとは?簡単にわかる!概要やメリットを解説

ジョブカードとは

ジョブ・カードは、個人の職業能力を示すためのツールで、企業の人材評価やキャリア形成においても有効活用できます。今回は、ジョブ・カードとは何かを簡単に解説するとともに、企業が活用するメリット・デメリット、活用のポイントなども紹介します。

実際にジョブ・カードを活用している企業の事例も紹介するので、ジョブ・カードの導入を検討されている人事担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

ジョブ・カードとは?

ジョブカードとは

画像引用:厚生労働省

ジョブ・カード制度は、正社員の経験が少ない求職者を支援するために、厚生労働省が定め2008年からスタートしました。
ジョブ・カードは、在職者や求職者、学生など様々な方の求職活動、キャリア形成に役立てられるツールです。

ジョブ・カードはこれまでに経験したアルバイトやボランティア、資格や免許、職業訓練の経歴にいたるまで、幅広い内容を記載することが可能です。正社員経験が少ない求職者が、自身の職業能力を証明するための補助資料として就職活動などで活用できるでしょう。

また、ジョブ・カードと似た様式に職務経歴書がありますが、ジョブ・カードと職務経歴書とでは形式に大きな違いがあります。形式が基本的に自由な職務経歴書に対し、ジョブ・カードはフォーマットが決まっているため、自分の強みや興味関心を細かく書き込み分析することが可能です。

ジョブ・カード活用方法

ジョブ・カードは、企業において人材評価や人材育成、キャリア形成といったさまざまな場面で活用できます。具体的な活用方法を見ていきましょう。

採用時の補助資料

企業側はジョブ・カードを採用時の補助材料として活用することにより、履歴書だけでは把握しきれない応募者の特性を具体的に知ることができます。

履歴書や職務経歴書、面接だけでは判断しにくい応募者の職業能力をはじめ、強みやキャリアプランなどを理解するのに役立ちます。特に正社員としての経験がない、または少ない応募者の場合には有効な判断材料となるでしょう。

人材評価の材料

ジョブ・カードは人材評価の材料としても活用できます。
ジョブ・カードにはキャリアの方向性や経験、スキルなどが細かく記載されるだけでなく、そのスキルを活かせる業務についても記入できます。

従業員の持つ能力やスキルを明確に把握できるので、人材評価の一つの材料として役立つでしょう。

キャリア形成支援

ジョブ・カードは、キャリア形成支援のための研修でも役立つツールです。
研修の中で従業員にジョブ・カードを作成してもらい活用することで、これまでのキャリアを従業員自ら振り返り、今後の目標を描けるようになります。

企業側がジョブ・カードをキャリア形成に関する研修等でうまく活用すれば、従業員の定着率向上にも繋げられるでしょう。

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企業がジョブ・カードを活用するメリット

ジョブ・カードの活用方法を詳しく解説しました。では、企業がジョブ・カードを活用するメリットにはどのようなものがあるのでしょう。

従業員のスキルをより明確に把握できる

ジョブ・カードはフォーマットが決まっているため、履歴書や職務経歴書とは違い、記載する内容にばらつきが出にくいといった特徴を持ちます。
フォーマットには、これまでに職務で得たスキルや知識などを細かく記載できるため、企業側は従業員の職務遂行能力をより明確に把握できるようになります。

従業員のモチベーション向上に繋がる

既存の従業員がキャリアプランを立てる際に役立てられるのも、ジョブ・カードを企業が活用するメリットの一つです。
キャリア研修の中でジョブ・カードを用いた従業員は、キャリアを積むための方向性が定まり、自身が取り組む業務の意味や価値を理解できるようになります。

結果、業務に対するモチベーションアップにも繋がります。

助成金が受けられる

ジョブ・カードを企業が活用するメリットに、助成金が受けられることが挙げられます。

ジョブ・カードを活用して人材育成を行う場合、一定の条件をクリアすれば国から助成金が支給されます。企業はジョブ・カードで受けられる助成金を上手に活用して研修を行えば、訓練経費などを軽減することが可能です。

ジョブ・カード利用のデメリット

続いて、企業がジョブ・カードを活用する際に発生するデメリットについても解説します。

時間と労力が必要になる

ジョブ・カードを活用するとなると、企業は準備や運用に時間と労力を要します。
制度利用申請の認定を受けるためには、訓練カリキュラムや助成金の申請書類の作成に多くの時間を割く必要があります。

コスト削減のために助成金はプラスにはなりますが、コスト面のみに意識が向くことは避けるべきでしょう。申請のために多くの工数がかかるため、企業にとって負担となり途中で断念することに繋がる可能性もあります。

従業員からの理解を得られない場合がある

ジョブ・カードの導入により、時間と労力を要するのは企業側だけではありません。

従業員のキャリア形成を目的にジョブ・カードを活用する際、記入項目が多くあり、従業員にとっても負担となる場合があります。
通常業務に加えてジョブ・カードの作成となると「めんどくさい」と感じてしまい、従業員からの理解を得られない場合があるでしょう。

そのため、企業は運用のメリットについて従業員にしっかり説明する必要があります。

ジョブ・カードの様式の種類

ジョブカードとは

ここでは、ジョブ・カードの様式の種類について解説していきます。

ジョブ・カードの様式の種類には以下のようなものがあります。

  • 様式1:キャリア・プランシート
  • 様式2:職務経歴シート
  • 様式3:職業能力証明シート

様式1のキャリア・プランシートは、自身の強みになる部分や価値観、興味、関心などを記入していきます。

様式2の職務経歴シートの項目は、これまでに就いた企業名や就業期間、職務の内容などです。記入した職務で得た知識やスキルなどを記載する欄もあります。

様式3の職業能力証明シートは「様式3-1」と「様式3-2」とあり、持っている免許や資格のほか、学習歴や訓練歴を記載します。

次章では、詳しく記入例も紹介するので、チェックしてみましょう。

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ジョブ・カードの作成方法と記入例

ジョブ・カード作成には手書きとデジタルの2つの方法があります。
手書きの場合、厚生労働省のWebサイトからシートをダウンロードして入手できる他、ハローワークの窓口でも入手できます。

様式1:キャリア・プランシート

様式1の記入項目には以下のような内容があります。

  • 価値観、興味、関心事項等
  • 強み等
  • 将来取り組みたい仕事や働き方等
  • これから取り組むこと等
  • その他

様式1では就業経験の有無によって記入内容が変わり、就業経験のない学卒者などの場合は、上記の内容に加え学歴の記入欄もあります。

例えば就業経験者が強み等の記入をする場合、「任された仕事や一度やり始めたことは、最後まで諦めず取り組むことができる」のように経験を基に書いていきます。
対して学卒者の場合、「留学先で中国人や韓国人と出会い、英語以外の語学も学べた。語学力と相手に配慮できるコミュニケーション能力が強み」というように学生時代の体験から強みを記入することが可能です。

様式2:職務経歴シート

様式2では、キャリア・プランシートを基に具体的な志望動機を記載する他、これまでに経験した職務について記入していきます。

職務経歴の記入項目には以下のような内容があります。

  • 期間
  • 会社名や所属・職名(雇用形態)
  • 職務の内容
  • 職務の中で学んだこと、得られた知識・技能等

このシートでは「日常会話程度の英語スキルが必要だったため入社したての頃は苦労したが、業務をこなすにつれ語学力を上げられた」など、経験により成長した点を記入することがポイントになります。

様式3:職業能力証明シート

様式3は、【免許・資格】【学習歴・訓練歴】【訓練成果・実務成果】の3種類に分類されます。

訓練成果・実務成果は、基本的に訓練機関などから交付されるシートです。

免許・資格のシートは、これまでに取得した免許や資格で業務に関連するもの全てを正式名称で記入しましょう。その際、取得の理由などを書くのもポイントです。

次に学習歴や訓練歴などを記入します。中退している場合はその旨も記載し、学部や学科も忘れないよう記入します。

詳しいエピソードなどを記載するのも大切です。

例えば「パソコン部に入部しホームページ作成やアプリ開発などを学び、ものづくりの楽しさを知ったことで、アプリ開発の仕事をしたいと思うようになった」といった内容を加えるといいでしょう。

ジョブ・カード制度を活用する時のポイント

ジョブカードとは

ジョブ・カード制度を円滑に進めていくため、活用時のポイントを解説します。

助成金をうまく利用する

企業がジョブ・カードを導入し機能させるためには時間と労力を要しますが、助成金を上手に活用すれば低コストで人材育成を進めていけるでしょう。
採用コストの軽減にも繋がるジョブ・カードの導入は、人材育成と採用活動のどちらの面で見ても、企業にとって大きなメリットになりえます。

ジョブ・カード制度の専門家に相談する

ジョブ・カードを実施するにあたり、企業側はキャリアコンサルタントやジョブ・カード作成アドバイザーといった専門家に相談するのもおすすめです。

ジョブ・カードの作成に従業員が悩んでいる時など、プロに相談することで円滑に進めていけるでしょう。

ジョブ・カード制度を活用する企業の事例

最後に、ジョブ・カード制度を活用している企業の事例を紹介します。

株式会社いなげや

ジョブカードとは

画像引用:株式会社いなげや

スーパーマーケット事業を営む株式会社いなげやが抱える課題は、若手社員の早期離職や中堅社員のモチベーションアップ、昇格・昇進・昇級に伴う人材評価の高度化などでした。

社内研修としてジョブ・カード制度を定例的なものにし、キャリアコンサルティングとの面談を併行したことで、従業員の悩みや不安が表面化しました。それらの解消に向け取り組みに着手した結果、従業員の自発的なキャリア形成やモチベーションアップに繋がっています。

岩塚製菓株式会社

ジョブカードとは

画像引用:岩塚製菓株式会社

菓子製造販売の岩塚製菓株式会社では、将来的に会社の中核を担う中堅社員に、企業の成長に率先して関わってほしいと考え、ジョブ・カードの活用をスタートしました。

30~40代の中堅社員を対象に、ジョブ・カード作成支援セミナーを行っています。従業員はジョブ・カードの作成により、これまでに自分が行ってきた業務内容を整理し洗い出すことができ、自己理解を深めることが可能になりました。

ジョブ・カードの活用が、従業員のやりがいやモチベーションの源になっています。

青木信用金庫

ジョブカードとは

画像引用:青木信用金庫

埼玉県を中心に店舗を展開する青木信用金庫では、コロナ禍により従業員同士の関係が希薄化していたことから、新入社員同士の交流を促すとともに業務へのモチベーション向上も期待して、ジョブ・カード導入を決めました。

まずは補助シートを使って価値観や強み、これから取り組みたい業務を振り返りながら段階的にジョブ・カードの作成を行いました。ジョブ・カード作成の過程で、従業員同士が積極的な意見交換をしたことで、コミュニケーションも活性化しています。

まとめ

ジョブ・カードはうまく活用することで、企業の人材評価や人材育成、キャリア形成などを明確にすることに役立つツールです。

ジョブ・カードを企業が活用する時のポイントの他、すでにジョブ・カードを活用している企業の事例なども参考にしながら、導入を検討してみてはいかがでしょう。

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