外国人の在留資格「高度人材」とは?ポイント制の概要やメリットも

高度人材

近年、労働者の不足により外国人労働者を受け入れる企業が多くなっています。

なかでも、高い技術力や専門性を必要とする職種に就くことのできる「高度人材」は、人手不足解消だけでなく、日本経済にイノベーションを起こす人材として期待度が高いでしょう。

この記事では、高度人材採用を検討中の企業の経営者や採用担当者の方に向けて、高度人材とはなにかをはじめ、採用のメリットや採用時の注意点について解説します。

そのほか、高度人材ポイント制の概要なども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

高度人材とは

高度人材

高度人材とは「高度外国人材」とも呼ばれ、高度かつ専門的な知識や技術を持つ外国の人材のことを指します。

企業を取り巻く環境が年々変化しているなか、経済のグローバル化も進んでいます。今後日本の企業がグローバル競争力を高めるためには、高度人材が必要不可欠な存在となるでしょう。

企業はさまざまな価値観や経験、技術などを持つ高度人材を積極的に受け入れることで、新たな価値を生み出すことができます。

つまり、高度人材は、企業や組織にとって大きな変化をもたらす人材といえるのです。

高度人材を採用する3つのメリット

企業が高度人材を採用するメリットにはどのようなものがあるでしょう。以下では、高度人材を採用するメリットを3つ紹介します。

労働力不足の解消

企業が発展・成長するためには、労働力の確保は必要不可欠です。しかし、少子高齢化にともない将来社会の支え手となる労働人口は、年々減っています。

帝国データバンクが2024年に実施した「人手不足に対する企業の動向調査」でも、正社員の不足を感じる企業は全体の51%を占めています。

高度人材の採用は、企業の労働力不足を解消できるほか、高い知識と技術を有しているため企業にとって即戦力となる可能性が高いでしょう。

高度人材

画像引用帝国データバンク|人手不足に対する企業の動向調査

ビジネス拡大のチャンス

高度人材の採用は、企業の海外進出を手助けしビジネス拡大のチャンスをもたらす可能性があります。

企業の事業範囲が広がるため、今後グローバル化を進めていく企業は多くなる傾向にあるでしょう。

海外へのビジネス拡大を行うには、コミュニケーションやプレゼンテーションなどビジネスに必要なスキルだけでなく、日本とは異なる文化や言語といった価値観の相違への対応力も必要です。

現地の言語やビジネス習慣を熟知している高度人材であれば、グローバルビジネス含め、ビジネス拡大のチャンスが生まれやすくなります。

組織の活性化に繋がる

向上心やチャレンジ精神、語学堪能など多様性のある高度人材を受け入れることで、組織の活性化に繋がる効果も期待できます。

日本人社員よりも積極的に発言する傾向にある高度人材が会議に参加すると、影響を受けた社員が自発的に発言するようになった事例もあります。

高度人材が組織に加わることで、既存の日本人社員に刺激を与えてモチベーションを上げられるでしょう。

組織が継続的に成長していくためには、活性化は大変重要です。

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外国人雇用

高度人材ポイント制とは

日本では、高度人材の受け入れ促進のため、2012年5月7日より「高度人材ポイント制」を導入しています。

ポイント制を活用して「高度人材」と認められた外国人に対して、出入国管理に関する優遇措置を行う制度です。

ポイント制による出入国在留管理上の優遇措置

  • 出入国在留管理上の優遇措置を受けるためには、設定されたポイントを累積して決められた点数に達する必要があり、ポイント評価の仕組みは、高度人材の活動内容を3つに設定しています。

「高度学術研究活動」「高度専門・技術活動」「高度経営管理活動」に分類され、それぞれ学歴・職歴(実務経験)・年収といった項目ごとにポイントを設けます。

そのポイントの合計が70点以上になると、「高度人材」として認められたことになるのです。

  • そして、高度人材に認定されると、他の在留資格よりも優遇される「高度専門職」が付与されます。

高度専門職の在留資格は、「高度専門職1号」と「高度専門職2号」の2つにわけられ、それぞれ優遇内容が違います。

高度専門職1号の場合

高度専門職1号の場合の優遇内容は以下の通りです。

1.複合的な在留活動の許容
2.在留期間「5年」の付与
3.在留歴にかかわる永住許可要件の緩和
4.配偶者の就労
5.一定の条件の下での親の帯同許容
6.一定の条件の下での家事使用人の帯同許容
7.入国・在留手続きの優先処理

複合的な在留活動の許容

一般的な在留資格の場合、「教授」や「技能実習」など、定められている活動範囲内でしか活動が行えません。

しかし、高度人材になると、複合的な日本での活動が許容されます。例えば、大学での研究活動と並行して、事業経営を行うといった活動が可能になります。

在留期間「5年」の付与

他の在留資格の場合、審査によって決まるため、希望は出せますが申請者の意思にかかわらず、在留期間が決定してしまいます。

しかし、高度人材であれば、法律上最長期間である5年が一律で付与されます。

在留歴にかかわる永住許可要件の緩和

高度人材として認定され活動を続けると、永住権を申請するのに原則必要な「日本での滞在歴が10以上」が緩和されます。

配偶者の就労

基本的に外国人労働者の配偶者は、許可を取ることで就労は可能です。

しかし、就労時間の制限が発生します。高度人材の配偶者の場合、細かい要件はありますが、就労時間の制限なく就労することが可能です。

一定の条件の下での親の帯同許容

他の在留資格の場合、一部例外はあるものの原則として親の帯同が認められていません。

しかし、高度人材であれば、要件を満たすことで親の帯同が認められます。

一定の条件の下での家事使用人の帯同許容

家事使用人の帯同は、他の在留資格の場合「経営・管理」「法律・会計業務」などで在留する外国人のみ認められています。

しかし、一定の要件を満たした高度人材なら、家事使用人を帯同できます。

入国・在留手続きの優先処理

高度人材は、入国・在留手続きが優先処理されます。他の在留資格に比べると、行政手続きをするうえで大きな恩恵を受けられるでしょう。

高度専門職2号の場合

高度専門職2号の場合、上記で説明した高度専門職1号の活動とあわせて、ほぼ全ての就労資格の活動を行えます。

また、在留期間が無期限となり、さらには上記の3~6までの優遇措置も受けられます。

特別高度人材制度(J-Skip)とは

高度人材のなかでも、さらに拡充した優遇措置を受けられるのが「特別高度人材制度(J-Skip)」です。この制度は、2023年4月から導入されました。

従来の高度人材ポイント制とはべつに、職歴(もしくは学歴)と年収が一定水準以上を上回る場合、高度専門職1号が付与されます。

また、高度専門職1号が与えられたあと、1年間在留すれば高度専門職2号へ移行することが認められます。

特別高度人材として高度専門職が与えられるのは、「修士号以上取得かつ年収が2,000万円以上」「職歴10年以上かつ年収が2,000万円以上」のいずれかを満たす外国人の方です。

ただし、3つに設定された高度人材の活動類型のうち、高度経営・管理活動の要件は、「職歴5年以上かつ年収が4,000万円以上」となります。

これら条件を満たして特別高度人材と認められることで、高度人材ポイント制で受けられる優遇措置にプラスして、さらなる優遇が受けられるのです。

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特別高度人材制度(J-Skip)の優遇内容

特別高度人材制度の優遇内容は以下のとおりです。

  1. 3,000万円以上の世帯年収があれば、家事使用人を2人まで雇用可能
  2. 配偶者は、在留資格の教授・芸術・宗教・報道・技能に該当する活動について、時間の制限なく就労可能
  3. 大規模な空港などに設置されたプライオリティーレーンの利用が可能

なお、特別高度人材と認められてから1年在留することで、永住許可が得られます。

高度人材ポイント制の手続き方法

高度人材

高度人材ポイント制の手続き方法について、これから日本に入国する外国人の方の場合を例に解説していきます。

高度人材ポイント制の手続きは以下の手順で行います。

  1. 在留資格認定証明書の交付申請
  2. 審査の実施
  3. 在留資格認定証明書の交付
  • 地方出入国在留管理局の窓口で、在留資格認定証明書交付申請を行います。

手続きを行えるのは、入国予定の外国人の受け入れをする機関の職員などです。

行う予定の活動にかかわる「ポイント計算表」と「ポイント立証の資料」を提出して高度人材の認定を申し出ます。

すでに日本に在留している外国人の方の場合は、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請を行います。

  • 次に行われるのが、出入国在留管理庁における審査です。

「高度人材としての在留資格を満たしているのか」の審査が実施され、この時にポイントの計算も行われます。

これらの過程を経て、高度専門職の在留資格が認められると、在留資格認定証明書が与えられます。

高度人材の採用方法

高度人材を採用する方法には、「人材紹介」「自社サイト」「ウェブ求人」「合同就職面接会」などがあります。

一つずつポイントを含めて解説していきましょう。

人材紹介

人材紹介は、企業が求める人材を紹介してくれるサービスです。

高度人材を求める企業の採用意思と、日本企業で働きたいと考える高度人材のマッチングを行い、雇用関係の成立をサポートします。

高度人材の選定や紹介のほか、面接日の調整、ビザ申請などの業務も代行してくれる人材紹介サービスもあるので、初めて外国人採用を検討している企業にもおすすめです。

高度人材の採用に特化した人材紹介サービスには、「Bridgers(ブリッジャーズ)」や「外国人求人ネット ACE」などがあります。

自社サイト

自社サイトの採用ページを利用するのも日本で働きたいと考える高度人材へのアピールになります。

外国人労働者の多くが、応募を考えている企業の採用情報をチェックして応募する傾向にあります。そのため、魅力的な自社サイトの採用ページの作成が、高度人材の採用を大きく左右するでしょう。

ウェブ求人

ウェブ求人は、母集団を形成するための効果的な手法の一つです。

企業によって提供されるサービス内容や求人掲載の費用・体系はさまざまですが、求職者の検索からマッチング、さらには面接に至るまでフォローを行う企業が多く見られます。

また、日本国内の転職・就職サイトに似た形で、外国人を採用したい企業と働きたい外国人を結びつける専門的な求人サイトも存在します。

これらのサイトの中には、求人票の作成だけでなく、面接の日程調整や入国手続きのサポートまで行うものもあるため、サービス内容を事前にしっかり確認することが重要です。

合同就職面接会

高度人材を対象とした合同就職面接会に参加するのも採用方法の一つです。

合同就職面接会のメリットは、高度人材と直接会える点にあります。実際に対面してコミュニケーションを取りながら、企業の採用意思に合った人材を探せるでしょう。

高度人材を採用する際の注意点

高度人材を採用する際は、在留資格要件を満たしているかを必ず確認しましょう。

採用が決まっても、在留資格申請の許可がおりなければ雇用できないため、事前に確認する必要があります。

そして、高度人材が入社し、スムーズに業務につけるよう受け入れ準備をしておきます。

高度人材採用の理解のため日本人社員向けの研修を実施したり、高度人材の住環境をサポートしたりなど、採用後のトラブル回避のためにも事前準備は重要です。

また、高度人材であっても日本に在留している場合、日本人労働者同様に社会保険への加入が必要です。

社会保険には、健康保険や雇用保険などいくつかあり、加入要件を満たしている場合は、国籍問わず社会保険への加入が義務化されています。

まとめ

高い技術力、そして専門的な知識を有する「高度人材」は、今後の日本企業発展のためには欠かせない存在といえるでしょう。

また、高度人材を受け入れることが、企業にとってメリットになります。

国としても「高度人材ポイント制」を導入することで、企業の高度人材受け入れを推奨しています。

今回紹介した高度人材を採用する際の注意点などを参考にしつつ、高度人材の採用を検討して企業の成長や発展に繋げてみてはいかがでしょうか。

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