学歴フィルターの捉え方|採用基準に学歴は必要か?

採用基準に学歴は必要か?学歴フィルターの捉え方

学歴フィルターは、就職活動中の学生を中心にSNSなどで話題になっています。採用活動を効率的に進めるため、応募者多数の大企業や有名企業などは取り入れているケースがあるでしょう。

しかし、学歴差別とみなされる場合もあるため、企業としては注意したいナイーブな問題ともいえます。

今回は、そもそも学歴フィルターとは何か、採用基準に学歴は必要なのか、企業が学歴フィルターを取り入れるメリット・デメリットについて解説します。

学歴フィルターとは

学歴フィルター

学歴フィルターとは、企業が採用活動をするうえで特定の大学に基づき選考を進める手法のことを指します。

企業があらかじめ指定する基準に満たない学歴の学生を選考から外します。企業の採用活動を効率的にするために取り入れられている手法です。

特定の大学には、旧帝大と呼ばれる国立大学群に加え、超難関私立大学の早稲田・慶応・上智などのほか、GMARCHクラス(学習院・明治・青山学院・立教・中央・法政)があります。また、関西圏では関関同立クラス(関西・関西学院・同志社・立命館)を指します。

このほか文系理系の難関校がふくまれ、これらの大学は“学歴フィルターにかからない大学42校”として、就職活動において比較的有利だと就活生から捉えられているようです。

学歴制限が行われてきた時代背景

学歴フィルターといわれる選考基準が生まれた歴史は意外にも古く、1970年代はじめ第一次ベビーブーム世代ともいわれる「団塊の世代」が、大学を卒業する時代にさかのぼります。

団塊の世代は、1947~1949年の間に生まれた世代のことをいい、人口が多く社会的にも大きな影響を与えています。

その世代が大学卒業後に就職活動する際、将来安泰とされる大企業への応募が殺到したことで、企業側は選考に苦しむ事態になりました。

その結果、応募者の多い大企業などは学歴フィルターを設け、採用活動を効率化したという経緯があります。

現在も学歴フィルターが生まれる背景とは?

現在も学歴フィルターが生まれる大きな理由には、「採用コスト削減」が考えられます。

現在でも多数の応募者が殺到する大手や有名企業など、人気のある企業などは一人ひとりに十分な時間を割くことができません。

そのため、応募者の選定基準に学歴を設けることで、採用活動の効率化を図っているのです。

学歴フィルターを採用する企業の実態

最近では、学歴による差別を否定する風潮があるため、多くの企業が学歴フィルターの存在を公にしていないケースがほとんどです。

しかし、日本だけでなく世界的にみても学歴フィルターは採用過程で存在しています。

学歴フィルターを利用している企業の特徴

学歴フィルターを利用している企業には、大手や有名企業が挙げられます。業界別では、教育関係、総合商社、金融業界、コンサルティング会社などに多い傾向があります。

実力主義で採用することが多いIT企業などは、学歴フィルターを設けていないところも多く存在します。

採用フローで学歴フィルターが用いられる具体的な場面

学歴フィルターは、エントリーシートや履歴書といった応募書類の段階で用いられるケースが多い傾向にあります。

また、企業説明会の予約システム自体にフィルターをかけ、高学歴の学生のみ予約ができるようにしたという事例もみられます。

学歴が高い=優秀?

学歴フィルター

高学歴だから優秀というわけではありませんが、一流とされる大学に受かるための努力や忍耐力といった能力が基本的に備わっていると判断する基準にはなります。

そういった観点からみて、学歴の高い人材は「優秀である・学力がある」と評価できるため、学歴フィルターが存在するのです。

しかし、学校のテストや試験の成績が良かった人が必ずしも仕事ができるとは言い切れません。

なぜなら、仕事はペーパーテストの成績だけでなく、コミュニケーション力や交渉力、統率力などを含めた総合的な能力が必要であり、それらが評価の基準となるためです。

関連記事

これまで人材の採用には、学歴や経験などが重視されるケースが少なからずありましたが、企業によっては「頭のよさ」よりも「地頭のよさ」を重視する傾向も多くみられるようになっています。 しかし、実際に「地頭のいい人」を採用したいと思っても、ど[…]

地頭がいい人の特徴

学歴フィルターを設けるメリット

では、企業が学歴フィルターを設けるメリットについてみていきましょう。

採用活動を効率化できる

学歴フィルターを設ける大きなメリットは、採用活動を効率化できる点です。大企業などの場合、大量に届く応募書類を全てチェックするには時間とコストがかかり過ぎます。

そのため、学歴という分かりやすい基準を設定することで、選考の手間を省けます。

一定水準の基礎能力を担保しやすい

高学歴ということは、偏差値の高い大学の入試を経て入学・修了しており、勤勉で学力が高い人材といえます。

そのため学力フィルターを設けることで、判断力や思考力、表現力など一定水準の基礎能力が身に付いた人材を振り分けることが可能になります。

社内文化や組織風土に合う人材を採用しやすい

学歴を重視する企業にとっては、学歴フィルターをかけて一定の基準を設けることで、社内文化や組織風土に合う人材を採用しやすくなるでしょう。

同程度の偏差値の応募者は、大学合格といった同じ目標に向かって努力した経緯から、興味の方向など思考が似ている可能性が高いと考えられます。

そのため、そもそも高学歴の社員が多く在籍する企業では、学歴フィルターにより同じような価値観を持つ人材を確保しやすくなるのです。

学歴フィルターを設けるデメリット

続いて、学歴フィルターを設けるデメリットについて解説します。

優秀な人材を見逃す可能性がある

高学歴の人材は、一定の学力が備わっているといえます。しかし、上記でも説明したとおり「高学歴=仕事ができる」わけではありません。

そのため、学歴ばかりに重点をあててしまうと、社会人にとって重要なマーケティング力やコミュニケーション力の高い人材を見逃す可能性があります。

企業の衰退に繋がる恐れがある

組織が活性化するためには、革新的なアイデアや新しい視点がとても大切です。

しかし、学歴フィルターを重視するあまり学閥ができた企業では、組織が変化に対応できず硬直化する傾向にあります。

また、高学歴ではなくても優秀な人材はいます。自社に適した人材を見逃し続けた結果、企業の衰退に繋がる恐れがあるのです。

企業イメージの低下や批判を招くリスク

社会的観点から、学歴フィルターはネガティブな印象を持たれやすくなります。

企業の採用方法として合法ではあるものの、世間一般的には「学歴差別」「ずるい」と判断されてしまうためです。

そのため、学歴フィルターを設けることで企業のイメージ低下や批判を招くリスクがあります。

学歴フィルターを活用する際の注意点とリスク管理

ここでは、企業が学歴フィルターを活用する際の注意点とリスク管理について解説します。

多様性を確保するための取り組み

採用活動に学歴フィルターを用いることで、多様な人材が確保しにくくなるというデメリットがあります。しかし、効率化を考えると学歴フィルターを導入せざるを得ないという企業も少なくないでしょう。

そのため、多様性への取り組みとして、学歴を要件としない「スキルファースト採用」を検討するなど、採用方法の見直しも必要となるでしょう。

学歴フィルターが違法になるケースとは?

法律により「採用の自由」が認められているため、基本的には学歴フィルターは違法ではありません。ただし、出身地や政治・宗教といった思想信条などのフィルターをかけてしまうと、「差別」として違法となるケースもあるため注意が必要です。

学歴フィルターが採用ミスマッチを引き起こす可能性

近年、新卒採用のあり方が大きく変わっているなか、学歴フィルターを用いた旧来の採用方法ではミスマッチを起こす可能性が高く、早期離職に繋がる原因にもなり得ます。

自社にマッチする人材を確保するには、学歴だけではなく人柄や学生時代のさまざまな取り組み姿勢など、多様な視点から見極める必要があるでしょう。

学歴フィルターなしでも、応募者を見極めるポイント

学歴フィルター

ここでは、学歴フィルターなしでも応募者を見極めるポイントについて解説します。

コミュニケーション能力を確認する

職種や職業を問わずさまざまな仕事で求められる能力が、コミュニケーション能力です。

特に、新卒採用などの場合は業務経験がない状態での選考となるため、コミュニケーション能力を重視する企業が多い傾向にあります。

コミュニケーションを円滑にするには、情報を伝える力や人の話を聞く傾聴力、相手の気持ちを読み解く力が必要です。

応募者のコミュニケーション能力を読み取るには、面接時に「難しい問題に直面したことはありますか?その問題をどのように対処しましたか?」など、その人の本質を見極められる質問を考えておく必要があります。

志望動機や入社意欲を探る

応募者の適性を判断するために、志望動機や入社意欲についても探ってみましょう。

例えば、「他企業ではなく、弊社を志望した理由について教えてください」と、なぜ自社なのか質問します。

これに対し、明確な志望理由や入社後のキャリアビジョンについて答えられる応募者は、企業が求める人材に近い可能性があるでしょう。

個人の価値観を探る

応募者を見極めるには、個人の価値観を探るような質問を投げかけるのも一つの方法です。

例えば、「もし失敗したらどうしますか?」と、価値観や考え方を問うような質問をします。

そうすることで、応募者がどの程度自分自身のことを理解し、失敗から何を学びどう生かすか、対処法や改善方法など成長への意欲を確かめることができます。

学歴フィルターを導入しない企業の事例と成功例

多様な人材を確保するために、学歴フィルターを導入しない採用方法を知ることが大切です。

ここでは、学歴フィルターを導入していない企業の採用基準と成功例について解説します。

学歴に依存しない企業の採用基準

学歴に依存しない企業には、IT業界やベンチャー企業などがあります。

こういった企業は、高い技術力の獲得や企業成長を目的としているため、採用選考では学歴ではなく実際行う業務において戦力となり得るかを重視します。

また、選考を進めるにあたり、学歴重視でない企業の採用基準は「人柄や人間性」を見定める傾向にあるでしょう。

会社での業務は、勉強と違い一人で完結できるものばかりではありません。そのため、協調性やコミュニケーション能力といった部分に重きを置く企業があります。

例えば、企業情報サイトを運営する「株式会社ぐるなび」の技術職の採用では、面接の代わりに座談会を設け、既存のエンジニアと一緒に働き活躍できるのかを確認しています。

学歴フィルターを外した採用で成功した企業の取り組み

学歴関係なく、人柄重視の採用を行う企業としては「LINE株式会社」が挙げられます。

LINE株式会社では、自社の社員に知人や友人を紹介してもらう「リファラル採用」を強化しているのが特徴です。

この方法は、候補者の人柄を良く知る社員などからの紹介のため、事前に把握でき人柄重視で採用した企業に適しています。

また、多様な人材を採用するため、ダイバーシティ採用を導入する企業も増加しています。

ダイバーシティ採用とは、人種や性別、年齢、性的指向、宗教、働き方など幅広い意味での多様な人材の採用を指します。

ダイバーシティ採用の促進によって成長した企業には、「ソフトバンク株式会社」や「株式会社ベネッセホールディングス」「損保ジャパン日本興亜」などがあげられます。

なかでもソフトバンクは、多様な人材が活躍できる基盤を整えている企業です。

年齢や国籍、障がいの有無に関わらず、幅広い人材が役割と能力、成果に応じた公正な評価に基づき処遇や役職が決定されています。

女性の活躍推進や障がい者採用、シニア人材の雇用推進など、多様な人材確保のための採用に力を入れているのが特徴です。

関連記事

突然ですが皆さんは、「ダイバーシティ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?何となく聞いたことがある方は、「ダイバーシティ」の意味や日本でどういった取り組みが行われているかはご存じでしょうか? 今回は、「ダイバーシティ」とは何か、採[…]

今、人事が取り組むべきダイバーシティとは

まとめ

学歴フィルターは、応募者が殺到しやすい大企業や有名企業などで採用されてきた手法です。現在でも、採用コスト削減などを理由に続けている企業も多く、なくなることは考えにくいでしょう。

しかし、グローバル化や多様化など、ビジネス環境は大きく変化しつつあります。採用において、学歴フィルターが通用しない場面も増えることを念頭に置く必要があるでしょう。

企業発展のためにも、学歴のみに依存せず多様な人材を活かすための取り組みが重要といえます。

関連記事

通年採用が普及している中、人材を採用するために、年間数百万円のコストをかけている企業は少なくありません。できることなら採用コストを抑えたいという採用担当の方も多いのではないでしょうか。 今回は、採用コストの算出方法や、見直し方、削減ポ[…]

採用コスト削減方法