例年、就職活動シーズンになると就活生を中心にSNSで話題になるのが学歴フィルターです。
そこで、この記事では学歴フィルターの基礎からメリット・デメリット、学歴フィルターレスでも優秀な応募者の見極め方を解説します。
学歴フィルターとは
学歴フィルターとは、企業が採用活動を効率的に処理するため、特定大学以外の学生を選考から外すことです。
特定大学とは一般的に旧帝大・早慶クラスに加えて関東圏ではGMARCHクラスを指します。また関西圏では関関同立クラスです。
学歴フィルターを採用する企業は老舗の大企業に多く、業界としては食品、商社、コンサルティング会社に多い傾向があります。
逆にIT企業の多くは実力主義を採用しているため、学歴フィルターを設けない企業が多数派です。
採用活動で学歴を気にしている企業割合
2021年4月26日掲載の「東洋経済オンライン」の記事によると、取材した企業の人事関係者は7社中、6社が採用プロセスで「学歴を参考にしている」と回答があったとのことです。
参照元:MSN 『東洋経済オンライン 「学歴フィルター」を嫌悪する日本人の超危険 7社中6社が「学歴を参考にしている」と回答した』
また、2018年のデータではありますが、経営のプロが聞くアンケートメディア経営PRO-Qのアンケートでは、約4割の企業が「学歴フィルター」は必要だと答えています。
学歴フィルターが必要だと思うと回答した人には以下のような意見がありました。
- 基本的な文書作成能力、読解力、プレゼンテーション能力、要点整理、基礎学力といった面で、企業側の教育投資の効率性が良いため。(従業員数:1000名以上、メーカー)
- 確率論として、レベル差の有意性はあると考えるから。(従業員数:1000名以上、マスコミ・コンサル)
- これまでの上位校だけでの選考意図ではなく、既存社員との繋がりや学生間の繋がりなど入社、継続等の意図で必要と感じるため。(従業員数:300~1000名未満、サービス)
- 学歴は頑張った分、最低限お金を使った分は評価してあげないとかわいそうであると思う。(従業員数:300名未満、サービス) 引用:経営PRO-Q
昨今日本では、学歴による差別を否定する風潮にありますが、世界的に見ると学歴フィルターが存在しています。
今後、日本は人口減少が顕著化するため、海外からのグローバルな人材を採用することが求められています。
そのためには学歴フィルターをタブー視せず、企業として必要なスキルを提示し、基準に満たない応募者は採用しないべきだと警鐘を鳴らしています。
学歴制限が行われてきた時代背景
学歴フィルターの歴史は意外に古く、1970年代初頭と言われています。
この時代は、戦後の第一次ベビーブームで生まれた団塊の世代が大学を卒業する時期に同期します。
この時期は多くの人が社会人になったため、将来安泰な大企業に応募者が殺到しました。結果的に、企業側では選考を捌き切れない事態になったと聞きます。
この経験を踏まえて人気企業は、学歴フィルターを設けて効率的な採用活動を実施した経緯があります。
それから半世紀が経過していますが、一部の企業では未だに学歴フィルターを設けているケースもあります。
学歴が高い=優秀?
学歴の高い人は優秀なのでしょうか。会社勤めを経験した人であれば、この答えはNOであることを実感していると思います。
確かに学歴の高い人は学生時代にずっとペーパーテストの成績が良かったに違いありません。しかしながら、テストの成績が良い人は必ずしも仕事ができると言い切れません。
なぜなら、仕事は事務処理の速さだけで無く、交渉力や行動力あるいは統率力等を含めた総合的な能力で判断されるからです。
学歴フィルターを設けるメリット・デメリット
企業が採用活動を行う上で学歴フィルターを設けるメリットとデメリットについてそれぞれ解説します。
学歴フィルターを設けるメリット
学歴フィルターを設けるメリットは以下の3つです。
書類選考の効率化が可能
人気企業には全国から大量のエントリーシートが届きます。この結果、すべての書類をチェックするには膨大な時間とコストを費やすことになります。
これを回避する手段として一次審査に学歴フィルターを設けることで書類選考の効率化が可能です。
基礎能力は保持していると判断できる
高学歴な人は子供の頃から、継続して勉強することや、分からないことはすぐに調べることを習慣的に行ってきました。
つまり、学力が高く勤勉であると言うことです。高学歴な人は基礎能力を持っていると判断できます。
優秀な人材を採用できる確率が高い
高学歴な人は必ずしも優れた人材と判断できません。
しかしながら高学歴な人は努力や我慢をすることに慣れているため、少なくとも一般学卒者より優秀な人材である可能性が高いと言えます。
学歴フィルターを設けるデメリット
学歴フィルターを設けるデメリットは以下の3つです。
応募者が減少する恐れがある
学歴フィルターを設けると情報化社会の現代では、すぐ世間に周知されます。
そのため、「不平等な会社」とのレッテルが貼られて企業イメージがダウンすることになります。
それにより、応募者側も該当企業を避けるようになるため、応募者が減少する恐れがあります。
優秀な人材を見逃してしまう
現代社会は変化の激しい時代です。企業は世の中の変化を機敏に捉えて行動することが求められています。
そのため、新しいことにチャレンジできるバイタリティ溢れる人材が必要です。
しかし、高学歴な人は失敗することを恐れる傾向にあります。学歴フィルターを設けることで、求める人材とのアンマッチが生じ、優秀な人材を見逃してしまう恐れがあります。
企業の衰退に繋がる恐れがある
多くの企業では新卒採用に学歴フィルターを設けていないため、出身大学が偏ることがありません。
これに対して学歴フィルターを採用している企業は、出身大学が限定されているため、企業内で学閥が生まれる恐れがあります。
その結果、組織の硬直化が生まれて企業の衰退に繋がりやすくなります。
学歴による採用制限は違法?
日本国憲法には「思想の自由」が認められているように「採用の自由」も認められています。企業がどんな方法で学生を採用しても原則、自由です。
つまり、企業が学歴フィルターを設けても合法ということになります。
ちなみに今現在、学歴フィルターを設けていると公言している企業はありません。
学歴フィルターは合法ですが世間一般に差別していると判断されるためです。企業に不利益が生じるため、学歴フィルターを認める企業はありません。
しかしながら未だに学歴フィルターを設ける企業があるのは周知の事実です。
学歴制限なしでも、応募者を見極めるポイント
ここでは学歴フィルターを設けなくとも、応募者を見極めるポイントを3つに絞って解説します。
コミュニケーション能力を確認する
「企業は人なり」と言う言葉があるように業績の良い企業は社員同士が活発に議論し風通しが良いです。
従って新入社員にはコミュニケーション能力が必要不可欠です。
これを見極めるポイントは面接で抽象的な質問をすることです。
応募者の的外れな回答は論外ですが、質問内容を絞り込む発言や例えを交えて質問の論点を探る回答であれば採用候補に相応しいです。
志望動機や入社意欲を探る
多くの企業の中から自社を選んだ理由は、面接で最もオーソドックスな質問ですが、必ず聞くべきことです。
応募者の回答が抽象的な話だったり、面接用に用意した一般的な話だったりした場合は、更に質問して具体的な回答を求めましょう。
あやふやな回答しか出来なければ不採用とすべきです。自己体験に基づく志望動機がしっかり語れるような応募者であれば採用候補として良いです。
個人の価値観を探る
新卒者の早期退職は社会問題になる程の重要課題です。また企業にとってこの問題は採用コストアップに繋がるので回避する方法を取ってください。
具体的には採用時の面接で希望職種や転勤の可否等の働き方に関する質問を投げ掛けましょう。独りよがりの回答や、協調性の無い回答をする応募者であれば不採用にすべきです。
なお、面接官は個人に関する質問をする際、モラルに反しないように充分に注意しましょう。基本的に宗教や政治に関する質問はタブーですので事前に質問原稿をチェックすることをおすすめします。
まとめ
学歴フィルターは老舗企業を中心に長年、続けられて来ました。この慣習は日本国内から一朝一夕で無くなるとは考え難いです。
しかしながら、グローバルな視点から考えると、日本スタイルの学歴フィルターは世界に通用しないと考えます。
応募職種ごとに必要なスキルを明確に提示することで、学歴フィルターレスな採用を実現できると考えます。
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