介護職の採用はなぜ難しい?理由や定着率を高めるポイントを紹介

介護職採用はなぜ難しい

高齢化が進む日本では、今後介護サービスを充実させていかなければなりません。

しかし、介護業界は深刻な人手不足であることをご存知でしょうか。その理由として、給与の低さや定着したネガティブなイメージが挙げられます。企業側としては難しい介護職の採用になるべく費用をかけたくないのが本音でしょう。

そこで気にしてほしいのが採用単価です。採用手法によって採用単価が変わってくるため、それぞれかかる費用を把握したうえで採用手法を選びましょう。また、採用単価を抑えるためには助成金の利用もおすすめです。介護職の採用に悩みを抱えている方はぜひ参考にしてください。

介護業界が難しい理由

厚生労働省によると、2021年の介護職における有効求人数は約21万人で、有効求職数は約5万人です。これらの数字から介護職の有効求人倍率は約3.6倍であることがわかります。簡単にいうと、1人の求職者に対して求人が約4件あることになるのです。

このように介護職の採用は簡単ではありません。

では、なぜ介護職の採用が難しいのでしょうか。以下では、介護職の採用が難しい理由について解説していきましょう。

介護サービスを必要とする高齢者の増加

介護職の採用が難しい理由の1つに「介護サービスを必要とする高齢者の増加」、つまり「高齢化」が挙げられます。

「2025年問題」という言葉もあるように今後も高齢者の割合は増加が予想されているのです。2025年には75歳以上の人口が全人口の約18%、2040年になると65歳以上の人口が全人口の約35%にもなるとされています。

高齢化が進むと当然介護サービスを必要とする高齢者も増えるため、介護職のニーズが高まって人材不足がますます深刻化していくでしょう。

ネガティブなイメージ

「3K」という言葉を聞いたことはありますか。

3Kとは、「きつい」「危険」「汚い」の頭文字を取った言葉で、介護職や土木・建築などの現場作業の仕事でよくイメージされます。このようなネガティブなイメージがあることによって介護職に就きたい人材が減ることも、介護職の採用が難しい1つの理由になっているのでしょう。

給料が安い

厚生労働省が出している2021年度の介護従事者処遇等調査結果によると、介護職の平均年収は約430万円でした。一方で、全産業の平均年収は443万円であり、介護職は全産業の平均年収よりも少なめの水準であることがわかります。

ネガティブなイメージに加え給料が安ければなおさら介護職を志す人材が減り、ますます介護職の採用における難易度は上がっていくでしょう。

介護業界の採用手法と採用単価

ここで介護業界の採用手法と採用単価について解説していく前に、採用単価相場を知っておきましょう。

介護職における採用単価相場:10~50万円

ただし、雇用形態や利用した採用媒体によって変わってくるため注意が必要です。企業としてはこの採用単価をできるだけ抑えたいところでしょう。

そこで採用手法別に特徴と、かかる費用について紹介していきます。

ハローワーク

厚生労働省の管轄であるハローワークは無料で求人が掲載できるため、採用単価を抑えたい企業は利用すべきサービスです。公的なサービスであることから、離職された方もまずはハローワークに頼ることが多いのではないでしょうか。

ただし、掲載されている介護職の求人も多いため、ハローワークに加えて他の採用手法にも取り組むのがおすすめです。

求人サイト

エン転職」や「マイナビ転職」のような求人サイトに求人を掲載し、求職者からの応募を待つという採用手法もあります。また、最近では介護職に特化した求人サイトも出てきており、利用するのもおすすめです。

では、求人サイトにはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。

求人サイトには成功報酬型と掲載課金型の2種類があり、それぞれのタイプでかかる費用が異なります。成功報酬型は「応募がきた」「採用が決まった」などのタイミングで費用が発生します。

応募がきた段階では数千〜3万円ほど、採用が成功すると数万〜10万円強ほどの費用がかかることを想定しておいてください。掲載課金型は、求人を掲載したタイミングで費用が発生します。掲載料として10~100万円ほどの費用がかかるでしょう。

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人材紹介

人材紹介とは、人材紹介会社に登録している人材を紹介してもらう採用手段です。

人材紹介は成功報酬型であるため、採用が成功したタイミングで費用が発生します。かかる費用は、人材の想定年収の約20%です。他の採用手段よりも少々割高ですが、掲載報酬型のように費用は発生しているのに採用が成功しないということはありません。

また、人材紹介はエージェントが企業と求職者の要望をそれぞれ把握したうえで紹介に至るため、お互いのミスマッチが起こりにくいでしょう。

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人材派遣

人材派遣は「採用」ではなく「派遣」になるため、急な欠員が出た時や期間限定で人材を募集したい時などにおすすめの方法です。

採用単価は不要ですが、派遣社員が就業した場合、派遣会社へ派遣料金を支払います。その料金から20〜30%引かれたものが派遣社員の給料となるのです。

介護職採用の一般的な流れ

介護職採用の流れ

ここからは、介護職採用の一般的な流れを紹介していきます。

採用計画の立案

まずは、採用計画の立案から行います。採用計画の立案は、介護職に限らずすべての職種で重要な工程です。

具体的には、「いつまでに」「どんな人材を」「どの部署で」「何人採用するか」などの要件を明確にさせ、採用戦略や採用基準、スケジュールなどを決めていきましょう。

会社説明会・見学

会社説明会は求職者に対し、自社の理念や事業概念について知ってもらう大切な段階です。

母集団を形成するためには、説明会でどれだけ印象に残れるかがカギとなるでしょう。また、会社見学なども行い、自社で働くイメージを持ってもらうのがおすすめです。

エントリー

説明会や会社見学が終わったら、求職者が気になる企業にエントリーします。

この時点で中々エントリー数が集まらない場合は、求人内容が良くない・採用手法が合っていないなどの原因が考えられます。

選考

筆記試験や面接などを通して、候補者を選考していきます。選考の可否を決めるためには、事前に採用基準を明確にしておきましょう。

結果の通知

候補者は選考の結果を心待ちにしています。選考の結果が出たら、スムーズに候補者へ連絡しましょう。もし、選考に時間がかかっているようであれば、候補者へその旨を連絡しておくと丁寧です。

入所

選考結果を候補者へ伝えたらついに入所の段階です。

入所までの期間には、内定者研修などのフォローをすると、内定辞退の予防に効果的です。入所後は研修やOJTなどで業務に慣れてもらいましょう。

採用時に優秀な介護人材を見極めるポイント

採用時に優秀な介護人材を見極めるポイントとして、以下に注目すると良いでしょう。

熱意・やる気・人柄

人材の資格や経験に関わらず、熱意、やる気、人柄を見極めることは採用においてとても重要といえます。介護職への思いが強ければ、将来的にスキルアップを目指せるからです。

資格の有無

熱意・やる気・人柄に加えて、資格の有無も優秀な介護人材を見極めるポイントです。資格を持っている人材であれば、スキルに期待ができ即戦力として働いてもらえるでしょう。

定着率を高めるために企業がすべきこと

介護職の定着率を高めるために企業がすべきこといくつかの段階を踏んで無事に採用に至ったところで、企業がすべきことは終わりではありません。

公益財団法人介護労働安定センターが行った調査によると、2021年度に離職した介護職員のうち、35%は入社後1年以内に離職しています。こういった早期離職を防ぐためには社員の定着率を上げなければなりません。

以下では、効果的ないくつかの対策を紹介していきましょう。

人材育成の仕組み作り

人材の早期離職を防ぎ定着率を上げるためには、人材育成の仕組み作りが重要です。人材を「人財」として捉え、その人の人格や人権を認めつつ必要な知識や技術を教えていきましょう。

人材育成の仕組み作りの内容として「研修制度の活用」があります。特に介護業界の未経験者を採用した場合はOJT研修や社内・社外研修などを通して人材を育成しましょう。

さらに、人材育成の仕組み作りとして、資格取得奨励制度を設けている企業もあります。

資格取得奨励制度とは、社員が資格取得において発生するテキスト代やテスト代を企業が負担するなどの制度です。

社員がスキルアップするだけでなく資格手当などで給与に反映させることによって、仕事のモチベーションアップへとつながるでしょう。

賃金制度の見直し

介護職を志望している求職者は、主に毎月の給料を他の施設と比較して選ぶでしょう。そういった意味では他の施設と比較しても大きな差が生まれないような賃金を提示する必要があります。

そのうえで定着率を高めるのが、昇給や賞与、退職金です。長く働くことで昇給する、成果を出すことで賞与がもらえる、退職時にまとまったお金がもらえるなどの賃金制度が、人材のモチベーションにつながります。

スタッフ同士のコミュニケーションを促す

介護職の定着率を上げるために企業ができることの1つとして、スタッフ同士におけるコミュニケーションの促進が挙げられます。

前述したように、介護職を離職する理由の1つに「人間関係」があります。そのため、スタッフ同士のコミュニケーションを促し職場の人間関係を円滑にすれば、定着率は上がっていくでしょう。

助成金について

採用単価を抑えるには採用手法の見直しも必要ですが、助成金を利用するという方法もあります。以下では、採用単価を抑えるのに役立つ助成金を3つ紹介していきましょう。

特定就職困難者雇用開発助成金

特定就職困難者雇用開発助成金は、「就職困難者」と呼ばれる高齢者・障害者・母子家庭の母などを民間の職業紹介事業者やハローワークなどにより雇うことで支給されます。支給額は30~240万円です。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、職業経験・知能・技能などから安定して就労できない求職者を一定期間雇用し、求職者の適正や能力を見極めるトライアル雇用をすることで支給されます。トライアル雇用助成金の支給額は、最長3ヵ月間の支給で1人あたり月額5万円です。

特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)

特定求職者雇用開発助成金は、雇用開始時点での年齢が満65歳以上の人を民間の職業紹介事業者やハローワークなどにより採用した場合に支給されます。支給額は40〜70万円です。

まとめ

介護業界では介護サービスを必要とする高齢者が増える一方で、ネガティブなイメージや給与の低さによって深刻な人材不足が続いています。

そのため、介護職を採用するには採用単価を抑えられる採用手段を選ぶほか、助成金の利用がおすすめです。

ぜひこの記事を参考に、厳しいとされている介護職採用の成功を目指しましょう。

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