人材不足や業務効率化のプレッシャーから日常業務に困難を感じ、人事業務を外部に委託できる人事BPOの導入を検討している方もいるのではないでしょうか。
今回の記事では、人事BPOのメリット・デメリットをはじめ、アウトソーシングとの違いや委託できる業務内容について解説します。
人事BPOを導入する際の業者選びのポイントや活用のコツも併せて紹介しています。
BPO導入の可否に悩んでいる方は、メリット・デメリットを参考に、企業の悩みを解決に導けるかを検討しながら読み進めてみてください。
人事BPOとは?その定義と意義
「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の頭文字を取って表した略称がBPOです。まずは人事BPOの定義や意義について解説します。
人事BPOとは何か
人事BPOは、採用や労務管理などの人事関連業務を外部の専門業者に委託することを指します。
効率的な人事業務の遂行はもちろんのこと、組織における課題の可視化や改善などの依頼が可能です。
BPOとアウトソーシングの違い
業務を外部に委託するという意味では、BPOと似た方法でアウトソーシングが存在します。この二つの違いは、導入目的や委託できる業務範囲にあります。
アウトソーシングは、人手不足の補充やコスト削減などを目的とし、資料作成や備品の管理など、高度な判断を必要としない補助的な業務全般を委託する傾向にあります。
一方BPOの目的は、業務の効率化や課題の改善です。
特に人事BPOは、人事に特化した専門知識を提供し、さまざまな人事業務を請け負います。
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人事BPOで外部委託できる業務
人事BPOで外部委託できる業務は多岐に渡ります。続いては委託できる具体的な業務内容を紹介します。
給与や労務管理などの労務業務
従業員の給与計算や支払業務など、金銭面に関する業務が対象業務です。具体的には以下のものがあります。
- 雇用契約書の作成
- 雇用期間や業務内容など、契約内容を示すための契約書の作成
- 就業規則の作成や改定
- 就業規則の適切な提案や作成、届け出の提出
- 労使協定の作成
- 労使協定の種類によって書類を作成
- 勤怠管理
- 従業員の出勤や勤怠など就業状況の管理
- 給与計算
- 従業員の給与計算と支払業務
社員のデータ管理などの人事業務
従業員の能力を引き出すのに欠かせない人事業務も依頼できます。
具体的には、人事評価や研修、人事配置、教育などがあります。詳しく見てきましょう。
- 人材育成
- 従業員育成のための効果的な教育プログラムの考案と実施
- 人事評価
- 従業員が企業にどれくらい貢献しているかの評価、適切な報酬額の決定
- 人事配置
- 従業員の適性を考慮した人事配置サポート
- 労働時間管理
- 従業員の勤務日数や労働時間の記録・管理・調整
- モチベーション管理
- 従業員のモチベーションの維持管理に関する施策実施
採用活動の代行(RPO)って何?
人事BPOの中でも、採用業務に注力したものを「Recruitment Process Outsourcing(リクルートメント・プロセス・アウトソーシング)」略してRPOと呼びます。
応募者の管理をはじめ、書類選考や研修など幅広く採用業務を委託できるため、業務の負担軽減に一役買います。
委託可能な採用業務を一覧にまとめました。
- 採用計画の作成
- 採用計画や予算計画の立案、採用プロセスの一部代行
- 母集団の形成
- 適切な求人サイトの選定や募集活動の実施、選考を受ける候補者の獲得
- 選考・面接
- 応募者の面接や選考の代行
- 入社前後のフォロー
- 内定通知の送付、内定者への入社前後のフォローおよびケア
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人事BPOが普及している背景
ここからは、なぜ人事BPOが普及しているのか、その背景に迫っていきましょう。
人手不足や働き方改革の影響
人事BPOが普及している背景のひとつは、少子高齢化による深刻な人手不足です。
日本における15~64歳の生産年齢人口の減少が要因となり、委託可能な業務は外部に託す傾向にあります。
また、働き方改革で残業時間の上限規制や、勤務条件の自由度が低い直接雇用化などが相まって従業員の確保や業務遂行が難しくなり、外部委託で補充する動きも見られています。
業務効率化とコスト削減のニーズの高まり
人事BPOは、人事業務の効率化やコストの削減に大いにメリットをもたらします。
複雑かつ手間のかかる人事業務を専門家に委託でき、かつ人件費など固定費の削減が期待できるため、多くの企業で注目・導入されています。
今後も人事BPOの需要は高まっていくことでしょう。
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人事BPOを導入するメリット
それでは、人事BPOを導入するメリットをチェックしていきましょう。
業務の質を高め、リソースを他の重要業務に回せる
人事業務を外部に委託することで、無駄な作業や時間を削減し、業務効率や質の向上が期待できます。
また、利益に直接関わらない「ノンコア業務」をBPOに任せることで、企業は重要な業務に集中できるというメリットもあります。
リモート対応やデジタルツールを導入している業者を選べば、急なニーズにも柔軟に対応でき、事前のシミュレーションで活用体制を整えておくとスムーズに導入できます。
専門家によるサービスで信頼性アップ
人事BPOは専門的な知識とスキルを活用し業務を遂行するため、法規制やコンプライアンスにも柔軟に対応が可能です。
そのため、経営リスクの防止にもなり、結果的に企業の信頼性アップにつながります。また、自社の人材をコア業務に注力できるため、生産性の向上も望めるでしょう。
固定費の削減に効果的
人事BPOを活用することで、固定費の削減が期待できます。
人事業務を専門知識を持つBPO業者に委託することで、自社内の人員コストを削減し、人件費やオフィス賃料、光熱費の節約につながります。
また、繁忙期や閑散期に応じて必要なサポートだけを柔軟に依頼できるため、コスト削減効果がより高まります。
さらに、BPOの費用対効果を評価するには、導入前後のコストや業務効率化による時間短縮を具体的な数値で記録するとよいでしょう。
業者からの事例提供も活用して、期待できるコストメリットを事前に確認することが安心です。
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人事BPOのデメリットとリスク
メリットがある一方、デメリットも存在します。BPO導入のデメリットとして、失敗例やリスクへの対策も検討が必要です。
例えば、費用対効果が出ないケースでは、業務の見直しや担当者間のミスコミュニケーションが原因となることが多いため、導入前の業務範囲の明確化が大切です。
情報が漏れるリスクはある?対策が必要
企業の機密情報を扱う人事業務を委託する際は、情報漏洩のリスクがあることを念頭に置く必要があります。情報漏洩は企業における信用の失墜や、損害賠償や慰謝料などの大きな損失につながりかねません。
委託準備に時間と手間がかかることも
人事BPOの採用には、委託のための準備時間や手間を要します。具体的には、委託会社の選定や委託業務の洗い出し、スムーズな運用のためのマニュアル作成などです。
委託内容によっては、活用までに長期間かかるケースがあることも踏まえて、人事BPOの活用を検討しましょう。
業務のノウハウが自社に残らないリスク
将来的に業務委託を解除する可能性がある場合に注意しておきたい点が、人事業務のノウハウが自社に残らないというリスクです。
人事に関する業務を専門家に依頼し効率化できる反面、企業の従業員が人事業務に触れる機会が減り、ノウハウが蓄積されません。
自社による人事業務の再開を計画しているのであれば、委託期間に運用状況の詳細を報告してもらいつつ、ノウハウの蓄積を図るのがいいでしょう。
人事BPO導入のステップガイド
人事BPOの活用の流れは、おもに「現状の課題分析」「委託業務の選定」「BPO業者の選定」の3つです。詳しく見ていきましょう。
現状の業務課題を洗い出すことから始める
人事BPOを導入する目的の明確化や的確な委託業務の選定のため、まずは現状の業務課題や効率性、コストなどの分析を行います。
具体的には、コストの把握や業務フローの可視化、従業員への聞き取り調査などを実施します。
業務負荷の把握には、各業務の処理にかかる時間や頻度をリスト化し、担当者ごとに月間の業務量を数値で確認することが有効です。
外部に任せる業務を決める
人事業務における課題が明確化したら、具体的に委託する業務を決めていきます。費用対効果が望めるのか、実行可能であるのかを踏まえながら検討しましょう。
また、細分化された人事労務の中で一部を委託するのか、全体を委託するのかも重要な検討事項です。
優先順位を明確にするために「ノンコア業務(給与計算や勤怠管理などの定型業務)」をリストアップし、重要度が低く、専門業者の方が効率よく処理できる業務を優先して検討しましょう。
信頼できる人事BPO業者を選定する
委託する業務内容が決まったら、次は人事BPO業者の選定です。複数の人事BPO業者をピックアップし、その中から実績や信頼性、サービス範囲やコストなどを考慮して、マッチする依頼先を選びましょう。
委託業者とのミスマッチを防ぐために、複数の業者から見積もりを取ったり、お試し運用を活用したりするのもおすすめです。実際の導入事例や口コミを確認するのもいいでしょう。
人事BPO業者を選ぶ際のチェックポイント
ここからは、人事BPO業者を選ぶ際にチェックしておきたいポイントを紹介します。
セキュリティ体制はしっかりしているか確認
人事BPO導入のデメリットにもあったように、外部委託では企業の情報漏洩のリスクを拭えないため、セキュリティに関する安全性が確立されているサービスを選ぶのが得策です。
セキュリティ体制を整えているかどうかは、情報資産を適切に管理できる証拠となる『ISMS認証』の取得の有無がひとつの指標になります。
価格だけでなく実績やサービス内容も重要
信頼のおける人事BPO業者であるかどうかは、実績を上げているかどうかという観点でもチェックできます。
実績が少なくノウハウが蓄積されていない業者への委託は、トラブルのリスクやプロジェクトのスムーズな運用が困難になる可能性があります。
人事BPO導入に関してはコスト面が気になるところではありますが、サービス内容や実績面も重視して確認してみてください。
人事BPOを効果的に活用するには
さいごに、人事BPOを有効活用するためのコツを紹介します。
業務範囲を明確にし、目的に合った委託を
委託する業務範囲を明確にし、契約書にしっかりと内容を記載しておくことで、人事BPO業者と企業間の認識の食い違いを防げます。
業務に関する責任範囲を明瞭化し、業務の透明性を確保しておきましょう。
業者とは定期的にやり取りを行うことが大切
人事BPOを採用する際には、業者と定期的にやり取りを行うことも有効活用のコツです。業務の進捗管理を把握することで、課題の洗い出しや早期解決につなげることができるためです。
また、人事労務に関するノウハウを蓄積できるという点でも、定期的なコミュニケーションをおすすめします。
まとめ
人事BPOの活用は、人事労務に関する業務を効率よくかつ、コストを削減しながら進められるのが魅力です。まず、企業の課題やBPO導入の目的を明確にし、適切なBPO業者を選びましょう。
人事BPOを有効活用し、企業の成長につなげてみてください。